鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

虫と人に会いに京都、大阪へ。3日目は箕面昆虫館へ

2011-06-22 18:22:25 | 日記

 虫愛ずるイベントの一日もぶじ終わり、
3日目は池内美絵さんと昆虫館のある箕面へ行くことにしました。

 箕面と書いて「みのお」と読む。
ここに昆虫館がなければ、
東京に住んでいる私はたぶん一生行くことがなかったと思われる観光地です。
大阪から30分くらいで行ける、全国どこにでもあるような、
地域の人たちに愛されている
手軽に行ける観光地といった位置づけなのかな。

 たとえば千葉のお父さんが子供に、どっかつれってってよー、とせがまれたときに
「じゃ、日曜日に鋸山でもいくかー」という感じの場所なのかな。
関西の人が、千葉の鋸山へ行くことを目的に関東に来たりしないように、
東京から箕面を目的に観光に来る人もいないのでは、と思うのですが、
 しかし、そこに昆虫館があるということになると、
虫に興味のある人には、大阪へいったらぜひ足を運んでみたい、目的のひとつになるのです。

 池内さんとの待ち合わせは、箕面駅に12時半。
電車や乗り換え駅について教えてもらい、
はじめてのところだからちょっと余裕見て早く出よう、
と京都のホテルを10時に出て向いました。
 えーと、まず大阪へ行って、石橋駅というところで箕面線に乗り換えて、
となんとか間違えずに箕面駅に到着したのはいいのですが、
11時過ぎに着いちゃった。
箕面線というのは、まさに箕面へ行くための支線らしく、
石橋からたった3駅で着いてしまうかわいい路線なのですね。

 で、1時間以上をどうしよう?
と駅周辺をうろうろすると、
いろいろ食べたいものが目の前に現れました。
 まず、駅前の和菓子屋さんの店先には、
今年はまだ食べていない「かき氷」と書いたのぼりが、「おいでおいで」と誘う。
そのちょっと先には、たこ焼き屋さん。
さらに行くと、箕面名物のゆずを使った「ゆずソフト」という看板。
柚子サイダーというのも。
その先には、名物「もみじ天ぷら」の店が並んでいます。

みんな食べたい。
でもいくら1時間以上あるからといって、全部は無理じゃないか。
「もみじ天ぷら」なるものが、
いったいどういうものなのか、イマイチよくわからないのだけれど
みたところ、全身これ油にまみれている揚げ物といった感じで、
おなかのなかで、かき氷とケンカしそうな雰囲気。

 さらに、私はご当地ソフトとみると食べてみないではいられないソフト狂ではあるけれど、
かき氷とソフトを連続でいくのは暴挙のような気がする。
(ちなみに、ここ数年に食べたご当地ソフトのなかでイチオシは山口県萩の「夏みかんソフト」。
下痢中に無理をして食べた香川県の「アイスクリン」はさっぱり味でおいしかったし、
秋田の「ババヘラアイス」はナルホドという愛嬌のある味だった。
時には失敗もあり、伊勢神宮おかげ横丁の「豆腐ソフト」は、
あまりに豆腐過ぎて、ただのつめたーい豆腐を
コーンにつめて食べているようだった)
 
とりあえず、時間だけはたっぷり過ぎるほどある。
駅前にある観光案内所のようなところへ入って、
名物「もみじ天ぷら」というのが、どういうものなのか、
すごく暇そうに並んでいた3人のボランティア案内人みたいな人に訊いてみた(私もすごく暇ということだね)。

 イスにだらんと座っていたおばさんが急に背筋を伸ばして、説明してくれたところによると、
「もみじ天ぷら」というのは、
関西の人たちには遠足のお供としてポピュラーなお菓子で、
1300年前、修験道場のあったこの箕面の山で、
行者が滝に映えるもみじの美しさをたたえ、
灯明の油で天ぷらをつくって旅人にふるまったのがはじまり、
という伝統ある名物なのでした。
自然を愛でる日本の心が「もみじの天ぷら」を生み出したのだそうです。

 ウドン粉を油で揚げただけであるかのようなみかけより
ずっと奥深い歴史をもつ名物だったのですね。
参道には、店先で揚げたてを売っている店が10軒くらいあります。

こんな感じで。
なかにはもみじを木から育てているというこだわりの店も。
 でも油の海を泳ぎ切った、というかんじのその姿から想像される高カロリーな見た目に、つい後ずさり。

 で、まず食べたのは、たこ焼き。

小腹がすいていたこともあるけれど、
考えてみると今まで大阪に来たのは仕事ばかりで、
実はたこ焼きを食べたことがなかった。

さすが大阪のたこ焼き。
東京のよりサイズが小粒でどんどん口に入っていく、
そして、ふわふわ感が美味しい!

