鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

「父の標本」―寺林コレクション『宝石虫の輝き』展を見に行く

2013-10-31 08:22:52 | 日記

寺林健氏によるタマムシコレクションより。




 拙著を読んでくださった方からお手紙が届き、「虫が好きなのだけれど、まわりには同じような興味をもつ女性はほとんどいなくて残念に思っていたところ、『虫目で歩けば』を読んで、女性の虫好きもいると知り驚いた」と感想を寄せてくださいました。

 
 そして手紙に同封されていた、美しいタマムシの写真で埋め尽くされた1枚のチラシ。

「このたび亡父 寺林健のタマムシコレクションが横須賀市自然・人文博物館にて特別展示されることになりました。父は甲虫(特にタマムシ)の標本蒐集家でしたが、甲虫のみならず動植物すべてを愛する人でしたので、私と弟は幼少期……」
 タマムシコレクションも見たい、そしてできたら、お手紙をくださった寺林温子(はるこ)さんにもお会いしたくて、横須賀へ出かけました。

 最寄りの横須賀中央駅前は、強雨のなか、ごったがえしていた。お祭りらしい。
ハッピを着た人たちがびしょ濡れになっている。
 横須賀市自然・人文博物館は初めてなので、まずは館内をまわってみた。
地元三浦半島の歴史や暮らしに関わる展示が充実している。
 そして特別展示の3Fへ。
 わあぁぁぁ……エントランスからすごいぞ!!!


 まさに『宝石虫の輝き』というタイトル通りのエントランスのゲート、そして傍らになにやら円錐形のものが…なんと、タマムシでつくられたタワーだ!


いったい何頭のタマムシでつくられたのか、タワーは宝石虫で輝いている。


 ゲートを入ると、赤い絨毯が導く展示会場のガラスケースには、国内外産タマムシ類約700点以上の標本が、美しくディスプレイされている。

 別名jewel beetleと呼ばれるタマムシの魅力を最大限に引き出そうとした博物館の意気込みがあちこちに感じられる展示だ。

 標本のタマムシはすべてガラスケースに入っているため、細部をみることが難しい。タマムシを手にとって見るかわりに、会場内には3機のタブレットPCが設置され、展示されているタマムシの解説と細部を拡大してみることができる。


 2008年に亡くなられた寺林健氏は、大阪生まれ。京都大学農学部を卒業されたあと、食品会社の研究員を経て、海外の文献調査の仕事に従事。幼少時から虫をはじめとする生き物を愛し自然に親しむと同時に、ボタニカルアートや生け花といった美術にも興味を持っていた。氏のコレクションの大半は、国内外の標本商から購入、あるいは研究者とのやりとりを経て入手したものだという。


 タマムシに見入ったあと、お手紙をくださった寺林温子さんと、お母様の勝美さんにお話を伺うことができた。

Q:(寺林健さんの奥さま勝美さんへ)ご結婚なさったとき、ご主人が虫好きだということはご存知でしたか?

勝美さん:「いいえ、まったく知りませんでした。子供が生まれるまでは、ぜんぜんその兆候もなく。子どもたちがある程度大きくなってから、いっしょに野山へ虫を採りに行ったり、飼ったりという      ことをはじめました」

温子さん:「虫は男の子が好きなものだ、と父は思っていたらしく、ごく自然に弟とはよく野外に出かけて昆虫採集をしていました。私はいっしょに行かなかったけれど、ふたりが持ち帰ったものをためつすがめつ、見入ったり、飼育したり。ヤゴがトンボになったり、チョウのサナギがチョウになったりということは特に達成感があり、楽しかった」

勝美さん:「特に山梨県に住んでいた時期は虫への興味が爆発したような感じで、庭の芝生をはがして野山の植物に植えかえ、虫がたくさん(時にはたくさん過ぎるほど)くる庭にしていました」

Q:虫が好きで標本などを集めていると、家族にもいろいろご苦労があったのでは?

