虫愛ずるイベントの一日もぶじ終わり、
3日目は池内美絵さんと昆虫館のある箕面へ行くことにしました。
箕面と書いて「みのお」と読む。
ここに昆虫館がなければ、
東京に住んでいる私はたぶん一生行くことがなかったと思われる観光地です。
大阪から30分くらいで行ける、全国どこにでもあるような、
地域の人たちに愛されている
手軽に行ける観光地といった位置づけなのかな。
たとえば千葉のお父さんが子供に、どっかつれってってよー、とせがまれたときに
「じゃ、日曜日に鋸山でもいくかー」という感じの場所なのかな。
関西の人が、千葉の鋸山へ行くことを目的に関東に来たりしないように、
東京から箕面を目的に観光に来る人もいないのでは、と思うのですが、
しかし、そこに昆虫館があるということになると、
虫に興味のある人には、大阪へいったらぜひ足を運んでみたい、目的のひとつになるのです。
池内さんとの待ち合わせは、箕面駅に12時半。
電車や乗り換え駅について教えてもらい、
はじめてのところだからちょっと余裕見て早く出よう、
と京都のホテルを10時に出て向いました。
えーと、まず大阪へ行って、石橋駅というところで箕面線に乗り換えて、
となんとか間違えずに箕面駅に到着したのはいいのですが、
11時過ぎに着いちゃった。
箕面線というのは、まさに箕面へ行くための支線らしく、
石橋からたった3駅で着いてしまうかわいい路線なのですね。
で、1時間以上をどうしよう?
と駅周辺をうろうろすると、
いろいろ食べたいものが目の前に現れました。
まず、駅前の和菓子屋さんの店先には、
今年はまだ食べていない「かき氷」と書いたのぼりが、「おいでおいで」と誘う。
そのちょっと先には、たこ焼き屋さん。
さらに行くと、箕面名物のゆずを使った「ゆずソフト」という看板。
柚子サイダーというのも。
その先には、名物「もみじ天ぷら」の店が並んでいます。
みんな食べたい。
でもいくら1時間以上あるからといって、全部は無理じゃないか。
「もみじ天ぷら」なるものが、
いったいどういうものなのか、イマイチよくわからないのだけれど
みたところ、全身これ油にまみれている揚げ物といった感じで、
おなかのなかで、かき氷とケンカしそうな雰囲気。
さらに、私はご当地ソフトとみると食べてみないではいられないソフト狂ではあるけれど、
かき氷とソフトを連続でいくのは暴挙のような気がする。
(ちなみに、ここ数年に食べたご当地ソフトのなかでイチオシは山口県萩の「夏みかんソフト」。
下痢中に無理をして食べた香川県の「アイスクリン」はさっぱり味でおいしかったし、
秋田の「ババヘラアイス」はナルホドという愛嬌のある味だった。
時には失敗もあり、伊勢神宮おかげ横丁の「豆腐ソフト」は、
あまりに豆腐過ぎて、ただのつめたーい豆腐を
コーンにつめて食べているようだった)
とりあえず、時間だけはたっぷり過ぎるほどある。
駅前にある観光案内所のようなところへ入って、
名物「もみじ天ぷら」というのが、どういうものなのか、
すごく暇そうに並んでいた3人のボランティア案内人みたいな人に訊いてみた(私もすごく暇ということだね)。
イスにだらんと座っていたおばさんが急に背筋を伸ばして、説明してくれたところによると、
「もみじ天ぷら」というのは、
関西の人たちには遠足のお供としてポピュラーなお菓子で、
1300年前、修験道場のあったこの箕面の山で、
行者が滝に映えるもみじの美しさをたたえ、
灯明の油で天ぷらをつくって旅人にふるまったのがはじまり、
という伝統ある名物なのでした。
自然を愛でる日本の心が「もみじの天ぷら」を生み出したのだそうです。
ウドン粉を油で揚げただけであるかのようなみかけより
ずっと奥深い歴史をもつ名物だったのですね。
参道には、店先で揚げたてを売っている店が10軒くらいあります。
こんな感じで。
なかにはもみじを木から育てているというこだわりの店も。
でも油の海を泳ぎ切った、というかんじのその姿から想像される高カロリーな見た目に、つい後ずさり。
で、まず食べたのは、たこ焼き。
小腹がすいていたこともあるけれど、
考えてみると今まで大阪に来たのは仕事ばかりで、
実はたこ焼きを食べたことがなかった。
さすが大阪のたこ焼き。
東京のよりサイズが小粒でどんどん口に入っていく、
そして、ふわふわ感が美味しい!