次はやはり今年の初物ということでかき氷。

和菓子屋さんだから、宇治金時のアンコの味も期待通り。
氷の盛りはごく少なくしてもらった。

 ゆずサイダーはビンだけ鑑賞。


ゆずソフトは池内さんといっしょに、
「もみじ天ぷら」は・・・・・・まあ成り行きで、ということにしました。

 そんなこんなで、駅構内のツバメの巣など見上げていると、


またたくまに1時間が過ぎ、
欲望のままに買い食いをして、やけに満足感高し。

 池内さん、時間通りに到着。
さっそく虫目で歩きつつ、昆虫館を目指します。

 上の方の滝から流れてくる川の流れに沿って、
緑濃い道がうねうねとつづきます。



 少し行くと、池内さんが担当している大阪市立自然史博物館のミュージアムショップと取引がある
「箕面ネイチャールーム」という自然関係のグッズを売る店がありました。

『テントウムシの調べ方』や『大阪のテントウムシ』の著者、初宿(しやけ)さんデザインのナミテントウのシールを買いました。

ナミテントウの斑紋のバラエティにあらためて驚きます。

 お店の前の川沿いに生えているセンダンの木の下に、小さなカミキリムシ発見。


お店の方に「なにカミキリでしょう?」ときくと
「カミキリの好きな人がもうすぐくるので、その人にきいてみましょう」とフィルムケースに採集。

 クサコアカソの葉にオトシブミの揺籃がたくさん見つかる。

これはたぶんまだ見たことのないコブオトシブミの揺籃では、と3個採集。

 そうこうするうちに、あ、木立の中に昆虫館が見えてきた!


 これが箕面昆虫館名物のアレ、です。

入口付近にいきなりこれを配置しているところがすごい。


オオゴキというのは森に棲み、分解作業に寄与しているというのがわかりました。


 規模はそんなに大きくないけれど、すごくいい雰囲気の昆虫館。
進路を行くうちに、この昆虫館には、昆虫のカミキリはもちろんですが、
人間のカミキリもいるな、とわかってきます。
それはつまり「紙切り」。


館内のあちらこちらに、紙を切ってつくった展示物があり、
どれもつくった人がいかに楽しんで、ていねいにつくっているかが伝わってくる傑作ばかり。










 そして自動ドアを入ると、そこはチョウ園。


こんなチョウたちがいるようです。

あ、イシガケチョウ見たい!

チョウ園の中心的存在といえば、金ぴかのサナギで有名なオオゴマダラ。

子供がこわがって泣くほどの乱舞っぷり。

そしてリュウキュウアサギマダラ。


イシガケチョウは数が少ないみたいで、なかなか見つかりません。
あ、いた!

でもなかなか近くに来てくれない。
想像していたより、大きいチョウでした。

ふと横の葉っぱを見ると、

うぉっ、これはイシガケチョウの幼虫ではないか!
色形とも、やっぱり只者ではない雰囲気をもっています。

 チョウ園のかたすみで飼育されていた
クロマルゾウムシ。

1センチ以上ある大きなゾウムシ。

何回来ても、チョウ園というのは心躍る場所です。

 展示されていたなかでもっとも心に残ったのはフィリピンビワハゴロモ。

この翅の模様って、やっぱり驚異。

花柄のブラウス着ているみたい。



 さて昆虫館でふだん見ることができないような珍しい虫をたくさん見た後は、

このすてきな古い建物のカフェでお昼ごはん。

雰囲気だけでなく、味もばっちりでした。


 こんな風景のなかを、さらに滝を目指して登っていく。



濃い青緑色のハエトリグモ。

ずっと見たかったアオオビハエトリかな。



シダの葉をボールのようにきれいに巻いたのはだれ?



アカハネナガウンカ。

このウンカ、正面から撮ると、目玉がとっても剽軽でかわいいので
なんとか写真をと思っているのですが
きょうも正面にまわるまでに飛ばれました。

 滝まであと1,6キロという表示の所で、回れ右。
どうも目的地までたどりつかない私ですが、
ゆずソフトも食べなくちゃいけないし・・・・ということで
駅前にもどる。

期待のゆずソフトは、
イタリアンレストランのものだったので
ジェラートの味はかなり美味しかったのだが、
ゆずのジャムは・・・・・・かけないでほしかった。


 ともあれ、見たいものを見て、
食べたいものを食べて
自然豊かな箕面を堪能した楽しい一日でした。

 そして大阪駅構内で、虫愛ずる旅の最後の駅にふさわしいこんなポスター見つけた。

ファッションビルの広告らしい。

「オシャレの虫が、さわぎだす」というコピー。
よくみるとテントウムシも、ナナホシとかじゃなくて
カメノコテントウとシラホシテントウだし、
ポピュラーな虫の間に糞虫までまぎれこんでいるところをみると、

きっと虫の好きな人がつくったんだろうなあ、とうれしくなるポスターでした。

 3日間をきっちりつきあってくれた池内さんとここでお別れ。
ほんとうにお世話になりました。
改札を通って振り向くと、まだ手を振ってくれていました。
また何かいっしょにやりたいですね~。

 午後10時ごろ家にもどると、
イベントに来てくれた神戸の少年植物博士ゆうひ君から、
「吉田山の観察で教えてもらったことを本にしています」と
メールがきていました。
吉田山の観察ワークショップでは、ゆうひ君にずいぶん樹の名前を教えてもらいました。

「春夏秋冬全ての虫」っていう意気込みがすごいです。

ゆうひ君の絵にはいつも描きたいことがあふれています。



 そうそう「もみじ天ぷら」、やっぱり買って帰りました。

おじさんに揚げるところを見せてもらって。


天ぷらというより、芯まで油を吸いこんだカリントウという感じ。
もみじはどこ行った?という衣の厚さというか、
ほとんどその姿が見えませんが、
でもカリカリして、うす甘くて、
「鶯ボール」みたいな、食べ始めるとつい手が止まらなくなる、
やばいお菓子でした。
これをポリポリかじりながら、紅葉の箕面を歩いたら、さぞ楽しいだろうな。

 たくさんの人と虫に会えた、虫愛ずる3日間でした。

虫と人に会いに京都、大阪へ。虫愛ずるイベント当日編

2011-06-13 21:25:48 | 日記


 よく考えてみれば、というよりちょっと考えてもわかることですが、
「京都と虫」というのは常識的にみればミスマッチ以外のなにものでもない。

『虫愛ずる1日 in 京都』などというタイトルのイベントに、
いったい何人の人が興味をもって足を運んでくれるのだろうか?

