鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

『とび森』ムシめ村に虫カフェできたよ!次の目標は「虫B&B」

2012-12-26 12:04:56 | 日記

 忙しい合間を縫って、こつこつと作ってきました虫カフェ。
いちおう完成をみました!



 1階はカフェと厨房と書斎、2階がプライベートルーム。

 『とび森』ですごいと思ったのは、リサイクル屋のカイゾーくん。
マイデザインの虫模様が、ステンドグラスやクッションにみごとにリメイクされたときは……言葉を失った。

 虫カフェの完成は、ひとえにカイゾーくんのおかげです。



 カメムシも捕まえたし、



仕立て屋には虫モチーフの服が並ぶ。

これじゃあ住民も虫の服を着るしかないよね。


 そして公共事業はほとんどしないで、ひたすら虫にいい環境を保持することに腐心しているカメムシ村長(雑草が生えたからといって草刈りデーを勝手につくる秘書「しずえ」には頭にくる。首にしたい)の野望は、カフェ、厨房に加え客室3つを併設した虫B&Bへとふくらむ。

 客室はそれぞれ違うテーマの虫のツインルームにしたいので、
倉庫に、カイゾーくんに頼んでリメイクしたオリジナル家具を準備中。


 自宅はもう一軒つくることになりそうだし……まだまだ先は長い。


クリスマスの虫ガールたち

2012-12-24 18:30:05 | 日記

 そう子ちゃんからもらったクリスマスカード。虫のサンタさんせいぞろい。


 ツリーを飾らなくなってから何年たつことか……。
でも今年は小学生の虫友から、すごーい!クリスマス・カードが送られてきて、
にわかにクリスマス気分にひたっています。


 カードを送ってくれたのは、夏のイベントで出会った小学1年生のそう子ちゃんです。

 
 カードを開くと……!!!


『ファーブルこん虫きをよみました。
ヒジリタマコガネがいいとおもいました。
ふんをころがすのがいいとおもいます』


 そして今年そう子ちゃんは「かんきょうえにっきしょう」を受賞したのだそうです。
おめでとう!
その絵日記の縮小版が反対側に貼ってありました。
 あまりにすばらしいので、下に書き写してみます。

『(絵:オオヒラタシデムシ)

 2012年8月18日 天気 はれ

  もりにごみがないのは、むしがいるからだ。
 ごみをたべてくれたり、おそうじをしてくれる。
たとえばしんだむしとか、なまごみをたべてくれる。
  ごみをたべるむし。
アオオサムシ、スジアオオアサムシ、クビアカツヤゴモクムシ、オオヒラタシデムシ、
みずのなかではゲンゴロウ、ガムシ。
 にんげんはごみをたべられないから、むしにたすけてもらってる。
 むしは、だいじだ』



 「むしは、だいじだ」と言い切っている結びの一行。ドシンと重い説得力があります。
 まだ7歳だけれど、2歳からずうっと虫を見てきたそう子ちゃんの虫愛と、日々の観察の実感がこの一行に凝縮されている。
(物書きのはしくれとして言うと……この文章は構成がすばらしい。筋道だっていて、簡潔で、ちゃんと情報が盛り込まれていて、こびていない。だから最後の一行が効いてくる。見習いたい!)
 小さくて、見かけが地味で、地を這っている虫にまで、ますます虫目に磨きがかかっているそう子ちゃんと、来年もいっしょに虫さがしに行きたいです。





 そして、きょうはこれから、ジンメンカメムシ(オオアカカメムシ)人形を、もうひとりの小学生虫友まゆ子ちゃん といっしょにつくることになっています。

 マレーシアに虫さがし旅行に行ったとき、地元民のオランアスリたちが、チョウばっかり採ってきてくれるのに、ちょっとがっかりしていたまゆ子ちゃん。
ほんとに観たかったのはカメムシとかバッタとかだったから。
 で、言葉の通じないオランアスリに、バッグのなかから、この人形を取り出して見せたところ、オランアスリたちは大喜び。ジンメンカメムシのいるところに案内してもらえた……という大活躍をした人形なのです。



 でもどこに行くにもいっしょに連れて行くので、さすがにこのところクチャッとしてきた。2代目をつくりたい、ときいて、この人形を見せてもらった時から「ほしい……」と思っていた私もいっしょにつくることにしました。
 2代目なのでちょっと手をかけて、原毛からフェルトをつくり、ニードルフェルティングでつくろうということに。

 今年は虫が縁でいろんな人に出会うことができました。小学生から80歳代まで。
好きなことがいっしょなら、年の差なんて……。



 あ、メリー・クリスマス!
 




「オオテントウ、送っちゃり」

2012-12-03 22:56:38 | 日記
高知の別府さんからいただいたオオテントウ。




 秋から冬へ、野外で虫を見る機会がへってくるにつれ、つい家のなかに虫を連れ込みたくなるこのごろ。

高知旅行でお世話になった昆虫写真家 高井幹夫さんから10月末、
“別府さんから、「海花さんに、送っちゃり」(高知弁って、あったかくていいなあ。時間切れで見つけにいけなくて、私がヨダレを垂らしていたのを覚えていてくださったらしい)
とオオテントウを預かりましたのでお送りします”とメールがきて、
翌日、高知で見ることが叶わなかったオオテントウが到着しました!


