日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

中国におけるM&A

2006-09-27 | M&A
 中国における外資規制業種への参入を目指す一つの方法としてM&Aがあることを述べました。買収と言っても、仕組みとしてはBVI(英領バ-ジンアイランド)やケイマンにペ-パ-カンパニ-を作り、その会社から外資系企業を中国国内に作る。その外資系企業と中国独資企業が提携関係を結ぶ、という形になっており、中国国内においては、表面的には中国人の経営する中国企業の活動として見られます。ネックとなるのは、外資系企業と中国企業との間はあくまでも契約で縛っており、資本関係は持てない事にあります(49%以下とかのレベルであればよいのですが)。その為、現実に中国企業の中国人経営者と、外資企業側でトラブルが発生した時、裁判で本当に勝てるのか、実質的に違法な行為をこの外資系企業が行っているものとみなされ、フリを被らないか、等のリスクを100%払拭する事は出来ません。

 そして、買収する対象となるのは中国国内の企業ではなく、その企業を保有するタックスヘイブンにある持ち株会社の持分の売買と言う事になります。IT業界等は欧米系を筆頭に様々なベンチャ-キャピタルが投資していますが、その投資の際に中国国内企業から外商投資企業へのスキ-ム変更を行っているようです。

 こういうスキ-ムを最初に考えた人は非常に頭が良いと思わされますが、一般的に見られる事例では、中国人が自分の会社を作り、その会社を米国や香港等の海外で株式公開する、もしくは第三者に売却する事が始まりだったのと想像します。

 ご存知の方も多いでしょうが、中国の個人所得税は年収で10百万円を超えると非常にラフですが35%,18百万円を超えると45%となり、日本ほど所得控除がありません。その為、事業を展開してお金を持っている中国人は海外のタックスヘイブンに会社を作り、自分の企業をその下につけて、中国国内の税金を逃れています。このような仕組そのものも会社設立代行業者が行っており、業種や資本金規模により異なりますが、安ければ30万円程度から設立することができます(日系コンサルだと単純に日本からの外商投資企業設立だけで100万円近くするみたいです。実際には地元の下請け業者にやらせているのですけど、日本人コンサルが日本人への説明を丁寧におこなっていますので、こういう値段になるのでしょうね)。

 中国国内は、おそらく日本よりもM&Aに積極的です。レノボがIBMのパソコン部門を買収したとか、カザフスタンの石油会社買収、アメリカの石油企業を買収私用としたなど、最近新聞をにぎあわせています。日本でも、工作機械の池貝や、秋山印刷を上海の企業が買収しています。

 中国企業のアウトバウンドの買収の場合は、ブランド獲得、資源獲得、技術獲得の大きく3つを目的としているようです。資源に関しては今後の中国経済の成長を支えるボトルネックの一つが石油等資源の不足にある、技術も、これだけの急成長を遂げながら輸出もGDPも半分近くを外資系企業が稼いでいると言う外資依存状態を脱却したい、等等お国を上げての取組みのようにも思わされます。

 一つ気に入らないのは、中国政府も企業も、中国のばら色(疑問視もありますが)の大きな市場を旨く見せながら、アメリカの株式市場で資金調達したり、米系金融資本から投資を集めたりして、その資金を元に海外企業を買収しようとしているように見受けられることです。日本の場合、ネット系の株価が世界的に見ても奇妙に高い反面、十分に優良な製造業企業の株価が安く、また、再生案件等も結構あることを懸念します。海外企業の日本企業買収に関しては、表面はともかく実質的に色々な規制があると聞いていますが、他人の技術を盗んで自社で研究開発をしない企業に、今まで蓄積した日本企業の技術ごと買われてしまうことを懸念します。



 
 
  

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