鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

虫の世界はオフシーズンとは無縁です―新開孝

2014-12-21 18:06:02 | 日記

 2014年は4回の「むし塾」を開くことができました。

11月末日に行われた昆虫写真家新開孝さんをお迎えしての回も、いつもの通り、満員御礼。

 

 新開さんは、7年ほど前、関東から九州は宮崎県に移住。フィールドのなかに自宅がある、という昆虫写真家の理想の環境で仕事をしていらっしゃいます。

 一歩家を出れば、そこはもうフィールド。そんな環境を維持していくためのご苦労もたいへんなものがあるとはいえ、その苦労を補って余りある環境に身をおいていらっしゃるのが、お話からよくわかって、聴いている私たちはうらやましさから溜息。

 とびきりの虫画像を見せていただきながらの1時間余。

カメムシ好きの私にとっては、口吻を実に突き刺して、子にエサを運ぶという、驚くべき習性をもつベニツチカメムシのお話がたまらなかった!

ベニツチカメムシはボロボロノキという、ちょっと特殊な植物のそばに生息するので、関東では見ることができない。体長2センチという、カメムシとしては大型のほうで、まだまだその生態は謎ばかり。

リピーターも多い「むし塾」だが、この日は初めて参加してくれた方も多かった。

(手を挙げている人たちが初参加)

 

この日はなんと、すっかりカメムシファンになった、葛巻の小野先生ご夫妻が、はるばる岩手県から参加してくださった。今年2月に初めて葛巻を訪ねてから、まだ1年にもなっていないのに、「やっかいもの カメムシ」は、信じられないようなネットワークを広げている。

 

講義のあとは、恒例のサインタイム。順番待ちの長い列ができた。

 

 

 半月におよぶ東京滞在のなかで、なんと12月はじめ、新開さんといっしょに飯能のフィールドを歩くチャンスが!

 

 

 

例によって、観察場所の下見を2度もしたという昆虫特派員の案内で、まず越冬しているテントウムシの集団のいる電信柱のまわりでワイワイ。

ナミテントウがいろいろ寄り集まっている。

 

初冬の日差しがおだやかなフィールドを行く

 

私はこの日、虫もだけど、新開さんの行動に興味津々。

新開さんは、その出で立ちも行動も、無駄がないというか、ピシッと決まっててカッコイイです!そして、そんなところに!?というポイントで虫を見つけます!どこを見たらいいか、すごく勉強になりました。

 

これは、通称エリマキアブ(フタスジヒラガアブ)の幼虫。

なんとこの名前の名づけ親は新開さん!

細い枝に襟巻のように巻き付いて、通りがかりの獲物を狙う、と教えていただいた。

 

私たちがずらっと並んで斜面に張り付いているのを見て、「何がいるんですか?」と声をかけてきた通りすがりのひとまでいっしょに

 

コケに擬態しているこの虫、コマダラウスバカゲロウに目を凝らしている。

 

 

自然状態では初めて見たオオムラサキの越冬幼虫。こんなに毛がはえてるんだ・・・。

 

オオトリノフンダマシの卵のう。

 

同行の竹上妙さんが摘んで食べているのを真似して食べてみたフユイチゴ。

なるほど甘いです~

 

これはムラサキシジミの卵。自分の目だけではとても見つかりそうもない大きさ。

 

昆虫仕事人いのうえさんが「干からびたクワコのよう」と表現したこの幼虫は、

ニセミカドアツバの幼虫と教えてもらいました。

同じく仕事人がコナラの木で見つけたミヤマセセリの幼虫。葉が枯れると地上に落下し、そのまま越冬して春に蛹化するそうだ。

 

いろんな植物の冬芽で虫たちが越冬しているのをこの日実感。

これは枝にしがみついたゾウムシの仲間。

(森上信夫さん撮影 右のほうに写っている巨人は佐藤浩一さん。虫だけでなく生き物全部にくわしい!)

虫目のエキスパートたちとのフィールド、忘れられない1日になりました。

 

 2,3回できたらいいな、と思って今年2月からはじめた「むし塾」

結局4回も開催することができました。

お忙しい中講師をお引き受けくださった野村昌史さん、神保宇嗣さん、安田守さん、新開孝さん、

参加くださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。

「むし塾」は来年も続けられたらいいな、と思っています。

 

 ところで今年開設された虫関連のブログのなかで、ダントツにおもしろい、と更新を楽しみにしているのが

昆虫写真家 森上信夫さんの『ときどきブログ』。ときどきといいながら、けっこうマメに更新されています。

http://moriuenobuo.blog.fc2.com/

昆虫写真家でなければ書けない、明解で説得力のある記事がすばらしい。まだ見ていない人は、お正月休みにまとめ読みしてはいかがでしょう。

 

 

 

 12月のある日の夕方、若い男性の声で電話がかかってきた。

「もしもし、海花さんですか?」

「は、はい」(誰?)

「葛巻の翼です」(あ、江刈小学校の翼くん。声が若いわけだわ、小学校3年生だもん)

「あの、お誕生日、おめでとうございます!」

「え、ど、どうして誕生日知ってるの?」

「夏に来たとき、言ってたでしょ。弟の翔太と同じだから覚えてたの。学校でもきょうは海花さんの誕生日ですって、みんなに言っといた」

 こんなうれしい誕生日コールは今までになかったなあ。

 

 今年は虫が縁で、たくさんの人たちと出会うことができたのを、あらためて感じます。

来年も、いろんな虫と人に会えればいいな、と鼻水をすすりあげながら願っている師走です。

最後に、新開さんからのメールの言葉を、冬の虫好きたちに贈ります。

『冬も虫さがしで忙しい毎日です。虫の世界はオフシーズンとは無縁です』

 

みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。