鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

お目当てのツノゼミ発見

2015-10-26 18:46:08 | 日記

 

 キナバル公園滞在2日目。

一行は二手に分かれ、2名は40分ほど車で移動したところにあるポーリン温泉へ。私は公園内に残り、のんびりと虫を探すことに。

 まずは今回のお目当てのひとつ、シロオビハタザオツノゼミを見つけようと、私たちに先だってキナバル公園へ来たことのある昆虫記者の「バス停のそばで1匹見た」という情報をたよりに、それとおぼしき一帯をくまなく探したけれど、みつからず。

なにせ5ミリの虫です。雨も降ってきたし・・・・・・ああ、だめかぁー、くぅーっ、と思って、バス停から公園内にもどる路端で、夫が

「アリがいっぱいいるけど・・・これじゃない?」と。

いたぁーーー!

「これだよ、これだよ」

一見、アリが群がっているだけのように見えますが、アリたちは忙しくツノゼミたちから甘露を集めているのです。

この立派な旗竿をたてているのが、オスの成虫。

写真を撮っていたら、手に乗ってきました。

 

左上と右下にいるのが幼虫です。なんとも不思議な形をしています。

左上の幼虫のお尻から、甘露が出ています。

 

こんなところにいたなんて!

手が、ふるえる~

 

 

 

 

 

 

 

 


ヨナグニサン―想像もしなかった結末

2015-10-10 19:13:36 | 日記

 

 世界自然遺産キナバル公園内のロッジに滞在し、到着の夜、園内のレストランで、ヨナグニサン(アトラスモスの仲間で、正確には日本のヨナグニサンと全く同じではない)をさっそく見ることができた私たち一行。

このヨナグニサンに出会う少し前、レストランのテラスで食事をしていると、どかどかと足音がして、後ろのテーブルに座った人たちから日本語が。登山を目的にここに来ている60歳台くらいの男性の一行らしい。

ここキナバル公園は、マレーシア最高峰標高4095メートルのキナバル登山の拠点として、世界中の山男・山女たちが集まるところ。当然ながら日本人の登山家も多いわけで、壮大な山を目の前にして登りもせず、足元の虫を見たい、などという私たち「へなちょこ」の一行にはちょっと場違い感が。

「おい、ビール頼んで来いよ」

「なんだ、ブッフェって朝と同じじゃねえか、残り物出してんじゃねえの」

などと、声高に話している後ろのテーブルの人たちとは……何となく関わりたくないなあ~という空気が「へなちょこ」の間に流れ、言葉すくな、声低めで、黙々と食事にはげむ。

でも、これはディナーブッフェなわけで、ボルネオ滞在中にもっとも高い1人66リンギット(日本円に換算すれば2000円くらいなので、日本で考えるとけっして高いわけではないけど)。満腹するまでしっかり食べました。

 

居心地悪いながらも満腹した「へなちょこ」一行は、レジに向かい、そこで前々回このブログに書いたヨナグニサンとの思いがけない出会いとなったわけですが……。

 

 スタッフのひとり、マルヴィンさんにヨナグニサンを見せてもらったあと、やっぱり「ヨナグニサンの手乗り」シーンを、このめったにない機会に撮りたいなあ、と思う私たちは、マルヴィンさんの手から、レストランの天井付近に飛んで行ってしまったヨナグニサンに、何とか下に降りて来てもらいたいわけで。その気持ちを察したメルヴィンさんが、脚立をもってきてくれた。しかしヨナグニサン、興奮しているのか、あちらへこちらへ。

そのうちに、さっきの日本人山男一行も食事を終えて、レジのほうへ、やってきた。

そして、中でもいちばん声の大きい押しの強そうな人が、こうのたまわったのです。

「やっ、これ珍しいんだよな、たしかヨナグニサンっていうんじゃねえ?俺さ、これ持って帰る、日本に」

そういうと、手を伸ばしてヨナグニサンを捕まえようとしましたが、翅をかすっただけで捕まらない。まだ食事をしているお客さんがいるのに、レストランは大騒ぎ。

「へなちょこ」一行は、あぁぁぁ・・・・あんなふうに素手でつかんだら、翅が痛む・・・・・と内心悲鳴。

追い回されたヨナグニサンは、レストランの入り口を出て、植え込みの上に着地しました。

「俺はさ、けっこう昆虫にも詳しいからさぁ」と調子に乗る山男が手を出そうとしたとき、ついに「へなちょこ」一行のうちの一人が静かに言いました。

「ボルネオからはどんな生き物も持ち出せませんよ。だからここでみんなで写真を撮って鑑賞する、ということにしてはどうでしょう」

思わぬ日本語の不意打ちに、山男は一気にひるみ、ひとこともありません。

人間たちのそんなやりとりに我関せず、とヨナグニサンはレストランの看板の上の方に飛んでいきました。

 私たち「へなちょこ」一行も、これ以上この場で追い回すのはやめよう、と、心を残しながらロッジへ帰る途中の木道で虫を探すことにしました。

 

 翌朝。もしかしたら、ヨナグニサンはまだレストラン周辺にいるのでは、と未練のある私たちは朝もはよから、朝食ブッフェへ。すると、いました!!!きのう止まっていた看板に、まるで看板の一部のように止まっています。

昨夜と同じ個体のようです。

 そそくさと朝食(朝食ブッフェは料理の品数はディナーと同じだが値段は26リンギット。ちなみに昨夜の夕食とは料理の内容はまったく違いました)を終えた私たちは、ヨナグニサンになんとか看板から降りてもらおうと、きのうの脚立をかり、手に乗せようとそろそろと近づくのですが、ヨナグニサンは思わせぶりにゆったりと羽ばたきながら、入口の植え込みから大きな多肉植物の鉢のなかへ。

 ふだんから蛾を手乗りさせている私たちは、これぞチャンス、と慎重に鉢植えのなかに手を差し伸べます。

 そのとき―

 ヨナグニサンが植木のなかから、ぴゅーっと、まさにぴゅーっと―こんなに大きな蛾では考えられない猛スピードと角度で、空に向かって飛び出しました……そして次の瞬間、水平方向から、目にもとまらぬ速さで鳥が飛んで、ヨナグニサンをキャッチ。この間、1秒。

 ウォーミングアップもなしに、いきなり高く飛んだヨナグニサンにもびっくりですが、それに続くプレデターの出現に、「へなちょこ」一行は声も出ない。

 私たちが手乗りさせて写真を撮りたい、なんて欲をださなければ、あのヨナグニサンは、あんな飛び出し方をしないで、安全な看板の後ろに隠れてもう少し長く生きていたでしょう。それを思うと「しゅん……」としないではいらせません。でも、ヨナグニサンが鳥に狩られるシーンなんて、望んでみられるものではない…と「へなちょこ」一行は複雑な興奮と罪悪感を抱えつつ、キナバル公園2日目の虫さがしに向かったのでした。

 

 

キナバル公園内で見つけたサンヨウベニボタル。

昼間みたのでわからなかったが、発光するようだ。

 

夜はこんな風に灯りをつけっぱなしで虫を呼んだ。