鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

むこう見ずなナナフシと遊ぶ

2011-04-27 20:53:42 | 日記
 地震以来、なにかあっても徒歩で帰宅できる範囲で虫を見ていたのですが、
おりしも若葉が日々伸びて、虫も活動をはじめるこの時期、もうがまんできなくて、
お天気のいい週末、生田緑地と鎌倉中央公園に行ってきました。

 あちこちで木々がやわらかい若葉を吹き出し、
原っぱはカラスノエンドウ、タンポポ、ギシギシ、スイバ、
ハナダイコンなどでおおわれていました。
去年飼育したツマグロヒョウモンの食草タチツボスミレも今が盛りと咲いていました。


 生田緑地の入口付近に着いて、
道端のナノハナに「あ、ナガメがいた」と思ってカメラを向けたとたんに
・・・・・ゆれました。
まわりは何もない原っぱ。
倒れてくるものもないけど、
つかまるものもない。

本能的にバランスをとろうとしたのでしょうか?
気が付いたら、まるで案山子のように手を広げていました(笑)
こわかった・・・・。
でも気を取り直して、いつもの観察地点に向かいました。

生田緑地は広大な面積をもっていますが、
私がいつも歩く地域は「ホタルの里」一帯。
湿地や田んぼを含んでいるので、通路はボードウォークになっており、
ここで揺れたら・・・・こわいな・・・


こんな場所


と思いつつも、どんどん奥へ。

 去年、トリノフンダマシを見つけて狂喜したコブシの木は
枝先に芽を吹いたばかり。
今年はここでまたトリノフンダマシの卵のうをゲットして、
ぜひ家で孵化させてみたいものです。
あのゼリーコーティングしたような、
三角形のトリノフンダマシの子どもたちが、
糸を出してあちこちする様子を考えると、わくわくします。

まず目についたのは、カラスノエンドウの花影からのぞいているピョンちゃん(ハエトリグモ)。



さかさまになって、どこか目がうつろになってるデーニッツハエトリ。




デーニッツの背中の模様はこんな風。


こちらはネコハエトリのオス。

背中の模様が意味ありげ。

くるっと振り向いて

きらきらする目でこっちを見るヤバネハエトリ。



きょうは櫛形の触覚を持ったヒメアカハネムシが、たくさんいました。

草の中でとても目立つ赤い体。

ハナダイコンから蜜を吸うビロードツリアブ。


 空中でホバリングしながら蜜を吸っているこのアブは、
「むし探検広場」http://insects.exblog.jp/d2011-04-01/
によると・・・・・・『この仲間は、口吻の先からロウ物質を変質させた材質でできた糸(先端にはちゃんとカギ状の針もついています)を垂らして、地中に潜むケバエ類の幼虫を釣り上げ、食べてしまうのです』
と説明されています。
こちらは釣り中?

蜜も吸うし、ケバエも食べる、というバランスのいい食性のアブなんでしょうか。

 これは黒褐色の斑紋があるから、もしかしてナシグンバイ?


グンバイをはじめてツツジの葉裏で見つけて、ルーペで見たときは感激しました。
ほんの2ミリほどの大きさなので、よく見ないとこの虫の美しさはわかりません。
まるで雲母のステンドグラスでできたような体をしているんです。
ところでグンバイって、カメムシの仲間なんです。似ても似つかない外見だけど。

あ、これはジョウカイってやつじゃないかな?

1センチくらいの大きさでした。

白で縁取ったつやつやした黒地に3つの白い星はミツボシカメムシ。

このカメムシを見ると、小柄で地味目だけど、ちゃんとオシャレに気を使っている人、を連想します。

そして草の海のなかには、いろんなテントウムシがかくれていました。


アリマキをバキバキ食べる幼虫。

上に行こうか下に行こうか、逡巡しているふうのナミテントウ。



ヒメカメノコテントウの無紋型と


白地に黒い紋のタイプ。たった2ミリだが陶器でできているかのように美しい。


毛の生えたテントウムシの一種ヤマトアザミテントウ。

同じく28個も星のあるオオニジュウヤホシテントウとは、背中の星が融合している点が違います。

あれ、けっこう出目!