勝美さん:「とにかく昆虫の標本を良好な状態に保つために、エアコンを使って温度湿度を管理しているようで、電気代が…と気が気ではなかった。バルコニーに面している部屋を通って洗濯物を干そうとすると、ここの窓はあけちゃダメ!とか。そういったことは私にとってはストレスでした。でも私も虫はけっして嫌いではなかったので」
温子さん:「私が独立してから実家に帰ると、自分の部屋だったところが標本の乾燥部屋になっていて(笑)。入るときは扉を最小限に開けて素早く入れとか、チョウの幼虫がいっぱいついている枝のそばで寝ることになったり(笑)」

Q:寺林さんが亡くなったあと、残された標本をご家族はどうしようと思いましたか?

勝美さん:管理が難しいということは身にしみていましたので、好きな人にあげるとか売るとか……しか考えられませんでした。それにストップをかけたのが長女でした」
温子さん:「家族のなかでは売るかあげるか、という話になっていて。あるときベッドの上に、ずらーっと標本を並べてみて……ひとつひとつをよく見ると、改めて父が情熱を傾けて集め、自分のオリジナルな方法で展足して大事に管理してきたものであることが感じられて、これはそんなに簡単に処分してしまっていいものじゃないんじゃないか、って。ちょっと待って!と」
勝美さん:「さいわい主人の弟の知り合いにこの博物館の方がいらして、寄贈の申し出をしました」

 昨今、昆虫標本の寄贈の申し出が、どこの博物館でも増えているという。これはたぶん団塊世代の蒐集家が、そろそろ自分の人生の整理にあたらざるを得ない時期を迎えていることとも関係しているのかもしれない。虫好きの王道といえば標本制作・蒐集。夢中で集めてきた標本をどうするか―虫を愛してきた多くの蒐集家が人生のどこかで直面する問題だ。

 多くの標本蒐集家が、自分の死後、収集品の行き着くところとして、しかるべき施設への寄贈を考えるだろう。私はこの展示を見て、その尋常ではない力の入り方に博物館側の受け入れ姿勢にも興味をひかれ、この館の昆虫・陸上無脊椎動物担当学芸員の内舩俊樹さんに、寺林健さんが残された標本と、寄贈の申し出を受けた経緯を伺ってみることにした。

Q:通常、標本寄贈の申し出に、博物館はどんな風に対応していらっしゃいますか?

内舩さん:まず受け入れ前に内容を確認します。どういう標本か―種の顔ぶれ、産地、年代などで、ある地域のコレクションが充実していたり、特定のグループの昆虫を網羅的に集めている、またかつては豊かな自然が存在したことを裏付ける標本だったりすると、展示にも結びつけやすい。
 さらにラベルの有無や標本の状態。ラベルがないと標本の価値はほぼ失われてしまいますし、虫食いでボロボロだと他の標本にも影響します。展翅展足が不十分だと展示には向きません。そして寄贈していただいた標本の用途に対する希望が、博物館に任せてくれる、という意向だと受け入れやすいです」

Q:最初に寺林健さんの標本をご覧になって、どう感じられましたか?

内船さん:すべての標本がきれいに整えられ、さらに保存状態が大変良好でした。ご家族のお話から健氏のコレクション収集と保管に情熱を傾けていらした思いが感じられました。その美しさと多様性、保存状態をみて、受け入れを決めました。

Q:博物館としてこの寺林コレクションにかなりのコストをさいていらっしゃるようにお見受けしますが、受け入れ後はどんな対応をされて、この展示にいたったのでしょうか?

内船さん:寄贈をいただいてからの5年間で、まず世界屈指のタマムシ類分類学者である大桃定洋氏を研究員としてお招きし、世界のタマムシ類の新しい分類体系に基づいた、コレクションの分類整理を行っていただくことができました。
  すでに寺林氏は当時の分類に基づいて標本を整理したり、同定の難しい標本は海外の研究者に送って名前を調べたりしていましたが、2000年以降にタマムシの分類体系に大幅な改編があったこともあり、展示のための目録作成など、分類の再確認が必要と判断し、大桃先生にお願いすることにしました。

Q:今回の展示のコンセプトは?

