鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

竹上妙さんの個展に行ってきた

2013-04-25 17:36:55 | 日記



 木版画家の竹上妙さんの作品には、虫をモチーフにしたものがたくさんある。
そのどれもが、大胆で、元氣がよくて、視点がユニーク。
外苑前のギャラリーで個展を開かれているときき、行ってきました。

 
竹上妙さん。


 
私の大好きな、柿とカミキリムシの絵も。


きょうは桑沢デザイン研究所の生徒たちも見にきていて、大盛況。


この「春についてのうわさ」と題された作品は、私にとってとても特別な一点。
なぜかというと……この作品を6月に出す虫の本のカバーに使わせていただくことになったからだ。
 テントウムシが、土の粒をもって転倒しているモチーフ
―これは実際に竹上さんが観た光景から生まれたのだそうだ。
 こんな風に、テントウムシが転倒しながら土の粒を持ち上げているなんて、珍しい~
 偶然行き合った足元のちょっと不思議な光景が、春の喜びとともに力強く表現されていて、見ていると水仙のいい香りが漂ってくるようだ。

 ところでこの個展が開催されている TAMBOURIN-GALLERY(タンバリン・ギャラリー)は、とっても雰囲気がよくて、大好きなギャラリー。

 地下鉄外苑前駅から、歩いて10分ほどだが、このあたりにくると緑が濃くて(街路樹にナナカマドやクルミの木がある!)、きょうのようなおだやかな春の日に歩いていくと、な~んともいい気持ち。

 春の午後の空気があんまり気持ちよかったので、帰りはぶらぶら歩いてホットケーキで有名なカフェ香咲(カサ)に寄ったり、ミナ・ポルフォネンの小物ショップをのぞいたり、ベルコモンズのtheoryでシャツを買ってディーン&デルーカでオミヤゲにアップルパイ……。ワタリウムもあるし、珍しい植物があるフラワーショップ「風雅」もあるし……この道沿いには他にもいろんな楽しみがいっぱい。
 竹上妙さんの展覧会『その日 この日 あの日』は、外苑前GALLERY TAMBOURINで4月28日(日)まで。
(11時から19時 最終日は18時)

 GWの一日、外苑前を散歩がてら、買い物がてら、ぜひ!立ち寄ってみてください。






 

巷で評判の『日本の昆虫1400 ①チョウ、バッタ、セミ』

2013-04-24 12:32:30 | 日記

 小型図鑑でつぎつぎとヒットをとばしているあの文一総合出版から、先ごろ発売された『日本の昆虫1400』にあちこちから賞賛の声。

 で、私も買ってみました。



 まず、パラパラっと見て……「わあ、蛾類がこんなにたくさん載っているのは、うれしい!」
蛾類の名前調べにはいつも苦労しているから。

 昨今の図鑑は、専門的な大図鑑は別として、標本写真でなく、生きている状態の虫を撮影した写真が使ったものが断然多くなっているようだ。
これは野外で出会う状態の虫の名前を知るのに好適。
 加えて本書は、「生きている虫」かつ「白バック写真」で虫の特徴がわかりやすい。
 しかも、文庫本サイズ、値段は仰天の1050円(税込)!

 さらに「野外で出会う頻度の高いもの」を掲載する、というのが編集のコンセプトということなので、ふだんの観察にとても役立ってくれそうだ。

 種の見極めが難しい虫については、「絵解き検索」のページがありがたい。
たとえば、見るたびにどれなんだろう?と迷うクヌギカメムシ、ヘラクヌギカメムシ、サジクヌギカメムシ。とてもわかりやすく見分けポイントが説明されているので、これからは迷うこともなさそう。

 「カメムシ目」の充実が特にすごい!というレビューが多いが、奥付を見ると、
編著者には、カメムシBBSの長島聖大さん(伊丹市昆虫館学芸研究員)、『日本原色カメムシ図鑑』シリーズの高井幹夫さん、同定に同じく石川忠さんというカメムシ界のそうそうたるメンバーの名前が並んでいるので納得。

 5月に売されるという『日本の昆虫1400②トンボ、コウチュウ、ハチ』の巻(①②を合わせて1400種)も楽しみだ。
(私的には、ハムシとゾウムシがたくさん載っているとうれしい)




