俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その58

2011年08月21日 23時28分08秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 自分の機体に何が起こったのか。正確なところはわからない。レーザーで狙い撃たれたことも初めてなのだ。ただ相手の思惑に嵌められたことだけは分かった。
 操縦席で体感するスピードが明らかに落ちた。機動力を奪う弾丸をまともに喰らってしまったせいだ。

「――がァアッ!! うらァ!」
 絶叫とともに、渾身の力で操縦桿を引き上げる。ふたたび斉射される背後からのレーザーの雨を、天空におどりあがりすり抜けると、そのまま2機のアーウィンの頭上を越えていこうとする。
「逃がさん!」
 ファルコの機体が機首を上げたのを見て、ペッピーも同じく桿を引いていた。
 機体制御の精密さとレスポンスの速さでは、ライラット系中探してもアーウィン以上の性能をもつ機体はない。滑るようにファルコ機を追尾し、後方にぴったりと貼り付く。
 少し遅れて、旋回したフォックスのアーウィンも別角度から敵機に狙いを付ける。そしてまた、レーザーの雨。

(終わり、か?)
 ファルコは妙にのろのろと考えた。レーザーで動きを止めたところに、機動力を奪う弾、その繰り返し。どんなに逃げてもこっちの負けは時間の問題だ。
 一か八か、重力場を発生させて相手の機体に突撃してみるか。しかしスピードは落ちている。弾丸のいい的になるのがオチだろう。
 この状況を打破する手は、もう何も思い浮かばなかった。
 自分の行く先は、監獄か、それとも――死か。
(死ぬなら、空だ)
 戦いの前に浮かんだ言葉を、もう一度なぞる。
(“FREE AS A BIRD”)
 はたして自分にふさわしい言葉だったかどうか。いや。正直なところ、自由どころじゃなかった。いつも藻掻いていた、自分を不安にさせるものの正体もわからずに。
 ファルコは考えるのをやめ、操縦席右下のハンドルに手を伸ばすと、勢い良く引き抜いた。