内船さん
:展示のプロットを考えはじめた2012年から、昆虫好き以外の方にも楽しんでいただくため、アンティーク調で落ち着いた雰囲気の「宝石店」としました。これは従来の当館の展示の路線からみると異色でしたが、これにより、より広い分野、年代の方と展示を通じたコミュニケーションを図ることを目指しました。展示がはじまってから、その効果を実感しています。
 

Q:展示のためのご苦労にはどんなことが?


内舩さん:苦労というより非常に楽しく刺激的な経験でした。入口ゲートやガラス壁展示の装飾、カーペット、映像展示のソフト、概観などなど、前例のないものを生み出すための苦労は、むしろ楽しかったです。また大桃先生に執筆いただいた展示解説書の制作もたいへんでしたが、おかげで最新のタマムシ類の分類体系を反映した展示にすることができました。そして大桃先生のご自宅に伺い目の前でいくつものタマムシに新しい和名がつけられていく瞬間に立ち会うことができたのも忘れられません。

Q:今後、このコレクションをどんな風に博物館の活動に活かしていかれるのでしょうか?

内舩さん:特別展示後も、常設展示に反映できたらと考えています。来館する方が「美しさ」に惹かれて展示を見、そこから自然や昆虫、ひいては博物館に興味をもっていただけたら、と思っています。


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   この日は午後から記念講演があるということで、関西地方にお住まいの寺林氏のご兄弟も集まって来られた。 自分が生涯情熱を傾けて残したものを、身内の人々に、
このように誇りに思ってもらえる寺林健氏のお人柄が偲ばれる。

中央のケースには、寺林健氏により発見され、学名にterabayashiとついた2種のタマムシも展示されている。

 
大桃定洋氏による、講演会のようす。


   温子さんが、並べられた標本に見入りながら言った―
「父は標本商から買った標本のほとんどを、オリジナルな方法で展足したんですが、
父の標本は、虫の姿勢が独特なので、すぐわかるんです。ほら、前脚が上の方に直角に向いているでしょう?
それから虫の体にピンを打たないことも父がこだわった点でした。
でも、その独特の展足の方法を教えてもらうことなく逝ってしまったので、いろんな謎が残りました」。

 虫好きな温子さんの友人は、健氏の標本作りの机を見て、びっくりしたそうだ。
普通、標本作りをするための道具などがほとんどなく、中心にあったのは、消しゴムだったのだそうだ!
 
 その友人によると、「たぶん、虫の体にピンを打たずに固定する方法として、<こびとの国のガリバー>みたいに、消しゴムの弾力を利用してバランスをとりながら糸を張り巡らせて固定したのではないかと思われます。でも、それって、気の遠くなるようなたいへんな作業……」
「でも一日中、標本作りに没頭する、という姿は見たことがありませんでした。きっとほんのちょっとの合間の時間を積み重ねて、作っていたんだと思います」と勝美さん。



   「生前、父と虫の話はほとんどしていませんでした。でも亡くなる直前のほんの何年かの間に、たまに私が、どこかで見つけた虫の話をしたり、父が作った標本に対して、驚いたり感動したり何かリアクションをすると嬉しそうな表情をしていたのを、しみじみ思い出します」という温子さんは、デザイナー&イラストレーターという仕事柄、ふつうの人よりも、ものの形態、色彩、細部に注意を向けることが多い、という。
 見るほどに伝わってくる父・健氏の虫を愛でる喜びと情熱、こだわりの標本作成法の謎等々、
「父の標本」から、さまざまなことを必死に受け取ろうとするかのように、
真摯な表情で標本に見入る温子さんの姿が印象的だった。


   『宝石虫の輝き』―寺林コレクションのタマムシたち展は、
   横須賀市自然・人文博物館にて、2014年1月13日まで開催。



            