次はやはり今年の初物ということでかき氷。
和菓子屋さんだから、宇治金時のアンコの味も期待通り。
氷の盛りはごく少なくしてもらった。
ゆずサイダーはビンだけ鑑賞。
ゆずソフトは池内さんといっしょに、
「もみじ天ぷら」は・・・・・・まあ成り行きで、ということにしました。
そんなこんなで、駅構内のツバメの巣など見上げていると、
またたくまに1時間が過ぎ、
欲望のままに買い食いをして、やけに満足感高し。
池内さん、時間通りに到着。
さっそく虫目で歩きつつ、昆虫館を目指します。
上の方の滝から流れてくる川の流れに沿って、
緑濃い道がうねうねとつづきます。
少し行くと、池内さんが担当している大阪市立自然史博物館のミュージアムショップと取引がある
「箕面ネイチャールーム」という自然関係のグッズを売る店がありました。
『テントウムシの調べ方』や『大阪のテントウムシ』の著者、初宿(しやけ)さんデザインのナミテントウのシールを買いました。
ナミテントウの斑紋のバラエティにあらためて驚きます。
お店の前の川沿いに生えているセンダンの木の下に、小さなカミキリムシ発見。
お店の方に「なにカミキリでしょう?」ときくと
「カミキリの好きな人がもうすぐくるので、その人にきいてみましょう」とフィルムケースに採集。
クサコアカソの葉にオトシブミの揺籃がたくさん見つかる。
これはたぶんまだ見たことのないコブオトシブミの揺籃では、と3個採集。
そうこうするうちに、あ、木立の中に昆虫館が見えてきた!
これが箕面昆虫館名物のアレ、です。
入口付近にいきなりこれを配置しているところがすごい。
オオゴキというのは森に棲み、分解作業に寄与しているというのがわかりました。
規模はそんなに大きくないけれど、すごくいい雰囲気の昆虫館。
進路を行くうちに、この昆虫館には、昆虫のカミキリはもちろんですが、
人間のカミキリもいるな、とわかってきます。
それはつまり「紙切り」。
館内のあちらこちらに、紙を切ってつくった展示物があり、
どれもつくった人がいかに楽しんで、ていねいにつくっているかが伝わってくる傑作ばかり。
そして自動ドアを入ると、そこはチョウ園。
こんなチョウたちがいるようです。
あ、イシガケチョウ見たい!
チョウ園の中心的存在といえば、金ぴかのサナギで有名なオオゴマダラ。
子供がこわがって泣くほどの乱舞っぷり。
そしてリュウキュウアサギマダラ。
イシガケチョウは数が少ないみたいで、なかなか見つかりません。
あ、いた!
でもなかなか近くに来てくれない。
想像していたより、大きいチョウでした。
ふと横の葉っぱを見ると、
うぉっ、これはイシガケチョウの幼虫ではないか!
色形とも、やっぱり只者ではない雰囲気をもっています。
チョウ園のかたすみで飼育されていた
クロマルゾウムシ。
1センチ以上ある大きなゾウムシ。
何回来ても、チョウ園というのは心躍る場所です。
展示されていたなかでもっとも心に残ったのはフィリピンビワハゴロモ。
この翅の模様って、やっぱり驚異。
花柄のブラウス着ているみたい。
さて昆虫館でふだん見ることができないような珍しい虫をたくさん見た後は、
このすてきな古い建物のカフェでお昼ごはん。
雰囲気だけでなく、味もばっちりでした。
こんな風景のなかを、さらに滝を目指して登っていく。
濃い青緑色のハエトリグモ。
ずっと見たかったアオオビハエトリかな。
シダの葉をボールのようにきれいに巻いたのはだれ?
アカハネナガウンカ。
このウンカ、正面から撮ると、目玉がとっても剽軽でかわいいので
なんとか写真をと思っているのですが
きょうも正面にまわるまでに飛ばれました。
滝まであと1,6キロという表示の所で、回れ右。
どうも目的地までたどりつかない私ですが、
ゆずソフトも食べなくちゃいけないし・・・・ということで
駅前にもどる。
期待のゆずソフトは、
イタリアンレストランのものだったので
ジェラートの味はかなり美味しかったのだが、
ゆずのジャムは・・・・・・かけないでほしかった。
ともあれ、見たいものを見て、
食べたいものを食べて
自然豊かな箕面を堪能した楽しい一日でした。
そして大阪駅構内で、虫愛ずる旅の最後の駅にふさわしいこんなポスター見つけた。
ファッションビルの広告らしい。
「オシャレの虫が、さわぎだす」というコピー。
よくみるとテントウムシも、ナナホシとかじゃなくて
カメノコテントウとシラホシテントウだし、
ポピュラーな虫の間に糞虫までまぎれこんでいるところをみると、
きっと虫の好きな人がつくったんだろうなあ、とうれしくなるポスターでした。
3日間をきっちりつきあってくれた池内さんとここでお別れ。
ほんとうにお世話になりました。
改札を通って振り向くと、まだ手を振ってくれていました。
また何かいっしょにやりたいですね~。
午後10時ごろ家にもどると、
イベントに来てくれた神戸の少年植物博士ゆうひ君から、
「吉田山の観察で教えてもらったことを本にしています」と
メールがきていました。
吉田山の観察ワークショップでは、ゆうひ君にずいぶん樹の名前を教えてもらいました。
「春夏秋冬全ての虫」っていう意気込みがすごいです。
ゆうひ君の絵にはいつも描きたいことがあふれています。
そうそう「もみじ天ぷら」、やっぱり買って帰りました。
おじさんに揚げるところを見せてもらって。
天ぷらというより、芯まで油を吸いこんだカリントウという感じ。
もみじはどこ行った?という衣の厚さというか、
ほとんどその姿が見えませんが、
でもカリカリして、うす甘くて、
「鶯ボール」みたいな、食べ始めるとつい手が止まらなくなる、
やばいお菓子でした。
これをポリポリかじりながら、紅葉の箕面を歩いたら、さぞ楽しいだろうな。
たくさんの人と虫に会えた、虫愛ずる3日間でした。