しかしさらに考えてみると、
かの『堤中納言物語』のなかで燦然と輝きを放つ一篇『虫愛づる姫君』は、
京の都で栄えた平安文学作品のひとつ。
そう、その昔平安京で、虫を愛ずるという行為の風雅さというものがまず見出された
という歴史に思いをはせれば、
虫のイベントが京都で行われるということに、
ちっともちっとも、不思議はないのです。

 さて、6月4日、虫の日。
6時起床。ホテルで朝食。
8時、ロビーで赤穂からはるばる駆けつけてくれた、
トークイベントをいっしょにする有吉立さんと再会。
すらりとスタイリッシュ、凛とした雰囲気のこの女性が、
よもやゴキブリ100万匹と90種の虫を管理する仕事をしている人だとは、誰が想像できるでしょう。
 昨年10月、赤穂の海辺に建つアース製薬研究所飼育棟にお訪ねして以来の再会。
分けていただいたミナミアオカメムシのその後の様子など、
バスのなかで積もる話をしている間にガケ書房に到着。

 全員が集合したところで、準備に突入。
 トークの開始は10時・・・・・・1時間でできるだろうか?
そしてなんと山下さんから、「今朝、申し込みが31名になりました」と。
イスが足りません・・・・・・た、たち見?!


 本や書棚を動かして、
なやカフェからもイスが運び込まれ、
スクリーンを設置して、
PCで画像を映すテストをして・・・・・
みんな必死に動き回って、
9時45分には、最初のお客さんが入ってきたのでした。

 朝10時というとトークイベントの開始としては早いと思うのですが、
なんと申し込みをした方全員がいらしてくれました。

(三浦夕香理さん撮影)
右の書架の向こう側にも同じようにお客さんが,ぎっしり。


圧倒的に女性が多い中で、7名の男性の姿も。
6名の方はイスがなくて立ち見になり、もうしわけない気持ちでした。
 後できいたところによると、有吉さんの地元赤穂からおふたり、
ほかにも東京、神戸、大阪、滋賀などなど、
遠くからおいでくださった方もいて、うれしい驚きの連続でした。
 

 さて、『虫の愛で方 三人三様』というタイトルのトークですが、
池内美絵さん、有吉立さん、そして私の間で、
だいたいどんな流れでどんな話をしよう、という打ち合わせはしていました。
この日会場に集まってくださった方々もそうだと思うのですが、
ひとことで虫が好きといっても、人によって楽しみ方はさまざま。
女子は標本をつくったりコレクションしたりという死骸愛好よりも、
生態を観察する生体愛好家が多いようですが、
私たち三人は、特に好きな虫も、虫との付き合い方も違う。
だけどなんとなくお互いの虫の愛で方に共感できて、
それでときどき会いたくなったり、虫を交換したり(私は主にいただくばかりですが)、
ということをやってきました。

 日ごろどんなふうに虫との付き合いを楽しんでいるかとか、
これから飼育してみたい虫は?とか、
私はこの春から見つけた虫の写真や、
連れて行ったゴマダラオトシブミを見てもらったり。

 有吉さんは、2種類のゴキ○○と、カラフルなミナミアオカメムシ、
そして美麗昆虫の代表としてニジイロクワガタの夫婦を、赤穂の研究所飼育棟から連れてきてくれました。

気になる2種のゴキ○○ですが、どれにするか、事前に3人でじっくり話し合いました。
あんまり怖いものを見せたくないので、ゴキ○○は地元の代表ということで小柄なキョウトゴキブリと、
翅がなくて飛ばない、しかも性格がのんびり(池内さんによる評価)している、
ゴキ○○界の人気者マダガスカルオオゴキブリの2種が選ばれたのでした。

 あっという間に過ぎた1時間のトークの後は、
虫を手にのせたり、写真を見たりと大賑わいのひととき。


(三浦夕香理さん撮影)

有吉さんが持参してくれた虫はつぎつぎにお嫁入りしていきました。
オーストラリア産ニジイロクワガタは、なかなかこんな大物スターを飼うチャンスはないから、

妊娠していると思われるメス。


華美の限りをつくしているオス。

と私がいただきました。

オス「ぎゃー、だれか~ ヘルプ!」
止まり木がないとすぐにひっくりかえって
華麗なおなかを見せながらジタバタ。
なかなか起き上がれません。

しかし、ゴキ○○は嫁に行けないだろう、という予想に反し、
マダガスカルオオゴキブリの人気はさすがで、
手にのせたままなかなか離さない人も。
背中を押すと、鳴くんです、「ぎゅーっ」みたいな愛嬌のある声で。
やはり何に於いても人気者というのは、どこか人の心をつかむ魅力をもっているものなんですね。
有吉さんの飼育下では無菌状態で育てられるので、きわめて清潔。
こんなふうに手にのせてもばい菌を移されることはありません。