               <次回 『虫カフェ』のお知らせ>

 11月中に、と思っていた「虫カフェ@原宿シーモアグラス」ですが、諸々の事情により、年内開催が難しくなりました。
 お問い合わせもいただき、楽しみにしてくださっている方々にたいへん申し訳ないのですが、
次回の虫カフェは、年を越して、2014年2月2日(日)11:30~13:30に開催の予定です。





















 
 


 
 

 






ジャコウアゲハの蛹はどこかエロチック

2013-10-19 16:21:31 | 日記
 ジャコウアゲハはなかなか見つからなかったが、草のなかにはヒメジュウジナガカメムシが群生していた。




 生き物それぞれの形態は、それぞれ理由があってそうなっているのだから、カバに向かって「あんた、その下膨れの顔、なんとかなんないの?」などとヒトが考えるのは失礼である。
 しかし、なかにはその姿形がヒトの想像力をひどく刺激するものがあることも確か。

 初めてジャコウアゲハの蛹(お菊虫)の写真を見たのは、昆虫写真家 新開孝さんの『珍虫の愛虫記』(1999年 北宋社刊)でだった。




 まだ虫に興味をもちはじめたばかりの頃で、新宿紀伊国屋書店の生物の棚で、汗をかきながら(なぜか新宿紀伊国屋書店の生物の棚というと暑くて気がつくと汗びっしょりだった記憶が)の虫の本を探すのが楽しみだった。
 そんなとき『珍虫の愛虫記』12ページの「お菊虫と山女郎」を見て、目が点になった。 



 冬枯れの野原のなかの蛹の写真は、衝撃的だった。
うそっ、こんな生き物がいるの!?
ど、どうしてこんな形してるのよ!?

 『お菊虫を初めて見たのは、私が高校生のときの冬であった。川の土手にあったポンプ小屋の板壁に、点々と並んだ様は異様であると同時に感激的であった。私はお菊虫を一つだけそっと取り外して、持ち帰った。そうして昆虫図鑑を貪るように読み、お菊虫の一生を我が目で見たい気持ちではち切れそうな毎日を送った』(『珍虫の愛虫記』より)
 新開さんは、初めて見たジャコウアゲハの蛹(お菊虫)を見つけたときのことを上のように書いている。

 以来、お菊虫を見てみたいと思いつつ、時は流れ、3年前の夏、井の頭公園そばの川の欄干にお菊虫がいる、という情報に、即見に行った、のだが・・・。
 この欄干にたどり着く前の道で、私は少し持ち上がっていたマンホールの蓋につまずいて、それまでにないほどひどい捻挫をしてしまった。
 怪我というのをあまりしたことがないので、自分の足の状態がどのくらい深刻なのかもわからず、「だいじょうぶだよね、これくらい、明日は高尾に行く予定だし・・・」と思いながら這うようにしてお菊虫探索をつづけた。
 そして、やっとのこと川にたどりつき、あこがれのお菊虫を見つけたときには、かがんで写真を撮るのも困難なほど、右足が膨れ上がっていた。
 「ついに念願のお菊虫をこの目で見たのだ!」という喜びとともに帰宅するも、それから2週間は家から出られないほどの捻挫で、完治までには何ヶ月もかかった。
 
 そして、先週、「ナナフシガール まゆ子ちゃん」のお母さん(受験生であまり虫探しに行けないまゆ子ちゃんに代わって精力的に虫探しをしている)から「多摩川のある地点で、ジャコウアゲハが飛んでいるのをよく見る」ときき、宇佐美朋子さんも誘って「行ってみよう!」ということになった。
 ところが当日、まゆ子ちゃんのお母さんは風邪で来られないことに。
 宇佐美さんとふたりで川辺を歩いてみたけれど、ほとんど草刈がされていて、ウマノスズクサって、あるかなあ、という状態。

