鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

女子4人で『大昆虫博』へ

2010-07-25 15:51:58 | 日記

 虫好き女子が4人集まって、大昆虫博へ行って、そのあとランチしようということになりました。夏休み直前だったので、まだ子どもたちは押し寄せておらず、そこそこの人出だったので、ゆっくりと展示を見ることができました。  

 この展覧会は夏休みのイベントとしては、とっても大人っぽい、美しい展示が魅力です。大きく分けて岐阜の名和昆虫館の標本と、養老、奥本、池田3先生の各ブースという構成。 

 入り口を入ると、まず誰でも足を止めずにいられないのが、現存する日本最古の昆虫専門博物館である名和昆虫博物館からやってきたチョウやハナムグリ、カミキリなどをアート風に配した展示。いきなり昆虫の華麗さをアピールして、観るものの気持ちをグイとつかみます。

若い(???)女子の入場者はわたしたちだけだったような・・・・。

 そして会場でひときわ目立つのは、『養老先生の部屋』の壁のパネル。先生がビーティングをしている様子の写真。楽しそう。

 養老先生制作のゾウムシの標本。1センチ以下のゾウムシがびっしり並んでいるのに圧倒された。

 『奥本先生の部屋』はファーブルをはじめ虫をめぐる博物画や書籍、フランスと日本の昆虫の標本などが展示され、先生ならではの文化の香りたかい、優雅な虫とのつきあい方があらわれているのがすてきです。

 

 びっくりしたのは、『池田先生の部屋』に立てかけられていた大きな捕虫網!これを振り回して虫を捕まえる体力って!

  

 池田先生直伝の虫の捕り方も。

 虫が好き、といっても人それぞれであることが如実にあらわれている各先生の部屋からは、この催しが単なる標本展とは違う、「人と虫」というテーマをもったイベントであることがわかって興味ふかい。

 ふだん珍虫とか、高価で取引されている花形昆虫などにはあまり縁のない「雑虫屋」のわたしが、虫ってどうしてこんな質感と色でできているものがあるんだろう!!!と見とれてしまった珍しい虫が、チャイロフトタマムシというインド原産の5センチくらいの甲虫。背中はまるで漆塗りのようなテクスチャーで、頭部がラメ入りエナメルを塗ったようなミドリ色。

 ウルシのような渋い色と光沢、キラキラの組み合わせは珠玉の工芸品のよう。虫にしてこのセンスの良さ、すごすぎる・・・・・・・

としゃがんで見入っていると、後ろのほうで「フォルムはゴキブリ型・・・」という声が。た、たしかに・・・・・。

 

 展示を見たあとは、ショップへ。

むしむし探し隊で編集した『昆虫博公式図録』といっしょに、『虫目で歩けば』も並んでいて光栄です。

 虫のガチャガチャがたくさん並んでいるので思わず近寄ってみると、見たこともない大きなジンガサハムシのがあるではないか・・・・・・。わたしは昔からガチャガチャをはじめるとノメリこんでしまう質なので、このごろはやらないようにしているのですが、1回だけ、と300円を投入し、「ハムシのが出ますようにー」と強く念じてハンドルを回すと・・・・・・えっ?出たー!

 ラッキー気分で、ナナホシテントウとナミテントウのピンバッチや、黄色いハムシとドウガネサルハムシのストラップも買ってしまったのでした。

ピンバッチはさっそく帽子につけてみた。

 

 買い物もすんで、「おなか空いたねー」と2階のレストランへ。

 きょうの虫好き女子4人は初対面の人もいるのですが、展示を見ているうちにすっかり昔からの知り合いのような雰囲気になっている。

 『虫目で歩けば』に掲載したお茶会にも参加してくれブロガーのメレ子さんは、来週からベトナム旅行に行くという。蓮の葉のお茶をつくるところを見たいというのが目的だそうだが、虫を見つけるための日もちゃんとあるとか。みやげ話が楽しみです。

 埼玉から来てくれた初対面のTさんは驚くべきエネルギーのある人で、家ではタランチュラを飼育しており、かつてはフクロウなどの猛禽類も飼育していた、という猛者!ふつう食事時にはありえないような話題で盛り上がりました。

彼女のお母さんが韓国旅行で買ってきたという虫図鑑を見せてもらいました。カバーの裏にのっていた著者の写真が女性だったのでみんなうれしがる。

 そして拙著をテレビで紹介してくれたNHKのNさんとは、なんとか『ダーウィンが来た!』で虫のテーマを、といっしょに企画を練っているところ。  

 おしゃべりしながらゆっくりランチをして、駅に向かったけれど話は尽きなくて・・・・・・なんとなく江戸東京博物館のまわりをみんなでぐるぐるしちゃった楽しい日でした。  


鎌倉の、もうひとつの顔

2010-07-13 21:48:55 | 日記

   梅雨のこの時期は、雨さえ落ちていなければけっこう虫歩き&撮影にはいい季節だとわたしは思います。まだ本格的な蚊の攻勢もはじまらないし、湿気はあるけれど、かーっとくる日差しはないし、それに曇りの日に撮った虫の色は、なんだかきれいに写る。  