(三浦夕香理さん撮影)

そして、そのうちのおひとりが連れて帰ることになったのです。
でも彼が虫苦手とか。
えっ、大丈夫?
と訊くと
「うーん、とりあえず、
マダガスカル産のすごく珍しいダンゴムシということにしておきます」というのですが・・・・・・
そ、それ、かなり無理があるんじゃ・・・・・・・・・・・・。

マダゴキが不和の原因にならないことを、
彼がうまくだまされてくれますように
心より祈らずにはいられません。

 お昼になったので、向いのなやカフェに移動。

ここも25人くらいの参加で、なやさんの店内はテンヤワンヤの盛況。


そして気になる虫の日ランチのメニューは・・・・・・・・

天然酵母の手ごねパン、クリームチーズのイモムシ仕立て添え(イモムシは入っていません)

クワの実のジャム


ハチの子入りのパテ

左の小皿にのっているのが、ハチの子の塩焼き。(三浦夕香理さん撮影)

ジャガイモとエンドウ豆のスープ
繭に見立てたクッキー。クワの実入り。

(三浦夕香理さん撮影)

石挽き豆コーヒーかチャイ

という
ムシの日の気分をおおいにも盛り上げてくれるものでした。
私はハチの子の塩焼きはパス(ごめん!)してしまいましたが、
けっこうみなさんの手は出ていました。
それにしても、なやさんのパンのおいしいこと!
風味が複雑で深くて豊か。
パンをほおばりながら、私はきょうここに来てくれたひとりひとりと、話しをすることにしました。

店のまわりもいい雰囲気。

東京からはるばる来てくれたイラストレーター、陶芸家の宇佐美朋子さんは、
この日のためになんと知り合いのネイルアーティストにルリボシカミキリのネイルを描いてもらったという!


そして、手作りの虫クッキーのおみやげまでみんなに用意してくれていたのです。

宇佐美さんの虫イラスト入りのブログ、http://days.usamitomoko.com/
必見です!

 なかには「あ、こんどいっしょに虫探し行きましょう」と、虫友達ができたらしい人たちも。
そう、女性は特に、山道などでどっぷり虫目になっていると、無防備になりがちなので、
いっしょに歩ける友達がいるといいのです。
この場でそんな出会いがあるといいな、と思っていたので、
相棒を見つけた人がいるのを知ってすごくうれしい。

 みんなのおなかもいっぱいになったので、
イベント第3部、吉田山観察ワークショップへ出発。19人が参加。


 15分ほどみんなでおしゃべりをしながら歩いて山道の入口にさしかったとき、連絡があり、
観察会だけ参加という人がここで、7人も加わることに!

(三浦夕香理さん撮影)
山道の手前で、チョウ発見。

裏羽だけしか見えないのだが、さっき飛んでいるときにちらっと見えた黒と白の模様からするとコミスジか。

『むし探検広場』http://insects.exblog.jp/d2011-05-03/
の園長さんより「これは関東では見かけないが
関西ではけっこう飛んでいるホシミスジです」と教えていただきました。



 さて、きのうたった1回登っただけの吉田山です。
『虫愛ずる一日 in 京都』というイベントの一環として、
近くの山で観察ワークショップをやってみよう、と思ったのは、
まず自分自身が虫を見つけに歩きたかったから、という単純な欲望からはじまったこと。

そしてもうひとつの理由は、
いままで取材でカメラマンや編集者と、
また「虫さがしに連れてってください」という知り合いと虫目で歩いたとき、
私が虫目で歩いていて虫を見つけはじめると、その人たちも、
いままでは目に入らなかった小さな虫の存在に気がついてくれて、
そういうとき人は、びっくりするほどうれしそうで、活き活きするというのを見てきた、というのがありました。


 せっかくのイベントなのだから、来てくれた人と虫目で歩いてみたい、
という気持ちで挑戦した観察ワークショップ。
さて、はじめてみると、
虫目ペースで歩き出した私のまわりで、あちこちから
「この虫、なんですかあ?」と声が上がり・・・・・・・

(三浦夕香理さん撮影)

そう!参加者がみんなそれぞれ自分で虫目になって、つぎつぎと見つけたものを教えてくれる!

ふつう観察会というと、○○自然園の指導員とか、農学部の先生とかネイチャーガイドとかの専門家が引率して、
「はい、ココに見える小さいつぶつぶ、なんだと思いますか?これはアオスジアゲハの卵なんです。
ほら、この葉っぱの裏に幼虫がいますね」などと、熟知したフィールドの見どころを案内し、説明していく。
でもきょうの参加者たちは、自分の目でつぎつぎと、初めてみる虫を探してきてくれるのです。
その声は弾んでいて、どの虫目もうれしそうに輝いています。

 葉っぱの上にジョウカイボン。この時期によく見られる虫です。



 私も初めて見たマエアカスカシノメイガ。

きれいですね。このガは鱗粉が少ないので、翅がこのように半透明なのだそう。

 木の枝の葉っぱの上になにかいる、という声で枝を下げてみてみると


なんとゲンジボタル。

 虫の死骸に群がるシデムシを見ようと

人も群がる。

(三浦夕香理さん撮影)



 笹の枝には、孵化したばかりのジョロウグモの1齢幼虫が500頭くらい。

(三浦夕香理さん撮影)

 枯葉のあいだにいたのは白粉を塗った下がり眉の人面模様のような背面のアオオニグモ。


 山頂の東屋の前の階段で、遠足風の記念撮影。

数えてみたら、(写真を撮ってくれている三浦さんと、胸に抱かれた赤ちゃんもいれて)27人いました!


