亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

激増した中国のゴールド輸入、足元で急騰する上海プレミアム

2023年02月27日 20時49分01秒 | 金市場

先週金曜日は関西出張中だったが、本日24日の更新分を見てタイトルに掲げた上海ゴールドのロンドン価格に対するプレミアム急騰の部分が、貼り付ける際に抜け落ちていたことに気づいた次第。。いやはや、やり直しということで。

 

中国とゴールドに関して足元で注目すべき動きが見られている。

このところ中国国内(上海黄金交易所)の金価格がロンドン現物価格に対し1トロイオンス(=31.1035グラム)当たり30ドルを上回る状態となっている。これはかなり高いといえる。中国国内で現物が品薄になっていること、すなわち買い意欲が強いことを表す現象といえる。

NY金でみて今月に入り先週24日まで約120ドル、6.6%下げているゴールドだけに、バーゲンハンティング(安値拾いの買い)と理解できるが、違和感がある。

誰が買っているのかという点だ。

というのも中国の需要期は(今年は)1月下旬の春節を挟んだ時期にピークを打ち、今や下火になるタイミングだからだ。

 

実は昨年も、上海ゴールドのプレミアムの上昇が夏から秋にかけて見られたが、確たる背景が見えず不思議だった。一方で7月以降中国の金輸入額が増えていることが後追いのデータで明らかになるのだが、昨年下半期を中心に中国の金輸入額は前年比で60%ほど増えることになった。

金額ベースでは766億ドルにもなるが、現時点のドル円で換算すると日本円で10兆4000億円を超える規模になる。重量換算では少なく見積もって1330トンに上る。驚きの数字になる。

一方、22年の中国の金需要は宝飾品と地金・金貨を合わせて789トン(ワールド・ゴールド・カウンシル調べ)と前年比18%減となった。それはそうだろう、ゼロコロナ政策で大都市上海など街に人が居なかった時間が長く続いていた。輸入されたゴールドはどこへ行ったのか。

当然、以前から金市場を見ていたり、金融市場に関心がある人なら中央銀行である中国人民銀行が思い浮かぶ。

それは間違っていないが、間違いでもある。なぜなら人民銀行は昨年12月から国際通貨基金(IMF)へのゴールドの保有量の届け出を3年3カ月ぶりに再開し、この間に76トンほど保有量が増えていることが判明しているからだ。 ならば余ったゴールドはどこに行った?

おそらく国有4大商業銀行の持ち分になっているだろう。

決算期には販売用の在庫として計上されるものと思われる。

中国では金地金や金貨また金製品まで銀行の窓口で買えるし、自分も試しに中国工商銀行上海分行にて10グラムの金貨を実際に買ってみたことがある。ちなみに干支の置物など銀製品も銀行の窓口で買えるが白金(プラチナ)は扱っていない。

話を戻すと、国有商銀の保有分は政府の保有を意味し、早晩、人民銀行に移されることになるだろう。

データでは、昨年の中国は米国債の持ち分を20%ほど減らし、8670億ドルになっている。最近指摘されるように、ロシアに対する経済制裁や米中関係の悪化により誰もがドル離れを思うだろうが、それは現実に起きており、今に始まったわけではない。それは2009年に遡る。

 

長くなるのでまとめると、昨年2000億ドルからの米国債を減らした中国だが。外貨準備の通貨ポートフォリオの見直しに入っており、その内容は時間の経過とともに表面化するだろう。その一つの矛先がゴールドに向けられているわけだ。

下げたとはいえゴールドは、銀やプラチナほど下げていない。以前から言うように「王道行くならゴールド」銀やプラチナは目先のトレードが好きな人(投資家)向きと思う。

 

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