 鎌倉の大船寄りの地域には、鶴岡八幡宮や海岸とはまた違う鎌倉の顔があります。自然のままの雑木林や公園など、深い緑のスポットがあちこちに。 虫さがしにはけっこういい場所なのですが、なにせ東京から鎌倉は電車も車も混む。

  6月から7月のはじめは、雨の日でもアジサイ見物と江ノ電目当ての観光客が押し寄せます。まったくこのところの江ノ電の混みっぷりは異常。

 なので、鎌倉方面へ出かけるときは出発早めにします。 北大の博物館で見て以来、すっかりオトシブミのファンになったので、このところ木を見あげて歩くことが多いのですが、思ったように見つかりません。

 やっと目黒自然教育園で見つけたオトシブミは、このヒメクロオトシブミだけ。

 首をふらふらさせて、前脚をオヨョって感じで動かす動作が、かわいい!

 そろそろオトシブミが揺籃をつくれるようなやわらかい葉っぱが少なくなってきて、早く見つけたいとあせりが。 そこで『オトシブミ ハンドブック』をすみからすみまで熟読。揺籃を湿度に気をつけながら置くと、なんとオトシブミが中から出てくる、と書いてある。オトシブミの揺籃づくりは初夏だけど、同じように揺籃をつくるチョッキリは夏までOKらしいので、まだ大丈夫かな。

 揺籃からオトシブミやチョッキリが出てくるところをぜひ見たいと思っていたら、先週ひとりで鎌倉へ行った夫が見たと。

すぐ行かなくちゃ。

 そこでアジサイ見物客が動く前に鎌倉へ。

 教えてもらった木を見ると・・・・

 7個ゲットして、だいじに持ち帰ることにしました。  

 広場のようなところで、4畳半くらいの大きさのブルーシートを広げている人たちがいるのでのぞいてみると、キノコ観察会の人たちでした。すごい数のキノコが並んでいます。ここいらの森は豊かなんだなあ、と思いながらさらに歩く。

 すると1本の木の幹に、ウ、ウ、ウシカメムシの成虫が!!!

 もう何年も見たいと思っていたウシカメムシ。両肩のひゅっとしたトゲの形が好き。針葉樹にいるカメムシなので、針葉樹を見かけると必ず幹をなめるように見てきたけれど、なかなか見つからなかったのに、きょういたのは広葉樹の幹。

 集中するあまり汗が額にたらたら。そうやって写真を撮ったり、採集したりしている間、なんだか背後にひとの気配が。

 採集ビンに無事ウシカメムシを入れて振り向くと、男の人が「なんですか?」ときいてきた。何をみているんだろうと、私が採集するのを後ろで待っていたらしい。

 見せると、「へえ、かわいいですね!これもう成虫なんですね」と。カメムシをみて素直にかわいいって言ってくれる人は・・・・・・あんまりいないのでうれしくなる。そばには捕虫網をもった男の子がいっしょにいて、この親子はチョウを見によくここへ来るのだそうです。

 さらに歩いていくと、あっ、もしかしてゴマダラオトシブミ!!!

 日本産オトシブミ亜科21種のうち、唯一ドット模様があるオトシブミです。あんまり興奮したので、その気配が伝わっちゃったらしく、すぐ落ちられた・・・・・・。

  6ミリくらいの小さなミバエの一種。

 模様のある翅を真横に開いたまま、ときどきぐるっと体を回転させる、人間からみると意味不明の動きを静かに繰り返している。

 

  虫ではないけれど、葉っぱのまんなかに唐突に花が咲いたり実がなったりするハナイカダ。

 

 ゾウムシが交尾中だけど、このカップルいくらなんでもオスが小さすぎないですか?

 おおっ、ビロードハマキ。

 このところ関東地方で増えているらしい、込み入った模様の翅が美しいファッショナブルなガです。3,5センチ。オシリの先が赤いのは、こちらを頭だと錯覚させるためでしょうか。

 明らかにこのハデハデしさは、「私は毒があるわよ」とか「食べても不味いわよ」というアピール。でも実際には毒はないらしい。ハマキガは夕方に活動するガだそうですが、ビロードハマキは昼行性。

 

  こちらは織り地模様のある白無垢をきた花嫁さんを連想させるヒメウスアオシャクのメス。

 そしてモダンで粋な麻の着物を髣髴とさせる翅をもつのはセスジマミシャクか?

それぞれ個性的な衣装の女性を連想させる、美しき3種のガでした。

 

 ええと、なんでゾウムシが好きかっていうと・・・・・・

ひとつにはこの「しがみつく生き方」がかわいいから。 たいていこんな風に茎をしっかり抱くように「しがみつく」のが、ゾウムシのスタイル。

 

 そしてもう帰ろうか、と思ったときに目の前にすーっと、糸が降りてきた。 緑色がかった白い腹部背面に「下がり眉」の人面風模様があり、おなかのほうはヒスイ色のクモ。

 これはあの、時間がたつと巣の糸が金色になるというアオオニグモでは?!体長が1センチ以上もあるのでメスのようです。ずっと見たいと思っていたクモなので別れがたくて、採集することにしました。

 そして1週間。採集ビンのなかに体を隠すように糸をはっていますが、まだ金色にはなっていない・・・・。