 早朝からのイベントなので軽めにしておこう、
ということで帰りは近道で下山して解散。
イベント第3部まで、すべて無事終了したのでした。
朝もはよから、虫愛ずる一日にお付き合いくださったみなさま、
ほんとうにお疲れさま&ありがとうございました!

 
「なんか冷たいもの、のみた~い」と叫びながらガケ書房にもどると、
なにやら店内、店外とも、人でいっぱい。すごくにぎわっています。
ここは人が足を運びたくなる、愛されている書店なんだなあ、
ということが一目瞭然なのでした。

 入口のもぐらスペースの池内さんのヤスデ屋さんにも、
次から次と人が訪れています。
外壁から突き出した車の向こう側に置かれたイス周辺にも人が集まり、
京都左京区の夕暮れどき、ガケ書房はまるで店全体が、
ゆったり、楽しそうに息をしている有機体のように見えるのでした。


3人で「またやりたいね」と記念撮影。

 さて、3日目は、東京へ帰る前に、
大阪箕面(みのお)の昆虫館へ行きます。
池内さんとの待ち合わせの1時間以上も前に箕面に着いてしまった私は・・・・・・・。
「虫と人に会いに京都、大阪へ」まだつづきます。

虫と人に会いに京都、大阪へ。イベント前日準備編

2011-06-11 16:43:39 | 日記
 
 6月4日、京都左京区のガケ書房でのイベント『虫愛ずる一日 in 京都』。
10時からトークイベント、お昼には近くの「なやカフェ」でランチしつつ親睦会、
そして午後は近くの吉田山を虫目で歩く観察ワークショップ、
と1日を虫目三昧しようという欲張った内容でしたが、
予想外(?)にたくさんの方が参加してくださってびっくり。
参加してくださったみなさま、ほんとうにありがとうございました!

 わたしは前日3日から京都へ。
イベント翌日の5日は大阪の箕面昆虫館へ出かけるという充実の虫目3日間でした。
 虫と人に会いに行った京都、大阪への2泊3日。
まず1日目から。

 5時起床。
どんなときも朝食は必ずとるので、
早起きしていつものようにご飯づくり。
メールをチェックしつつ、出かける準備。
仕事の都合でどうしても同行できなくなった娘が、
イベント成功を祈って自由が丘のガチャガチャで集めてくれたという、

テントウムシのストラップをお守りに、家を出ました。
真ん中のハイイロテントウ(外来種)と奥のウンモンテントウ、今年こそは見つけたい。

 9時の新幹線でまず新大阪へ。
12時少し前に大阪駅で、イベントをいっしょにやる池内美絵さんと待ち合わせ。
待ち合わせ場所へ行く間に、大阪へきたぞ、と実感することが3つ。
一つ目は、東京にはない踊り場のあるエスカレーター。
エスカレーターの途中に、水平な部分があり、
下りではその部分を過ぎたとたん、滝のように下に流れ落ちる。
はじめて乗った時はびっくりしました。

 2つ目。平日昼間も女性専用車両がある。東京でも作ってほしい。
3つ目。エスカレーターの右寄り左側空け、の習慣。
東京は逆なのですが、私は右寄りの関西方式のほうが体になじみます。

池内さんといっしょに『虫目で歩けば』を置いてくれているブックショップ&カフェ
「カロ」http://www.calobookshop.com/
さんへ。

店主の石川さんに連れてきちゃったゴマダラオトシブミを見せているところ。(撮影 池内美絵)

 センスのいい、しかも気の置けない雰囲気のすてきなショップです。
こんなお店に私の本がセレクトしてもらえるなんて、うれしい。
お昼時だったので、石川さんお手製のスパイシーなカレーでランチ。


(撮影 池内美絵)
ちょうど新たに注文してくれた本が出版社から届いたところだったので、
その何冊かにサイン。

(撮影 池内美絵)

 きょうは池内さんと一緒に、イベントの打ち合わせや観察会の下見やら、
まだやることがいっぱいあるので、タクシーで大阪駅へもどる。

 地下鉄で京都へ移動。
電車の中で、池内さんから明日のトークイベントの申し込みが
18人になったときいて、よかったー、とふたりで喜びました。
1週間前までは申し込みが、えっ!ふたりぃ?・・・さびしっ!
という状態だったのが、ここへきてどっと人数が増えたのだそうです。

 京都着。
四条烏丸から岩倉5番のバスで30分。白川通りに到着。
1分ほど歩くと、道の向こう側に、あ、見えてきました、ガケ書房。


 京都大学があるこの地域は、
京都ならではの雰囲気と、新しいことが同居している町です。
その中でも、ギャラリー、セレクトブックショップのガケ書房と恵文社は、
この左京区の文化を象徴する存在といえるでしょう。
 恵文社は以前行ったことがありましたが、ガケ書房は初めて。
ひとめ見て、写真を見て想像していたよりずっと素敵なお店だったので、心が躍りだしました。
http://www.h7.dion.ne.jp/~gakegake/