 やっぱりまゆ子ちゃんのお母さんと出なおさないと、ダメか、と思ったとき、
「あ、ジャコウアゲハ!」と宇佐美さんが成虫を見つけた。
やっぱり、いるんだね!このあたりだよね、と一瞬テンションがあがったものの、幼虫や蛹は見つからない。

 ジャコウアゲハは年2化で、次の初夏に羽化するものは、今、幼虫か蛹のはずだ。
「けっこう人工物で蛹化するらしいから、最後にあそこの神社の壁でも見て帰ろうか」と、半分あきらめつつ、ふたりで行ってみたら・・・・・・小さな神社の石の柵の下側に、蛹が5頭、蛹化寸前のものが2頭!



今にも蛹化しそう。


 それにしても、ジャコウアゲハの蛹って、どうしてここまで奇怪な姿形をしているの?
人によって感じ方は違うと思うけれど、私には蠱惑的で、エロチック-情念のかたまりみたいに感じられる。


 瑞々しい乳房のように見える2つの突起。
 象牙か骨の彫り物のような質感の、着物の襞のように見える側面。
 頭部を後ろに固定している帯紐はまるで細い髪の毛のように黒い。




 見る角度によっても違う印象で、正面から見ると、腰に手をあてて唇をとんがらかしている、気が強いけどどこか抜けているおばさんのように見えなくもない。


宇佐美さんは、「観音様みたい、クリオネにも似てるかなあ」と。

 『珍虫の愛虫記』によると、麝香の匂いがするオスは、「山女郎」と呼ばれることもあるとか。やっぱりジャコウアゲハは、ヒトの気持ちをザワザワさせるような特別な連想をかきたてるチョウのようなのだ。





 
 

カラちゃん、さなぎになる

2013-10-06 19:17:16 | 日記


9月21日に山で出会ったカラスアゲハの幼虫、カラちゃん1、4センチ。


 先月から飼育をはじめたカラスアゲハの幼虫が、昨日、前蛹になり、
きょうはいよいよさなぎになる、というので、その瞬間を動画に撮ろうと、

セッティングして、待ち構えていたんですが・・・・・・。

 さっき、カメムシの種名訂正のエントリーを書いているうちに、
さなぎになっちゃった・・・・・・。
決定的瞬間なのに、カラスアゲハの蛹化の瞬間なんて、そう見られるものじゃないのに、
そばを離れた私は大馬鹿でした。


 9月21日にうちに来たとき、カラちゃんはたぶん3齡幼虫。
ナミアゲハなどと違うのは、同じ齡でも、ぐんぐん大きくなること。
朝と夜では明らかに違うくらい。

採集から1日たった9月22日。



 25日には4齡に。約2センチ。

頭部に水泡のようなブチブチが。

 私が苦労して集めたコクサギを、ときどきバカ食いしては、急に静かになり、フンをぽとっ。
(コクサギは近所になくて貴重なので、食べきってから足してあげた)

 28日。終齢幼虫に。3センチ。胸部背面にはっきりと、蛇模様が。

私・・・蛇ダメ。
他の爬虫類は好きなんだけど、蛇だけはダメ。
眼状紋こわい。

でも、カラちゃんのほんとうの頭部はここです。


 針でつついたようなプチプチした粒が3、4個あるところが眼かな。
すごく小さくて、漫画っぽい眼。



カバ? って、失礼な!突然お邪魔しますが、アオスジアゲハの終齢幼虫です、私のこともお忘れなく。
(となりの容器にいるアオスジアゲハ)



9月30日。

ぐんぐん育ってもう4センチ。


10月1日。

むちむちしてきた。


10月4日。

すごい早食い。


ちょ・・・っと。太りすぎでは?
もう5センチ以上あるよ。


そして、10月5日夜。

頭を枝に押し付けるように、祈るような姿の前蛹になった。
大きさは約3センチ。終齢幼虫の最後のサイズの半分近くまで縮んだ。

翌日の午後・・・・あれ、なんだか
干からびてきたような・・・

だ、だいじょうぶ?


