鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

トリノフンダマシをさがしに横沢入へ

2011-08-17 08:32:50 | 日記

 暑くて虫さがしはちょっと、という時期だけれど、
この時期に見られるのが、大好きなクモであるトリノフンダマシ。
西多摩自然フォーラムの定例調査会に、クモ研究家であり、
NHK『ダーウィンが来た!』で、カッコいいナゲナワグモを紹介していた
新井浩司先生がいらっしゃる、というので出かけました。

 横沢入は、田んぼがあり、湿地があり、山に囲まれ林があり
―つまり虫がたくさんいる環境。

 先生がいっしょだと、いろいろ教えてもらえるのがうれしい。



 クモを食べるクモであるシロカネグモの一種、キララシロカネグモ。

金色にも見える腹部の模様からつけられた名前らしいけれど、きれいな名前です。
刺激すると黄色の部分が褐色に変化するらしい。


 水面を走ることができるハシリグモ。


 あちこちにこんな渦巻状のかくれ帯がいっぱい。

新井先生によると、かくれ帯の機能は、必ずしも身を隠すためだけとはいえなくて、
他にもいろいろ理由が考えられるそうですが、
このかくれ帯には渦巻の中心にクモがかくれていました。

 これもまたクモを食べるクモ、ヤリグモの卵のうと、孵化した子グモ。


 おっきな円網を張っていたトゲグモ。

近づいてみると、ほんとにトゲトゲ。


 緑色の体がきれいなワキグロサツマミノダマシ。


 あ、ヒメカラスハエトリのオス。

頭でっかち、尻詰まり。ずんぐりしたふとっちょクモ、かわいいです。



 そして、いましたよ!
まずはオオトリノフンダマシ。

なんか取り出したばかりの内臓とか、サザエの肝とか、妖怪の顔とか、ってかんじが、
グロテスクでよろしいのです。

両脇に突き出しているような大きな目玉みたいなのも、見るものをぎょっとさせる迫力。

 次ははじめてみるトリノフンダマシであるアカイロトリノフンダマシ。

あれ、でも赤くない・・・・・・。
名前のように、赤地に白いドット模様のトリノフンダマシですが、
色彩変化でこのような黒地のものもいるんだそうです。

うーん、上品でかわいい!
悪臭を出すテントウムシに擬態しているともいわれます。

これが卵のう。



 クモの他にも、
ダイミョウセセリ。


 ツユムシの幼虫?


 ちょっと頭をなでてあげたくなるあどけない顔をしたこのガは、しかし毒のあるナミドクガ。


きれいなんですけど、触らないようにしましょう。

 オシリに派手な羽根飾りをつけたスケバハゴロモの幼虫。



近くには成虫も勢ぞろい。


見るからに涼しげなハゴロモです。

 同じハゴロモの仲間のベッコウハゴロモ。


 まるで猫みたいにやわらかそうな毛の生えた頭をしたマイマイガ。

マイマイガ「いま、北海道広尾町で大発生して迷惑をかけているのは、私の仲間です・・・・・。
 どうしてあんなに増えちゃったんだか???」

 うわっ!!!キヌガサダケだ。

図鑑などでは見たことがありますが、一度は見たい憧れのキノコ。
これはもうレースのスカートがしぼみはじめていますが
それでもかなり大きくて、スカートのすその直径が15センチくらいはありました。
レースのスカートは触るとやわらかく、黒っぽい上部はハエを引き寄せるための悪臭を放ちはじめていました。
優雅な姿形と悪臭、という組み合わせがたまらない、しばらくは立ち去り難い圧倒的オーラを放っているキノコでした。

 きれいなオレンジ色のタマゴダケも。

鼻を近づけると、野生のキノコならではのいい香り~。
食用キノコです。
見つけた(キノコにくわしい)方がくださったので、夜ソテーして食べてみました。
一本しかなかったけど、美味しかったです。

ヒメヒゲナガカミキリ。

ほんとに長いひげ。


トンボも。

イトトンボも。


カエルも。

にぎやかな夏の谷戸の風景。

 そして、体長数ミリのこの幼虫は!!!

うう、色といい、形といい、なんてステキ・・・。
白い絹のブラウスの襟元に留まっていてくれたら、すてきなアクセサリーになりそうな。
体つきから見るとサシガメの幼虫のようですが、名前はわかりません。


 ツバメシジミ。ちょこんと糸くずがついているみたいな尾状突起がかわいい。



 腕が太くて、毛深くて、顔がコワいっていわれるの・・・・・・

という悩みを抱えていそうなこのクモは、サキエダオニグモのオスに似ているけれど
サキエダオニグモは沖縄のクモだし。名前がわかりませんでした。


 いま日本に生息しているといわれるトリノフンダマシは6種。
そのうち去年と今年で見ることができたのは
トリノフンダマシ、オオトリノフンダマシ、アカイロトリノフンダマシ(色彩変化として黒色型、ソメワケ型あり)、
シロオビトリノフンダマシの4種。
残りは、サカグチトリノフンダマシとツシマトリノフンダマシ。
でも両方ともこれまでの採集記録が10回くらいという超希少種らしい。