 ここまでおっきいとは、思わなかった。13ミリもある。
ガラスの膜でコーティングしたような、濡れているような光沢があります。

体側がちょっとめくれているようなところが、東南アジアのハムシに似ているかな。

おなかのほうから見ると、こんな。


どのくらい大きいか、
ふつうのナナホシテントウと比べてみると・・・・・・


 
 オオテントウは関東で見たことがある、という話もきいたが、私はいままで見つけたことがないし、
どうやら西のほうに多いテントウムシらしい。
でも、西の方でも見つかると新聞ダネになるような、珍しいテントウムシ。


 ホウライチクという竹の一種にいるタイワンツノアブラムシを食べるそうだ。


 困った……。ホウライチクもタイワンツノアブラムシも近くにない。
しかたなくクワガタ用のゼリーが余っているのを思い出してあげてみると、
すごく気に入ったみたいで、顔をつっこむようにして食べている。
12月になってもまだ元気。

 オオテントウといっしょに送られてきた葉っぱが枯れたので、そばの鉢にいれておいたら、
なんだかまわりがポヤポヤしてきた。
ルーぺで見ると……あら!粘菌が生えた。



 粘菌図鑑を引っ張り出して調べてみると、

ドンピシャリのはなかったが、ホコリタケの一種らしい。
粘菌図鑑をみると、なんだかクラクラする。
引き込まれそうな世界だ。




 11月には、「最強のカメムシ採集人」高橋敬一さんが、
群馬で採集したというルリヒラタムシ送ってくださった。

うおー、ひらべったい~。

黒みがかった瑠璃色の翅が渋くて美しい。

 ルリヒラタムシは高地の広葉樹林の朽ち木などにいるらしいが、
これも我が家ではクワガタゼリーを食べてもらっています。



 高井さんからいただいたニシキキンカメムシの終齢幼虫も、動きは少ないものの、
葉裏をときどき歩き回っている。


 室内に置いているので、春になる前に羽化を見られるかもしれない、という期待を胸に、
だいじに、だいじに育てています。

 日本産キンカメムシの最美麗種というニシキキンカメムシは、石灰岩の地層に生えるツゲが食草で、その生息は局地的。
今までに発見されている場所は、福岡県、長崎県、鹿児島県、高知県、岡山県、兵庫県、和歌山県、愛知県、静岡県、そして東京の奥多摩でも発見例があるという。

 


 近所のエノキの幼木で採集したゴマダラチョウとアカボシゴマダラの幼虫の表情があまりに愛らしいので、飼育して観察中。

上の大きいのがゴマダラチョウで、左下はアカボシゴマダラの幼虫。


 50センチくらいのエノキの幼木に6頭の幼虫(3、4齢)が見つかったのだが、
そのうちゴマダラチョウは1頭だけ。あとはみんなアカボシゴマダラでした。
 ゴマダラチョウ、アカボシゴマダラ、そして秋に山梨で見たオオムラサキの幼虫などはちょっと見似ているが、背部にある突起が、ゴマダラチョウは3対、アカボシとオオムラサキは4対。
 また尾端が二又に開いているのがゴマダラチョウとオオムラサキで、
アカボシは二又になっていないので、これらが見分けのポイント。

 アカボシゴマダラは11月下旬にも、終齢幼虫が見つかり、

(体の下に糸座をつくり、うつむいている終齢幼虫)



次のステージへ、メタモルフォーゼの神秘がはじまる蛹化直前の幼虫には、
シーンとした独特の雰囲気がある。

 この終齢幼虫は、ほどなく蛹化して、1週間で羽化。冬も間近な空に飛んで行った。
 関東で年2化ということか?
「アカボシゴマダラの従来の分布は奄美のみ、関東のは人為分布」と『イモムシ ハンドブック』にあるが、とにかくアカボシの繁殖力はおそろしいほどだ。





 そして、足摺岬で採集したアカギカメムシたちも、まだ時々交尾するほど元気です。



口角が上がったご機嫌顔



日焼け顔



濃い眉顔。いろいろあるのが楽しい。

 それにしても、アカギカメムシは、人間にとって臭い匂いを出すカメムシのなかで、
ほんとうに匂わないカメムシだ。
足摺岬で頭上の集団がばらけて降り注いできたときも、まったく匂わなかった。
カメムシの匂いも種によって強弱があるが(クズにつくマルカメムシなどは周囲にカメムシ臭が漂っていることもあるほど)、アカギカメムシに匂いがほとんどないのには、理由があるんだろうか?




 足摺岬の生息地に案内してくださった高井幹夫さんによると、
アカギカメムシが秋に集団をつくるのは交尾のためと思われるが、まだ証明されていないという。
(秋の集団はその後、離散して越冬。春に産卵して5月ごろ孵化)
 そこで、交尾しているカップルのメスを隔離して、
来春に受精卵を産むかどうかみてみたいと思っています。
産卵してくれるといいなあ~。