 けっこう大きな一階建ての建物で、
外壁は石をびっしり挟み込んだ粗い金網をめぐらして崖に見立て、
その一か所に後ろ半分が埋まったように、赤い車が顔を出している、
ひとめ見たら目に焼き付いてしまう外観。


 広々した店内には書架がいい感じに並び、
1冊1冊セレクトされた本や雑誌が並んでいます。


店長の山下さんにご挨拶&明日の打ち合わせ。
申し込みは今日も増え、25人になったときいて、おお~。
「ありったけのイスを出しても足りるかなあ」と山下さん。
イベントの一環としての「虫本フェア」の本ももう並べられています。


 ここは、明日のトーク後に池内さんがヤスデをみんなに紹介する、
というイベントを開く
ガケ書房入口にある「もぐらスペース」。

ほんの半畳くらいの広さですが、なんだか上から陽がそそいで、元気な黄色いもぐらもいていい感じ。
「自分だったら、このスペースを一日提供してもらったら、何をするかな?」
とつい考えてしまうような、気持ちのどこかを刺激するものがあるスペースでした。

 明日は朝9時に集合して準備をする、とういことで、
次はすぐそばのなやカフェさんへ。
http://www.naya-78.net/


 なやカフェは、「手ごねの酵母パンと石焼き豆コーヒー」をメインに、
自畑で育てた野菜などのこだわり素材の料理、
レトロであたたかみのある店内雰囲気で常連も多い人気カフェ。
私ははじめて行ったのですが、
オーナーの侑記さんが厨房に立つ姿があまりにすがすがしく絵になるので、
ああ、こんなお店で虫イベントのランチ親睦会なんていうことをしていいんだろうか、
と心配になった。


 でも事前に池内さんからきいたところによると、
虫愛ずる一日のランチとして、なやさんでは、特別メニューを考えてくれていて、
それがなんとハチの子がはいっているパテとか、
カイコ(!!!)とクワの葉のサンドイッチ・・・・・・とか。
しかし、カイコは今その数が減少しており、
仕入れができなかったとのこと。
残念なようなホッとしたような。

 なやさんを出るとはや3時すぎ。予定が押している。
これから吉田山へ行って明日の観察ワークショップの下見をし、
池内さんはそのあとトーク時に写真を映すプロジェクターなどの準備をして、
それから大阪の自宅に帰って明日ヤスデを連れてくる準備をしなくちゃいけないのに。

 かなり焦り気味に吉田山を目指す。
歩いて15分くらいで山道の入口である赤い鳥居に到着。
吉田山に来たのは、はじめて。

(撮影 池内美絵)

明日は20人くらいの人たちを案内しなければ、ならないのです。
虫が見つかってほしいのはもちろん、
まずはみんなを連れて道に迷うことだけは避けたいので
方向音痴の私もかなりマジで道を覚えようとするあまり、虫目がおろそかに。
時間がない上に道を覚えなくてはいけないという二重のプレッシャーで虫目になる余裕なし。
足元にシデムシ、花盛りのトベラの木にオレンジ色のイモムシを見つけたくらい。

こんなことで、明日は大丈夫だろうか、という不安がよぎる。

 吉田山はこじんまりした小さな山、という印象ですが、
その割にはけっこう枝道があって、
メインの道を上ってきたつもりが、やっぱり迷ってしまいました。
そこで、時間もないけれど、山頂付近にあるという「茂庵」という、カフェを目指して、
道を尋ねることにしました。
歩き回った後で、カフェ、という言葉が
魔法のように疲れた足に元気を注いでくれます。
さらに迷ったあげく、なんとか茂庵にとうちゃく~。
そこは緑したたる敷地内に昔の茶室などが点在し、古い町屋をそのまま使ったカフェ
。時間がないけど、道に迷って疲れてもいるし、
ふたりとも遅れている時間を無視してお茶にすることに。

 メニューは軽食と、和洋が融合した甘味類。
どれも和を感じさせつつ、バランスがいい。
白ごまと黒ゴマのシフォンケーキに、キャラメルとナッツをかけたアイスクリームというセットにしました。


白とグレーのマーブル模様を描くシフォンケーキは目にも美しく、
ゴマの味も出過ぎずちょうどいい。
自家製キャラメルソースとカリカリのナッツをかけたバニラアイスも、
添えられた生クリームの甘さ加減、ゆるさ加減も・・・・・
すべてが調和していて、大満足のセットです。

 ところで私は京都の「和スイーツ」というものを、
どうも世間でいうほど評価できないのです。
ひとことでいうと、和素材をこれでもかと積み重ねてはいるが、
総合的にみるとどこか野暮ったい。

 たとえば京都の和スイーツを食べさせる甘味店の代表として名高く、
東京をはじめ全国的に人気の京はやしやなども、
抹茶のクオリティにお金をかけすぎているのか、
値段の割に私的には毎回満足度低目。
素材それぞれの品質にはこだわりをもって、
真面目に誠実に京都ならではのあれこれをつぎ込んではいるのですが、
それを統合するセンスに欠けるのが惜しい気がする。

 特にいままで食べてきた京都の和パフェには
全部食べきれないものが多かった。
パフェなどというのは、細長いグラスのなかに、
さまざまものが積み重なって、
つぎつぎつぎとスプーンの先で掘り起こされるアンコ、
白玉、わらびもち、栗、寒天、アイスクリーム、わらびもち、抹茶もの、黒蜜、果物などなどが、
その時その時にどれといっしょに口にはいっても、んー、んまいっ!
と思わせる内容要素のセレクトと盛り方がいのち。
味のバラエティと意外な調和の醸すひと匙の至福の連続、
というものを味わわせてくれるのが、パフェの醍醐味というものでしょう。