 といいつつ、このあと、私はそばを離れた。
これこそ、蛹化への最後の脱皮がはじまる兆候だったのに。


 もどってみると、


ドラマは終わっていた・・・・・・



細ーい糸で、体を支えている。



裏側はこんな。

 カラちゃん、長い眠り(実際は、中では変態のためのたいへんな変化が起こっているわけですが)
にはいってしまいました。

 繭のなかのオオミズアオも、カラスアゲハも、そしてもうすぐアオスジアゲハも。
 わたしも眠くなってきた。



 

 




















 

 


 
 


『虫目のススメ』掲載カメムシの種名訂正

2013-10-06 16:33:26 | 日記

 一年でいちばん好きな季節がきた―キンモクセイが香る季節。


 先月、カミキリムシの種名の間違いを教えていただいた例のディープなカメムシ屋さんのMさん、Sさんから、『虫目のススメ』10P右下掲載の「ミナミトゲヘリカメムシ」は、「ホソハリカメムシ」の間違いではないか、とご指摘いただきました。

 この10P掲載のカメムシの写真は、種名を調べるのに苦労した1枚でした。
似ているんです、ホソハリカメムシ、ハリカメムシ、そしてミナミトゲヘリカメムシ。

 ミナミトゲヘリカメムシは、名前のように南方系のカメムシで、1970年代に鹿児島県に発生し、みかんの害虫として注目を浴びたそうです。
 ところが、近年東京でも観察されている情報を見て、またサイズがホソハリカメムシ、ハリカメムシにしては大きめだったので、ミナミトゲヘリカメムシと本に書いたのですが……
 最近、ミナミトゲヘリカメムシの幼虫を飼育していらしたSさんが、羽化したての成虫の写真を送ってくださって、これを見ると、あっ、違う!
私が見たのは、肩にあるトゲがこんなに鋭くなかったー。
ということで、間違えました。
本をご購入いただいた方は、すみません、
10P右下のカメムシの名前は、ホソハリカメムシに訂正お願いします!

 ちなみに、ホソハリカメムシとハリカメムシも、非常によく似ているのですが、
ハリカメムシは体の幅が広く、色が濃く、さらに触覚第一節の外面に黒条があるのが、見分けのポイント、
と『日本原色カメムシ図鑑』第一巻に説明が載っています。

 体色は個体差もあるので、これだけで濃いか薄いかを判断するのは難しいですが、
次回からは、写真を撮るだけでなく、触覚の黒条をしっかりチェックしようと思います。

 

 キンモクセイの香りの漂うなか、近所を歩いていたら、
この間までクリーム色の大きな花を咲かせていたオクラが、おっきな実をつけていました。
お、おいしそう・・・・・・・






 


 
 

29日の虫カフェ―「ヨナグニサンをさがしに」

2013-10-01 18:18:12 | 日記

与那国島ではヨナグニサンは「アヤミハビル」と呼ばれている。



 一昨日、9月29日の虫カフェ。
壁には、展覧会初日の木版画家 竹上妙さんの作品が並んでいます。


私は新作(昨日の夜、徹夜で完成したばかりという)「ただ集めているだけ」という作品(写真の一番右)が特に好き!


『虫目のススメ』の表紙カバーに使わせてもらったテントウムシの作品も。



 シーモアグラスはこの日も満席。

今回は初めて来てくださった方が多かったので、最初に簡単な自己紹介。
都内&近郊はもちろん、大阪、静岡、岐阜、埼玉、千葉……と、遠方から来てくれた人がたくさんいてびっくり。




 大阪から始発の新幹線で来てくれた石田さんは、6月のオオムラサキセンターのイベントの前泊組だった人で、うれしい再会。
 Kさんは、大学で生物学を勉強する学生さん(女子)。かの名和昆虫館の近くなので、標本制作の指導を名和昆虫館の方にしていただいた、といううらやましい環境で勉強しているハチ好きのひと。
 静岡から来てくれた渡辺さんは、消しゴムハンコで精密な虫を彫る。
ハナカマキリ、ジンメンカメムシ、ルリボシカミキリなどなど、いくつか持ってきてくれたハンコは参加者に大人気で、ほとんど売り切れ。