 暑くてへとへと。
帰路、駅までのコンビニで買ったLOTTEの「クーリッシュアイス」。
おいしかった、というか、おいしいを超えていた。
でも期待したトリノフンダマシが2種見れた(しかも珍しいアカイロトリノフンダマシの黒色型を)ので
大満足の真夏の一日でした。


 

ひさしぶりの裏高尾

2011-08-01 08:38:10 | 日記


 やっと捻挫もよくなり、先週から虫目歩き復帰しました。
裏高尾へ。

 ビアガーデンが大人気で人が押し掛けているという高尾山口の登山道に比べ、
裏高尾は夏になってから、なんとなく歩いている人の数が減っているような気がする。
 トイレ事情のこともあり、まだ多少足のことも心配なので
高尾の駅からタクシーで林道の車止めまで一気に行き、
そこから歩くという作戦にしてみた。

 こもれ陽がちらちら影をつくる静かな林道の水たまりには、
メタリックな翅を広げてミヤマカラスアゲハやカラスアゲハなどの
大きなチョウが来ています。








吸水中のチョウって、なにか独特の犯しがたい雰囲気を持っていると思う。
そのあたりだけ、シーンとしているような。


 トンボの姿も。
剽軽な目玉のヒメサナエ。


 こちらはどうしても名前がわからなかった、翅先の模様が美しいトンボ。


 ガシガシ歩いてきて、
うぬっ、って感じでこちらをにらみつけたゴマダラカミキリ。



 きれいな触覚と黄緑色の目玉がすてきなフタテンオエダシャク。

まるでドレスを着ているよう。

これもファッショナブルなプリント模様が美しいオビカワウンカ。


 
さらに込み入った模様のコクリオビキヒメハマキというガ。

みんなオシャレだなあ。


 あっ、いちど見たいと思っていたクリシギゾウムシ!

グレーとチャコールグレーのくっきりした模様が
ヒメジョオンの花に映えて。

 小さいけれど、小楯板にY字形の模様が目立つムラサキナガカメムシは、
はじめてみるカメムシ。


これはイタドリハムシの黄色バージョン?

黄色の部分がオレンジ色のものが多いけれど、
これはどうも別種ではなくて色彩変化の個体のようです。

 葉っぱの上にあった5ミリほどの、小さな繭はなんだろう?

妖精が生まれてきそう。

 全身を模様で飾っているかのようなイシサワオニグモ。

アップしてみると

こわいような、情けないような顔にも見える。

 夏には暑苦しいほど装飾過剰気味なこのガは、マダラツマキリヨトウ。

これを見た時ただちに連想したのは、手芸品店オカダヤの毛糸売場。
毛糸売場には、こういったテカテカした質感の毛糸のコーナーがあって、
こういうのが好きな人はどんどんエスカレートするらしく、
テカテカのマフラーとかベストとかを着た人が、
次に編むものの毛糸をさがしていたりします。
でもそういったおばさんたちも、このマダラツマキリヨトウの悪趣味さごてごてさ加減には負けるでしょう。

 このダークな色合いのガは、タイワンキシタアツバ。なんとなくワルっぽい。


 エサキモンキツノカメムシのそばで、長い肢をつっぱっているのは、アシグロツユムシの幼虫。

成虫になるとほとんど緑色の体になるそうですが、幼虫時代はこんな風にこげ茶や黄色の混じったなかなかきれいな色合い。


 今週は、ちょっとドキドキなことがあります。
時事通信社『昆虫記者のなるほど探訪』
の取材で、
小学生のときのガの研究で『夏休み研究大賞』を連続で受賞され、
NHKの『熱中時間』などにも出演された川上多岐理さんが
ライトトラップを行うことになり、
私も混ぜていただけることになりました!
このところ、ガの面白さに目覚めはじめてはいますが
ライトトラップははじめて。
小学校2年生のときから「虫愛ずる姫君」だった川上さんにお会いできるのも
すごく楽しみ。
でもライトトラップ・・・・・・とんでもない数のガが押し寄せてきたら
・・・・・・どうしよう・・・・・・。



ひとつお知らせです。
6月の京都の虫イベントのときに、
ルリボシカミキリのネイルアートをして参加してくれた
イラスト、陶芸、立体などで、ガや甲虫をテーマに作品をつくっている宇佐美朋子さん。
 外苑前のTAMBOURIN (タンバリン)というギャラリーで
どうぶつの好きなアーティストさんたちといっしょに
『どうぶつのきっさてん』という展覧会を開いています。

こんなふうにいい感じのギャラリーの入り口。


実在のものはもちろん、
架空の動物まで、立体的な展示が
生物多様性を感じさせる空間。
森の中でお茶をしている気分になれます。
頭の上には宇佐美さん制作の布製の巨大ガが
バタ、バタ飛び交う。

 セミのサナギやバッタになったつもりの撮影も!

8月7日(日)までやっています。



 さて、きょうは8月1日。
『バニャーニャ物語』も更新の日です。
第7話は『あめふり図書館へ!』。
蒐集家アッシェンバッハがバニャーニャにやってきて、
ひと騒動。

 バニャーニャへは、ココからどうぞ!