 ちなみに、私が和スイーツとしての妙味に
いつ食べても満足するのは、(京都発ではない)キハチと梅芯庵です。
あずき、抹茶、アイスクリーム、きなこ、わらびもち、コーンフレイクと
のどれをとっても「うん、ちゃんとしてるな」と感じさせる素材、
ピタリと決まった甘味のほどよさ、
そして全体をまとめる構成のセンス。
これは食べ物全体にいえることだけれど
お客にどんな体調のときに食べても美味しいと思わせるのは
並大抵の力じゃない。

朝起きてまず食べるのは、
富沢商店の「特選こしあん」を龍泉洞の水でゆるめた「あんこソース」を、
やわらかめにつくったサイの目の寒天にかけたもの、というほどあんこLOVE,
かつ乳製品とあんこの相性の良さに陶然とする私は、
京都の和スイーツに、京都発という強力なブランド力とともに、
もう一歩踏み出した精進を、と期待しないではいられないのです。

 さて茂庵の和洋融合甘味。
さりげなく白黒のゴマを見た目と風味に活かしつつ、
全体としてすごくいいハーモニーの一皿。
汗も不安も疲れも悩みも・・・・・・
窓外の風雅な風景と、
吹き込む緑の風とともに消えていくのでした。

 山頂というと行くのがたいへんそうなイメージですが、
吉田山はこじんまりしているので、
仏像とか国宝とか庭園とかといった人口美を堪能したあとは、
ぜひ京都の豊かな自然美を楽しむために、
吉田山(木々、花、虫)&茂庵というコースをおすすめしたいです。

 満足度の高い甘いものですっかり元気をとりもどした私たちは、
明日のルートなどを確かめつつ、山を下りました。

 はや夕暮れ。
ヤスデの魅力をみんなに伝えるための準備とか、スクリーンを借りてくるとか、
まだまだあすのために準備がたくさん残っている池内さんと別れ、
四条烏丸のホテルへ向かいました。

 甘いものの話につい力がはいり、
虫目はどうした?といわれそうな、寄り道気味の1日目の報告でしたが、
次はいよいよイベント当日の様子を盛りだくさんにお伝えしま~す。


オトシブミの揺籃づくりをマネしてみた

2011-06-01 06:46:38 | 日記
 去年は時期を逃してしまい、くやしい思いをしたオトシブミさがし。
今年は4月末からスタンばって観察しています。









新緑のなかのオトシブミ、ほんとに風情があって美しい。


 そもそもなんでこんなにオトシブミに夢中になってしまったのか、と考えてみると、
やっぱりこの本との出会いがあったからでした。


 ベストセラー『イモムシハンドブック』と同シリーズの『オトシブミ ハンドブック』
(文一総合出版刊 安田守、沢田佳久著)。
『本書は、野外でオトシブミやオトシブミが葉を巻いて作る揺籃に出会うための案内書、
出会った時の手引書である』という前書きからして明解でいいな。
そうそう、そういうのが欲しかったんです!と拍手したくなる。
今年は春先から、もうずっとこの本を熟読し、
揺籃の形などを脳みそにインプットしてきました。

 そして待ちきれずに4月後半からさがしはじめ。
4月29日には、まずヒメクロオトシブミを見ることができた。


 そして、ん、このオシリはもしや?


ヒメゴマダラオトシブミでした。

縞模様のある頭部、ぽこっと盛り上がる背部のふたつのコブがチャームポイント!

 しかしオトシブミはぶらさがっている揺籃の数のわりには、成虫の姿を見つけるのが
けっこう難しい。
 なので揺籃制作中のオトシブミを見つけて、その一部始終をカメラで記録する、というのは
野外ではなかなか難しい(ちょうどいいタイミングでも2時間くらいかかるらしいので)。
そこで
いつも行く公園の外の林縁で、採集をすることに。
すでに木にぶらさがっている揺籃と食草を採集して、
家で生まれた新成虫に交尾してもらい、
揺籃をつくるところを見せてもらおう、という計画です。

 オトシブミは日本にオトシブミ亜科21種とチョッキリ亜科9種がいるそうです。
『オトシブミ ハンドブック』では、
『オトシブミとは葉を巻く習性をもったゾウムシの総称として用いている』とあるので、
オトシブミもチョッキリもゾウムシの仲間なんですね。

 でも種によって揺籃づくりに用いる植物も違うし、形も違う。




驚くことに、チョッキリは揺籃から出た成熟した幼虫が一度土にもぐって蛹化し成虫として土から出てくるのに、
オトシブミ亜科のオトシブミは揺籃のなかで、卵、幼虫、蛹、成虫とすべてのステージを過ごして、
いきなり新成虫が揺籃から出てくるという。
へぇ~、なんて楽しみなんだろう。

