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日本の「家族」に何が? 

2023年08月05日 | 事件

“札幌遺体切断事件”の衝撃 家庭内で噴出する猟奇的で残虐な事件

AERAdot 2023/08/02

北原みのり

 

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、家庭で起きる猟奇的な「家族の事件」について。

 

 女友だちが青ざめてこんな話をしてくれた。

 元カレの妻、という人からある日LINEにメッセージが入っていた。元カレのアカウントからである。

「○○の妻です。あなたのことは○○から聞いてます」

 あまりに怖くてすぐにブロックしたそうだが、それでも不安が募っているという。彼女がその男と恋愛関係にあったのはもう何年も前、男が結婚する前のことだ。ところが男が半年前に結婚してから、週に数度のペースで男からLINEが送られてくるようになった。内容はほぼ全て、妻にフライパンで殴られている、後頭部を蹴られている、ナイフを突きつけられている、炎天下のベランダに出されている、食事を与えられない……という虐待の記録である。1度はナイフを突きつける妻の手を払ったところ「骨が折れた」と大騒ぎになり(折れていなかった)、警察に通報されたこともあったという。

 どこまでが本当のことかは分からないが、朗らかで誰にも優しく(そしてとても優柔不断)、人気者の男だったはずが突然会社を辞めたり、昔からの人間関係を次々に切ったりするなど、悪い方向に変化して結婚生活に問題があるのは明らかだった。もちろん彼女は友人として「結婚を終わらせるしかない」とアドバイスをし続けたのだが、その度に彼は「彼女は間違っていない。彼女は可哀想なんだ。お前みたいな強い女には分からない。彼女は1人では生きられない。可哀想なんだ」とだいぶ失礼な方法で妻をかばい、「それは虐待だよ、逃げるしかないんだよ」とこちらが言い立てるほど、妻からの洗脳が深まり固定化していく……というような状況だったという。

「友だちとも家族とも縁が切れてる状態だから、何年後とかに、○○区の民家で白骨死体が発見とかいうニュースにならないか、心配なんですよね」

 いつか生死に関わる事件に発展してしまうのではないかと不安だが、何もできることもないですよね……と彼女は言った。

 事件の多くは家庭内で起きている。

 性暴力の多くも家庭内で起きている。

 家族というのは、底なしに暴力的になれるものだということを私たちは様々な事件から知ってはいるはずだが、それにしても、最近の日本で起きている「家族の事件」というものは、もはや乱世の世、羅生門ばりの凄まじさを見せているようにすら思う。

 6歳の子を母親や叔父ら家族4人が殺し、スーツケースで遺棄したとされる神戸の事件は、加害者の残虐性が際立っていて言葉を失うあまりだったが、感想を述べることすらためらわれるレベルで想像の限界を超える猟奇・残虐・暴力性の高い事件が家庭内で噴出している。

 また今年3月には、大津地裁で、57歳の女性が同居中の25歳男性に食事を与えず、大やけどを負わせるなどして死亡させた事件の判決があった。共犯者は21歳の彼女自身の息子で、殺されたのは女性のボーイフレンドだったという。彼女には他にも別の3人の同居男性に対する傷害罪もある。口に食パンを詰め込み窒息させるなどして、脳に障害が残ったという記録もある。私はこの事件が気になって、加害者の実家があった広島まで行くなど個人的に調べていたのだけれど、これほどの猟奇的な事件ですらワイドショーや全国紙が深く掘り下げないほど、今の日本はこんな猟奇的で残虐な家族内事件に溢れているということなのかもしれない。

 歌舞伎役者の猿之助被告の両親に対する自殺幇助罪についても事件の解明が待たれる……と、一応「定型」の言葉を使ってみるが、「事件の解明が待たれる」などということなどあるのだろうか……とどこかで諦めるしかないのが、家族内事件である。家族関係があるからこそ、日常を共にする家族だからこそ加速化される暴力。狂気を含み、猟奇的ともいえるあまりに内省的な思考は、なぜ家族内で熟成されてしまうのだろうか……ということを社会が思考しなければ、このような家庭内の事件はなくなることはないのかもしれない。

 家族内事件、その極めつきが、今、世間をにぎわしている「木原事件」と「札幌首狩り家族事件」だろう。どちらも「週刊文春」のタイトルから取ったものだけれど、文春の身も蓋もないタイトルには目が離せない。「首狩り家族」の文字を見たときは目を疑ったが、殺人の送り迎えをするような父親、切った首を自宅に持ち帰ったことを認識していたという母親など、いったいここに至るまでにどのような会話が、どのようになされていたのか想像を絶するものがある。ただこの事件、単純な「猟奇」というよりは、男性から暴行を受けたという話が一部報じられている。もし事実だとするならば、精神科医であり、患者から信頼されていたという父親が、医療にも法にも頼らず、つまり一切の公助を頼らず、家族だけで、つまり究極の自助で解決をしようとした点が、時代を象徴するようにも感じられる。なぜそこまで絶望できたのか、極端の選択を選ぶまでに何があったのか。

 また木原官房副長官の妻の前夫の死にまつわる事件=文春によれば「木原事件」は、週を重ねるごとに、記者自身も想定していた域を超えた凄まじい内容になっている。自殺として処理された前夫の事件に「事件性がある」と再調査が行われた際、妻が重要参考人として警察に呼ばれたこと、結果的に「事件性がない」と警察庁長官が発表したが、そのことに「自殺を示す証拠はない」「事件性がある」と真っ向から反論をはじめた元捜査員の登場など、目が離せない状況だ。現職の官房副長官が「巻き込まれた」事件が今後どのように発展するのか分からないが、これも結局は家族の話である。家族の話であり、男女の話であり、合理的な判断や理屈を超えた「家族の事件」である。

 すごい時代を生きていると思う。結婚は愛の象徴のように語られ、家族愛こそが正義・善であるかのようにうたわれ、敵は家族の外にあるかのように喧伝される社会で、家族の中で起きる殺意、暴行、虐待はエスカレートしているようだ。何年に1度起きるか起きないか、日本中が注目するレベルの衝撃度の高い猟奇的な事件がここまで続くと、これはもう「日本社会」の問題でしかない。日本の家族に何が起きているのか。それこそ、「真相の解明が待たれる」。


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急に寒くなった。今日も22℃止まり。