(右のほうに見える小さな白い容器に入っているのは、オオミズアオの蛹)


 渡辺さんのはんこのだるま屋」a>で作品みてください。

11月2日の「生きものまーけっと」 にも出品するそうです。
私も、これ行きたい~
  

 そして、この日の「海花の部屋」のゲストは、
イラストレーターの宇佐美朋子さんと、女子美術大学の千葉ちさとさん。
おふたりに、今年8月に与那国島へヨナグニサンを探しにいった話をしていただきました。
 ヴィジュアル表現に関してはバッチリなふたり。
与那国島への旅の話に加え、プロジェクターを用意して素敵な画像も見せてくださいました。


 そもそも虫カフェで出会ったふたりは、ともに蛾LOVE。
いろいろ話をするうちに、お互いの夢が同じであることがわかった。
それは-一度でいいから世界最大の蛾であるヨナグニサンが、
生息地で生きている姿を自分の目で見ること。
 そしてついに、一番目撃できる可能性のある8月に与那国島への旅をすることに。
 ところが、8月初旬のこの旅に先立つ7月16日、与那国島は台風に見舞われ、
島の植物はすっかり茶色の枯れ状態に。虫も姿を消した。

 島に到着したふたりはその光景に唖然。
 でも、長年の夢をかなえるための旅。ヨナグニサンを見ないで帰れない!!!
毎晩、飛んでいる姿が見られるという、真っ暗な森に出かけた。
 しかし……ヨナグニサンどころか、全体に虫の姿もほとんどない。

 そして、最後の夜10時。もうこの夜しかない。
 ふたりは「夜の森におんなふたりで出かけるのは剣呑」と宿の女将が止めるのも聞かず、
意を決して、島に2台しかない(しかもこの夜1台はお休み)タクシーで
森の入口へ向かった。
 月もない夜だった。森は深く、真っ暗。
タクシーを降りたふたりは、ヘッドライトを装着し、手にもライトをもって、
森のなかの道の右と左にわかれて、なめるように見ながらそろそろと進んだ。
 ヘッドライトにひっきりなしにぶつかってくるワモンゴキブリにもめげず、歩くこと2時間。
……見つからない……。



 ああ……と足がへなへなしそうになったそのとき。

 道の右側担当の千葉さんが、低い声で言った
「いた……」

 ついに生きて森にいるヨナグニサンに出会えた!
飛ばれたらたいへんだから、写真を撮りながら、じりっ、じりっ、と1歩ずつ近寄っていった。
 翅に傷みもない、美しい、そして想像よりはるかに大きいヨナグニサンのオスだった……




というお話を、みんなで固唾をのみながら聞きました。

「わあぁ、よかったねえ~」と
見たい虫を見つけた時の感激がわかる、虫好きのみんなから拍手。


 
 「海花の部屋」のあとは、いつものごとく、みんな入り混じって虫話に花をさかせたり、
情報を交換したり、販売品を買ったり。

私が買ったのは宇佐美さんのオオトラフだらけの陶器。


 この日は7月に『むしの顔』を出版された伊藤年一さんも参加してくださった。
 伊藤さんは、学習研究社で長らく編集者を務めたあとも、虫の写真を撮り続け、
『むしの顔』にまとめられたのだ。


 私も虫を撮るときは、顔を撮りたい!と思うのだけれど、なかなか難しい。
1冊まるごと虫の顔だらけのこの本、ぜひ本屋さんで手にとってみてください。


 いつもと違いスイーツメニューなしのこの日、宇佐美さんと千葉さんが、
お手製のおやつを用意してくれました。

千葉さんのマカロン。ミヤコキンカメムシとヨナグニサン模様。
見た目もかわいいが、味が抜群。それもそのはず、黄色いのは与那国島特産の長命草の粉末とレモンジャム、ピンクのはイチジクのジャム入りという凝ったもの。