 そして次の週末には、鎌倉中央公園へ。
入口付近には、青空に泳ぐ、とういより、なんとなくメザシっぽい並び方の鯉のぼりが風にゆれていました。


去年オトシブミを見つけた木には、青黒いつるっとしたハムシ。


そのそばにいたのが、2ミリ半くらいの小さな虫。

ルーペでみてゾウムシだってわかりました。

草の上でぴかっとしたな、と思ったらジンガサハムシでした。


エノキの幹ではナミテントウが産卵中。

1本のエノキの幹に20以上の黄色い卵塊が。
いまが産卵シーズンのようです。

3ミリくらいの何か赤いものがいます。

ムネアカアワフキのメスでした。
メスは小楯板と前胸部背がこのように朱色で、目立ちます。(オスは小楯版だけ赤色)
ちょっと見には、背中の割れ目から、新鮮なウニがのぞいている、という印象。

ひゃー、ヨツボシハムシみっけー!


去年も確かここで見たような記憶があります。
葉っぱのふちで、降りようかどうしようか、決めかねている風情。
頭部が黄色で、透明感のある白い地に、埋め込んだような黒い紋。
きれいです!
かわいいです!
うっとりです!
横顔も撮ってみましょう~


ウルシのような葉に、もやもやと白い花を咲かせている木がありました。

図鑑で調べたけど
名前がわかりません。

花は不思議な香りがしました。

ほわほわのカーペットみたいに水草が繁っている場所も。


この公園はもともとあった里山をそのまま利用しているので、田んぼもあり、
あたりはカエルの合唱でにぎやか。


草が動いた方を見ると5センチくらいのかわいいカエル。


そろそろ帰ろうか、と思ったとき、足元の草の上に何やら動いているものが。

細い細いナナフシでした。

体長は1,5センチ。
大きさがわかるように指を入れて写真を撮ろうと近づけたら、ためらうことなく、
登ってきました。


「イェイ!アタイはどこまでも行くよ~」
歩調も変えずに、髪の毛くらいの細さの足で、規則正しい速度とリズムで。
ずんずん、ずんずん、私の手の上を歩きます。


そのためらいのなさ!
向こう見ずな歩き方!
を見ていたら
なんだか楽しくなりました。

ナナフシは不完全変態の虫なので、
成虫になるまで種によって5回から9回も脱皮するそうです。
大きさからみると、このナナフシはたぶん2齢ぐらいかな。

「群馬昆虫の森」とか、高尾山とか、石垣島とか・・・・
遠出したいと思っていたGWですが、地震が心配なので、
当分はこの生田と鎌倉に通うことになりそうです。


虫目歩きから生まれたファンタジー『バニャーニャ物語 第3話』へはここから。
第4話も5月1日にアップ予定です。




ココからどうぞ。http://blog.goo.ne.jp/kaika64

6月4日のイベント『虫愛ずる一日 in 京都』計画進行中!

2011-04-01 08:13:23 | 日記


 共感疲労、というのがあるそうです。
あまりにも悲惨な映像をくりかえし見過ぎたために
震災以前と同じことをするのに罪悪感をもったり、無力感にさいなまれたり・・・。
考えてみると、確かに自分にもある。
ついテレビ見すぎちゃったんだと思う。

 ACアレルギーの人も多いのでは?
私は「こだまでしょうか?」がいちばんダメです。
耳をふさぎたくなって、うっ、とくる。 
金子みすずの詩は大好きだけど、あれはもう聞きたくありません。
仁科明子さんが困惑している、という週刊誌の記事もありました。
日本中の人に、自分が38歳のときに子宮頸がんになった、ということが
未曽有の災害のニュースとともにこれだけひっきりなしに告げられて刷り込まれたら・・・・
いくら女優だからって、いくら広告に出演したからって、
困惑しますよね。

 香山リカさんも、こんなときはいっとき他のことに逃避することで、
自分の心をリセットする、ということが大事、と言っていました。
そこで多摩川の川辺へ、春の常連たちをさがしに行ってきました。

 川辺ではいつもの春のように、ひとびとが散歩したり、お弁当食べたり、釣りしたり。
でも、やっぱりいつもの春とは違う、どこか空気のなかに緊張感がある、
こんなおだやかなひとときがいつ崩壊してしまうかもしれない、という不安感が、
見えない粒子のように空中に漂っている。
でも・・・・・・



 まだ少ないけれど、菜の花が咲き始め、いました、いました、ナガメ。


 ギシギシの葉にはつやつやしたルリハムシ。


枯草の上で翅を広げて日向ぼっこしているのは成虫越冬したキタテハとルリタテハ。




 あ、シラホシカメムシだ。


ナナホシテントウもね。


タンポポの花にはハエの一種、かな。


ハナニラの花にいるのはカミキリモドキの仲間?