 とういことで、ケヤキ、エノキ、エゴノキから20個の揺籃と、
ヒメゴマダラオトシブミ2頭を採集してきました。

 枝挿しにした植物を置き、2頭の成虫を入れてみましたが・・・・
全然交尾もしないし、葉も巻きません。
葉っぱだけが穴だらけになっていく。


どうも2頭ともオスだったみたい。
これはもう新成虫に期待するほかありませんね。

 オトシブミは揺籃内に卵が産み付けられてから、
3週間から1か月で成虫が出てくるというのですが、
採集して3週間目のある日、つぎつぎと(1日に9頭も!)、新成虫が出てきました。
全部ヒメゴマダラオトシブミでした。
これだけいれば、交尾して産卵、揺籃づくりをみせてくれるに違いありません。


 次の週にはエゴノキから採った揺籃から、
エゴツルクビオトシブミが1頭誕生しました。

つやつやの全身まっくろなオトシブミです。
頭部のすべっとした曲線が魅力的!
オスはもっと首が長いみたいなので、これはメスかな。

 ところで、葉の先にぶら下がる揺籃を見ているうちに、
この天性の折り紙職人の仕事をマネして、
揺籃がどうやってできるのか自分でもやってみたいと思い、
試すことにしました。

 折り紙は、けっこう好きです。
ときどきたまらなくやりたくなる。
紙を折っていく作業は情緒を安定させる作用があるような気がします。
手先もそれなりに器用だと思うし、オトシブミに負けない揺籃をつくることができるんじゃないか、と。
 で、ハンドブックにでている揺籃のつくり方のとおりに、やってみることにしました。

 エノキの枝に、お手本の揺籃がひとつついているのを選んで、その隣の葉をつかうことにします。

① 葉の付け根近くを、葉先から主脈まで切り目をいれる。
オトシブミのように口で噛み切ることは無理なので、ここはハサミで。


こんなふうに、折り始める前に葉の準備。

② 主脈を切り落とさない程度にちょっと傷をつけたら、さらに主脈にそって、切込みをいれる。主脈にキズをつけたことで、葉がちょっとシナっとしてくる。


 葉全体の主脈のちょっとわきを噛んで(ハサミで傷つけて)折りやすくする。
このなんでもないような工程には、ちゃんと理由がある。
主脈の真上じゃなくて、気持ち脇側、というところがポイント。
紙を重ねて巻いたことがある人はわかると思いますが、
巻いている内に、端がしだいにそろわなくなります。
端をそろえてきちっと巻き込めるように、
オトシブミははじめから、真ん中をちょっとずらして噛み傷をつけるのです。
うーん、かしいこい・・・・・・。

③ここまでできたら、後は巻いていくだけ、と思ったら大間違い。
巻きはじめの葉のなかに卵を産まなくちゃ。これが目的ですから。
でも私には産卵は無理なので、卵を仕込んだことにして、先に進みました。


⑤ 左側の端を折込みつつ、けっこうきちんと巻けています。いいかんじ~


⑥ふう・・・・・。巻き終りました。



⑦ ここからがポイント。
巻いたものがもどらないように、
残っている葉の上の部分をくるっと裏に反して留めます。

ん、けっこう難しい。

⑧ なんとかできた!・・・・・・かな?と手を離して、隣の本物と比べると


⑩ 巻き戻りはしないけど、かなり見劣りする。

「なにソレ?」って、オトシブミの奥さんに言われそう。

 途中まではよかったんだけど、こんなに難しいとは。
自分でやってみて、
改めてオトシブミの仕事のみごとさ、賢さ、ち密さがよくわかりました。
ましてオトシブミにとっては、一枚の葉は広くて分厚いじゅうたんのようなものでしょう。
いったいこんな小さな虫が、
どうやって、こんな風な円筒状に巻くきっちりした仕事をするのだろう、
といろいろ調べてみたら、You Tubeに、オトシブミの細かい作業中の体の使い方、
力の入れ方がよくわかる映像がありました。
http://www.videosurf.com/video/leaf-rolling-weevil-1296115990
全身の筋肉を使っています。

 ここまで書いてきて、ちょっと揺籃の容器を見たら、
うちでは初めてのゴマダラオトシブミが誕生していました。

『オトシブミ・ハンドブック』の表紙を飾っている、水玉もようのオトシブミです。

 どこか人がよさそうな表情といい、くっきりした背中のもようといい、見とれてしまいます。

肩にトゲのような突起がないので、オスのようです。

 揺籃から出てきた新成虫が交尾して揺籃をつくるのを見届けるまで、
 オトシブミ、チョッキリ観察、まだまだつづきそうです。

さて、かねてよりお知らせしていました6月4日のイベント
『虫愛ずる一日 in 京都』がいよいよ迫ってきました。
行こうと思っていたけど、まだ申込みしていなかった、
という方は、ぜひガケ書房さんへ!

ガケ書房さんのサイトhttp://www.h7.dion.ne.jp/~gakegake/
から予約できます。

 トーク後の、親睦会ランチと観察会は予約がいりませんので
自由に参加してください。

 私は観察会の下見もかねて、
6月3日から京都に行きます。
お天気もなんとかもちそうで
楽しみです。
すでに予想をうわまわる(?)申し込みをいただいているそうで、
この機会に、関西の虫好きのみなさまと
お会いできるのを心待ちにしています。

 そしてきょうは
『バニャーニャ物語』第5回目の更新日。
こちらもどうぞ、よろしく。

虫目歩きから生まれたファンタジー『バニャーニャ物語』へはここからどうぞ。


冒険の旅から帰ったジロの家で、
夜、あやしいもの音が。
その正体は?