 そして、宇佐美さん渾身のヨナグニサン・アイシングクッキー。



 そうこうするうちに宇佐美さんのポーチについている、話題の「イモコレ」を見てみんな騒然。


 海洋堂から発売されたばかりの、イモムシコレクションは6種。
ガチャガチャで1回300円。宇佐美さんは6種コンプするのに12回ガチャしたそうだ(『むし探検広場』の川邊園長は、なんと8回で6種コンプしたというから、さすがだ)。
で、そのダブりの分を欲しい人に譲るという。
すぐ売り切れ~

 たちまち2時間が過ぎ、いったん店の外に出て、通常営業のための準備。
 でも、ほとんどの人はそのまま去りがたく再入店し、みんなお腹がすいていたので、
ランチのオーダーが殺到。ひとりで切り盛りしているオーナーの坂本さんは大忙し。
 4時過ぎ、シーモアグラスは虫好きたちの熱気からやっと開放され、
いつもの落ち着きをとりもどしたのでした。(坂本さん、おつかれさまでしたー)



 今夜は東京泊という大阪の石田さんと千葉さんといっしょに、にぎわう原宿の通りを渋谷に向かう。
 この日、シーモアのすぐ近くのビルに、あのかわいい安売りの店「asoko」の東京店がオープンしたばかりで、すごい人。
私ものぞいてみたかったけれど、長い行列にくじけた。

 3人で原宿をぶらぶら。
「この近くに、ノースフェイスがあるんですよね」と石田さん(大阪の人なのによく知っている)。
「そうそう、ノースのレディース専門店『3』(MARCH)もあるんですよ」
ということで、寄ってみよう。

 すると、店の入口にアオスジアゲハが止まっているのを千葉さんが発見。
 こんな人通りの多い原宿の、しかもアウトドアウェアの店の入口にいるなんて、
アオスジアゲハ、やるじゃん。

 店内には秋の新製品が並んでいる。
『虫目のススメ』のウェアページに載せたような薄手の防水ウェアをもう一枚欲しいな、
と思っていたのだが……すっごく欲しいのを見つけてしまった。

(ホワイトバランスをいろいろ変えてみたけど、写真では実際の色が出ない……)


 ゴアテックスとノースフェイスのコラボらしく、極薄のゴアテックスを貼った新素材。
完璧な防水、と同時に放湿機能を兼ね備えていると書いてある。

軽量化のため、ファスナーも特別仕様。

たたむとこんなに小さく、235g。

 さらに、惚れ込んだのが色!!!
今年の秋のトレンド色はワイン色(いつも秋になると、そうだけどね)だそうだが、
これはワイン色というより、「昭和のあずき色」といいたいような古くさい色調。
例えていえば、「激安衣料品店しまむら」の、在庫倉庫の底の底で忘れられているような、古い色。
そして、それが超新素材と融合しているセンスに私はメロメロ。
即買いとなりました。
わあ、うれしいな~
下に薄いダウンを着れば、真冬の虫探しにも対応できそう。
野外歩きだけでなく、ふつうに街歩きにも着られそう。

 ついでにこのあいだ買った片がけのパック。

コートの色に合いそう。

 あまりに人の多い原宿を抜け出して、(いつもこんなに空いていて大丈夫なのかと心配になる)渋谷西武デパートの地下で石田さんと、そば粉のクレープで早めの夕食。

 虫の話たくさんできて、いろんな人に会えて、買い物もできて、楽しかったー。
秋の匂いのする夜の風に吹かれながら、うちに帰りました。

*今回ボケーっとして楽しむばかりだった私はほとんど写真を撮っていなくて、
 ウェア、お菓子、本以外の写真はすべて、宇佐美朋子さん、竹上妙さんからおかりしました。
 ありがとうございました!

 そして、参加してくださったみなさん、ありがとうございました、またお会いしましょう。