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「原子力村」の結びつき 最高裁判事と巨大法律事務所と国 東電代理人事務所に天下り

2024年03月12日 | 社会・経済

ジャーナリスト 後藤秀典さんに聞く

「しんぶん赤旗」2024年3月11・12日

 最高裁判事と巨大法律事務所と国、「原子力村」が結びつき、司法の「公平らしさ」を損なっているのではないか―。原発事故被災者の取材とともに、この結びつきを明らかにしてきたジャーナリストの後藤秀典さんに聞きました。(三木利博)

 ―調べるきっかけになったのは?

 後藤 原発避難者訴訟の原告が裁判で東京電力から攻撃されていることを雑誌に一昨年、連載しました。それを読んだ、高裁判事を長年務め司法行政を取り仕切る最高裁判所事務総局に勤務した経験のある弁護士から、最高裁と巨大法律事務所と東京電力が結びついていると聞いたことからです。最初はぽかんとしました。少なくとも司法の独立性はそれなりに担保されているのではないかと考えていたからです。ところが調べると、500人以上の弁護士を抱える巨大法律事務所が最高裁に判事を送り出し、退官した判事が巨大法律事務所に天下りすることが当たり前のように行われていた。こんなことで公平・公正な裁判が担保されるのか、驚きと怖さを感じました。

「肩すかし判決」

 ―2022年6月17日、東電福島第1原発の事故を巡って4件の損害賠償訴訟で国に法的責任はないとする最高裁判決が出ました。後藤さんは、判決を出した4人の判事のうち菅野博之裁判長が翌7月に定年退職し、8月には巨大法律事務所の顧問に就任したことを明らかにしました。

 後藤 6・17最高裁判決の内容を端的にいうなら、福島第1原発事故について“想定を超える大きな津波が来たので、たとえ事故前の予測に基づいて国が東電に命令し、東電が防潮堤などを造る対策を取ったとしても、過酷事故の発生を防げなかった。だから国に責任はない”というものです。高裁まで原告と被告が議論をたたかわせ積み上げてきた争点―大津波の予見可能性を示した国の地震予測「長期評価」の信ぴょう性―などの判断を避けた「肩すかし判決」といわれています。その後、この判決がまっとうだと論評したものをほとんどみかけません。

2カ月たたずに

 判決を担当した最高裁第2小法廷の4人の判事のうち、裁判長はじめ3人の判事が判決を支持し、検事出身の三浦守判事だけが国に責任があると反対意見を述べました。

 裁判長だった菅野氏が顧問に就任した長島・大野・常松法律事務所の弁護士は、東電の旧経営陣に賠償を求めた東電株主代表訴訟で東電側の代理人を引き受けています。元裁判官の樋口英明氏は、最高裁は下級審の裁判官に対し「公平らしくあれ」と言う、その意味は「公平であるのは当然であり、その公平性が外からも見えるように注意しなさい」ということだと述べています。6・17判決で一方の被告だった東電をクライアント(依頼人)にする法律事務所に、判決から2カ月もたたないうちに顧問になるのは「公平らしく」はみえないのではないか。国に責任がないという判決を出した岡村和美判事も弁護士になって最初に所属したのが長島・大野・常松法律事務所の前身。草野耕一判事は判事になるまで、別の巨大法律事務所の西村あさひ法律事務所の代表経営者を15年務めました。

最高裁の活動も見極めを

 ―巨大法律事務所と裁判所、原子力関係企業とのつながりはこれにとどまりません。長島・大野・常松法律事務所の元顧問の横田尤孝(ともゆき)氏は元最高裁判事で16年から、青森県六ケ所村で使用済み核燃料の再処理事業を担う会社の日本原燃の社外取締役です。また西村あさひ法律事務所の現顧問で元最高裁判事の千葉勝美氏が22年、福島原発事故の損害賠償訴訟で東電が上告するにあたって東電の代理人から依頼され最高裁に対して意見書を出しています。

 後藤 元最高裁判事が個別の事件に関与するのはタブー視されていたのです。その内容ですが、高裁で争点だった「長期評価」は“多面的な評価が成り立つので、これを信用しないで対策をたてなかったから事故を防げなかったとはいえない”という、東電の責任だけでなく国の責任も否定する内容です。千葉氏は最高裁判所事務総局時代、6・17最高裁判決を出した裁判長の菅野氏を指導する立場にありました。事務総局は上下関係がしっかりしています。

 加えて、西村あさひ法律事務所の共同経営者の新川麻弁護士は東電の社外取締役に就任しています。責任がないとした3人の判事はいずれも東電や国に関係が深い巨大法律事務所に関係しています。

原子力規制庁も

 ―驚いたのは、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁と、原子力関係企業、巨大法律事務所の関係です。

 後藤 東電と国を相手にした「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」の一審で国側の指定代理人を務めた前田后穂(みほ)弁護士は、控訴審で今度は東電側の代理人になりました。前田氏は、一審判決が出る1カ月前に原子力規制庁を退庁し、巨大法律事務所のTMI総合法律事務所に所属。電力会社を規制する側にいた職員が、規制される側の代理人になるのは問題がないのかと思います。

 調べると、この法律事務所に2015年入所した森川久範弁護士は17年に原子力規制庁に移り、20年に再びTMI総合法律事務所に戻っています。この2人は大飯原発の差し止め訴訟などで国側の代理人を務めました。

 また小林勝氏は、原子力規制庁の安全規制管理官(地震・津波安全対策担当)などを歴任し、22年に規制庁参与をやめたとたん、この法律事務所の参与になりました。小林氏は事務所のホームページに「このような経験を、原子力分野のクライアントの方の信頼や満足を得るような提案につなげられるよう努力させていただきます」と書いています。この法律事務所は各地の原発避難者訴訟で東電側の代理人を務めています。原子力規制委員会設置法付則には、規制の独立性を確保する観点から「職務の執行の公正さに対する国民の疑惑又は不信を招くような再就職を規制することとするものとする」とあります。これに当たるのではないか。

お墨付きの影響

 6・17最高裁判決は、昨年成立した政府の原発推進5法(GX=グリーントランスフォーメーション=脱炭素電源法)を含め、原発回帰政策にお墨付きを与えました。そして全国の避難者の損害賠償訴訟に大きな影響を与えています。最高裁判決前の高裁判決で国の責任があるとしたのは3件、責任がないとした判決が1件で「国に責任あり」が多数派でした。ところが最高裁判決を契機に昨年から今年にかけて国を相手にした六つの高裁判決はすべて国に責任がないと変わってきている。去年12月の千葉第2陣訴訟の判決は、最高裁判決の内容を一言一句変わらず引用しており、「思考停止している」と批判されました。公正な審議を尽くす最高裁に変えていくことが最大の課題になっていると思います。

 裁判官も世論を気にしています。一人ひとりの最高裁判事の姿勢や経歴、退職してどこに所属するのか、国民が関心を持つ必要があると思います。最高裁の活動を見極めないといけない時代になっているかもしれません。(おわり)

 ごとう ひでのり ジャーナリスト 1964年生まれ。テレビの報道でディレクター・プロデューサーを務める。NHK「消えた窯元10年の軌跡」、「分断の果てに“原発事故避難者”は問いかける」(貧困ジャーナリズム賞)など。著書『東京電力の変節―最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』(貧困ジャーナリズム大賞)。


これでは裁判を起こしても「負け」。
自分の「良心」と「憲法」にのみ服従しなければならない立場を「回復」してもらいたいものです。
そのためにも国民の「目」が必要です。
「国民審査」にも関心を持ちたいです。



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