 






 

『虫目で歩けば』掲載クモの名前訂正

2013-04-12 07:45:17 | 日記

 拙著『虫目で歩けば』掲載のクモの名前について、「日本ハエトリグモ研究センター」の池田博明さんから、グループ名だけを記したものに関する詳しい種名、あるいは名前や行動の意味のとり方の間違いについて、教えていただくことができました。
 『虫目で歩けば』を読んでいただいた方には申し訳ないのですが、下記ご参照いただき、
間違いなど訂正してください。


31ページハエのいる花に近づく「カニグモ」
 このカニグモは、正しくはアズチグモのオスです。
アズチグモのオスはハエを食べに来たのではありません。
メスを探しに来たのです。オスは成熟すると自分自身で虫を食べません。
体も小さくてハエを取れないと思います。
アズチグモのオスはメスの腹部背面に乗って移動します。
そして隙を見て交尾します。


35ページ 「スミレの花のなかのクモ」
 ドヨウオニグモ♀です。このクモは水田付近に多く見られ垂直円網や傾いた円網を張ります。


42ページ 「ネコハエトリのオス」
 ネコハエトリは斑紋変異が多くこれをネコハエトリと見た眼力は正しいと思います。間違っていません。
ただし、オスの成体は4月下旬からせいぜい5月中旬までしか見られませんので、オス成体かどうかは気になります。


43ページ
 「チャイロアサヒハエトリのメス」
 正しくはメスジロハエトリのメスです。メスジロのオスは確かに別種に見えるほど違います。
オスも成熟する前はメス型です。正しいチャイロアサヒハエトリもごくごく普通種ですので
きっといると思います。

81ページ「アサヒハエトリの子供」
 写真では断定が難しいのですが、チャイロアサヒハエトリの子供のように見えます。

43ページ 「ヤバネハエトリのメス」
ネコハエトリの幼体です。色がオレンジ色の個体変異なのでだまされます。
たぶん63ページの小さなクモもネコハエトリの幼体です。
本当のヤバネハエトリは平地には住んでいません。

77ページ 葉の上のクモ
 スジアカハシリグモ幼体です。


78ページ
 「アズチグモ」
 正しくはハナグモのメスです。48ページのハナグモの斑紋変異です。


78ページ
 「悪魔が笑っているような顔 オニグモの一種」 
 ヤマシロオニグモのメスです。 
このような変異をあとぐろ型と仮称しています。

79ページ 「ちっちゃなちっちゃな銀色のクモ」
シロカネイソウロウグモ メスです。ジョロウグモなどの網によく居候しています。

102ページ 「徘徊性のクモ」
 これはヤミイロカニグモの一種ですが
何ヤミイロカニグモかは専門的になるため写真では不明です。チェコですしね。
(以上、池田博明さんから)


 たくさん間違いやあいまいな表現があったこと、深くお詫びいたします。
 虫についてブログに載せたり、本に書いたり、というときの虫の名前調べについては、いつも四苦八苦しています。特にいったん印刷してしまうと訂正ができない書籍については、毎回胃が痛くなるような思い。
 
 私は虫の専門家ではないので、いわゆる「同定」はできません。
「同定」というのは、「それぞれの種(たとえば、チョウとかハムシとかカメムシとか)の専門家が、実際の標本をもとに、 分類上の所属や種名を見極めること」なので、基本、写真から判断することは無理といえます。
 観た虫を採集し、標本にして専門家に見てもらい種名を見極めてもらう、ということができる機会は少ないので、私は図鑑とネットで調べられた範囲で名前を書いています。
 写真を撮るときも、種名の判断ができやすいような特徴を記録するように、いろいろなアングルから撮ることを心がけていますが、すぐ飛ばれてしまって十分な写真が撮れなかったりします。
 今後も名前調べは慎重にやっていきたいと思いますが、間違いなどある場合は教えていただけたらありがたいです。
 池田さんによると、クモの名前は一般のウェブやサイトでは身近なものでも間違いが多いので
目下、東京蜘蛛談話会では『クモ基本60』を製作中です、とのこと。
池田さん、ほんとうにありがとうございました!