ん?
はじめてみるハムシだ!
くすんだゴールドの体色に黒い水玉が並んでいる。

調べてみるとトホシクビホソハムシという名前でした。


 地震、津波という自然災害に痛めつけられたばかりの私たちは、
いま自然が奪う力にばかりに目がいきます。
でも自然が与えてくれる豊かさも同時にあるのだということを、
春の常連たちは、「今年もそこに居る」ことで、思い出させてくれたのでした。


 で、やっときょうのタイトルの話にいきます。
以前にもちょっと書いた京都で開催(おおげさー)するイベントのこと。

 地震のあと、あれはどうなるかな? できるかな?
と思っていたこの計画。
1月から大阪の池内美絵さんのお誘いで、
こんなふうにはじまりました。

まず6月4日を、勝手に「ムシの日」と決めたという池内さんから、
京都のガケ書房さんの一隅で、この日にヤスデ
(美術家として知られる池内さんはヤスデの飼育家でもあり
500匹もヤスデを飼っていて、つまり売るほどある)
を売る(!?)イベントをします、
と連絡がきて、

さわれるかどうかわからないけれど、
写真で見たり話をきいたりしている彼女のヤスデを一度見てみたいし、
ついでに大阪近郊の伊丹昆虫館とか箕面昆虫館とか見に行きたいし・・・・・
「行きます!ヤスデを見に来る人たちには虫好きもいると思うので、
ヤスデ屋さんの近くで、そんな人たちとまたお茶会でもできたらいいな」
と言ったら、

せっかく東京から来てくれるのなら、
いっそ、ガケ書房でトークイベントっていうのはどうですか?
と池内さんが言い、

ガケ書房の山内店長がスペースを提供してくださることになり、
さらに同時に虫関連本のフェアもやりましょう、
と言ってくださり、

トークに赤穂の有吉さんも参加してくれるといいですね、
(池内さんと有吉さんについてはココhttp://blog.goo.ne.jp/mushidoko64/e/df2e91033ade12ee63cb01d397e631dc
を参照)
と池内さんが言い、

有吉さんにきくと、人前で話すのは得意じゃないけど、参加させてください、
と返事が来て、

うわぁー!
と池内さんと私が大喜びし、

すると山下店長さんが、すぐそばに吉田神社というのもありますよ、
と教えてくれ、

神社だったら虫いるかもぉ!
と私がさらに身をのりだし、

それじゃあ、トークイベントのあとに
親睦会を兼ねたランチとお茶して、
そのあと、吉田神社を虫目で歩く、虫愛ずる一日っていうのはどう?
と話は怖いほど一直線に進んでいき、

大阪市立自然史博物館の松本さんからも、
吉田神社のある吉田山、虫いますよー!
と教えてもらい、

それをきいた私は一気に元気百倍で、
それじゃあイベントのタイトルは「虫愛ずる一日 in 京都」だと思い・・・・・・
こうして計画は盛り上がりながら進んできたのでした。

6月には、いろいろなことが好転しているのを祈りつつ。


『虫愛ずる一日 in 京都』
日時:2011年6月4日(ムシの日)
① 10:00~11:30トーク『虫の愛で方 三人三様』(池内美絵、有吉立、鈴木海花)
         虫好きといっても人それぞれ。三人三様の虫との付き合い方など、写真を見ながら紹介します。

② 12:00~13:30ガケ書房向いのカフェなやで、昼食しながら虫好きたちの親睦会。(飲食代各自負担)       
*現在移転準備中の「なや」さんについては、次回ご紹介します。すてきなカフェですよ!

③ 13:30~16:30ごろまで 吉田神社にお参りしつつ吉田山の方まで虫目で歩く観察会。

という朝から夕方まで、3本立ての一日です。
どの部分から参加してもらっても大丈夫ですが、
①のトークイベントだけは参加費500円。場所の準備があるため、申込みが必要です。
申し込みは4月半ばごろから、ガケ書房さんのHPで開始するので、またこのブログで
お知らせします。

 そして、きょうは『バニャーニャ物語』も更新しました。
第三話は、『うなぎ沼まで、おつかいに』。
バニャーニャは、もう夏。雨が降らなくて困ったみんなは・・・・・・。


ココからどうぞ。http://blog.goo.ne.jp/kaika64