里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

雨宮処凛 生きづらい女子たちへ なぜ、セクキャバに行った彼はDV加害者プログラムへ通うのか

2021年12月07日 | 生活

imidas連載コラム 2021/12/07

 本連載前回の「なぜ、『妊娠させた男』の罪は問われないのか」に引き続き唐突だが、男性に問いたい。

 ある日突然妻に、「あなたのしていることはDVだから加害者更生プログラムに行ってほしい」と言われたらどうするだろうか?

 ちなみにあなたは一度だって妻に手をあげたことはない。というか女性に暴力をふるうなんて最低最悪のクソ野郎だと思っている。それなのに、よりによって自分が「加害者」と言われ、犯罪者でもないのに「更生プログラム」に行けと言われるなんて……。

 戸惑うあなたに、妻は「行ってくれないと離婚する」の一点張り。一体、なんなんだ……?

 さて、こんなことを突然書いたのは、DVをめぐり、非常に考えさせられる対談を聞いたからだ。

 それを紹介する前に、私がずーっとモヤモヤしていることについて書いておきたい。それは、この国の「夜の世界」をめぐるもろもろだ。

 例えば、日本は世界でも有数の風俗大国であるということ。これほどに、男性が安全に、安く買春できる国はないというのが世界の常識であること。風俗だけでなく、キャバクラなど接客業も異様なほどに充実していること。その中には、「男同士の親睦を深める」ための「おっぱいパブ」なんかも存在していること。

 そんな「男向け娯楽」の多さを思うと、女性をあらゆるやり方で商品化し、男性に「癒やし」を提供するこの国の「男社会」の盤石さに、ため息をつきたくなるのは私だけではないはずだ。

 なぜなら、その逆の「女性が安く安全に買春できるシステム」なんてないし、女同士の親睦を深めるための「おっぱいパブの男版」(どういう名前になるんだろう? 怖くて想像できない)もない。「ホスト(ホストクラブ)があるだろ」と言っても、サラリーマンでも行けるキャバクラと違い、女性の平均年収293万円(女性・男性共に給与所得者 : 国税庁、2020年)では、キャバクラよりずっと高いホストになど行けるはずもない。ちなみに男性の平均年収は532万円。また、働く女性の半分以上が非正規だが、こちらの平均年収は153万円。

 別にホストに行きたいわけでも買春したいわけでもまったくないが、そういう非対称性が話題にすらならないところに、根深い何かがあるのだと思う。

 そうして男性議員が銀座のクラブに行ってもコロナ禍でない限り話題にもならないものの、女性議員が歌舞伎町のホストに行ったら、コロナ禍以前でもメディアは騒ぎ立てるだろう。

 一方、自分の妻や彼女がホストに行ったら怒る男性は多いと思うが、では自分がキャバクラに行くことを妻や彼女に咎められたらどうだろう? 「理解がない」などとキレ、「男同士の付き合い」で「仕事のために必要」という大義名分を持ち出してくるのではないだろうか。    

 それだけじゃない。この国にはずーっと昔から、同僚との付き合いで風俗に行くことはおろか、海外へ買春ツアーに行くことさえ妻に容認させるような業界も一部存在している。

 が、表立っては何も言わない場合でも、多くの女性は、彼氏や夫が「女性が接客する店」に足繁く通うことを快くは思っていないはずだ。しかし、「夫にキャバクラに行ってほしくない」なんて口にすれば、時に女性からも「それくらい仕方ないよ」と言われたりするだろう。

 でも、キャバクラといっても、身体的な接触を伴う接客がなされる店だったら? もしくは、風俗だったら?

 どこまでがOKでどこからがアウト案件なのか、判断に悩む女性も多いのではないだろうか。「自分に理解がないだけでは」「許容範囲が狭すぎるのでは」「仕事のためなら仕方ないのでは」などと悩む言葉もよく耳にする。

 さて、そんなモヤモヤに対して、最近、ものすごく明確な答えをもらった。

 それは、ある政党の決起集会でのことだ。

 ある政党とは、山本太郎氏率いるれいわ新選組。衆議院選挙を間近に控えた10月9日、東京・豊洲で決起集会が開催され、貧困問題についてのレクチャー役を依頼されて登壇したのだが、この日、非常に貴重な対談を聞くことができたのだ。

 対談に登場した一人は、衆議院議員(当時)の高井たかし氏。高井氏は10月にれいわ新選組に加入したのだが、20年4月、所属していた立憲民主党を除籍になっている。その理由は、緊急事態宣言中、セクシーキャバクラに行っていたことが週刊誌で報道されたから。

 この高井氏がなぜ、れいわ新選組に入ったのかと言えば、経済政策で方向性をともにする山本太郎氏が誘ったのだという。その際、「やり直しができない人生なんてない。どんな失敗をしてもやり直しできる日本を一緒に創りましょう 」と言われ、高井氏は号泣。続けて、山本氏は言ったという。

「でも、やり直すためには自分の過ちを心から反省し生まれ変わらなければだめです。そのために『DV加害者プログラム』を受けてみませんか?」

 この言葉を聞いた高井氏は、「DVを行ったわけではないのに…」という気持ちがあったという。しかし、プログラムを受けることにした。

 このプログラムでコーディネーターをしていたのが、この日の対談相手である吉祥眞佐緒(よしざきまさお)氏。長年DV問題に取り組む女性であり、加害者プログラムで多くの加害者更生を支援してきた人である。また、山本太郎氏に、国会での質問づくりのため、DV問題をレクチャーしてきた人でもある。

そんな吉祥さんと私は、コロナ禍でともに女性支援をする仲だ。21年3月と7月に開催された「女性による女性のための相談会」では一緒に相談員をつとめたのだが、彼女の長年の女性支援の経験に、どれほど助けられたかは一言ではとても言えない。とにかく、吉祥さんは私が最も尊敬する支援者であり、またDVをなくすための活動に日々取り組む実践者なのである。

 そんな吉祥さんと高井さんの対談は、発見の連続だった。

 まずは高井さんから、当初は「自分はDVをしたことがないのに、なぜ加害者更生プログラムなのか」という戸惑いがあったことが語られる。それでも、毎週土曜日、夜7時から9時まで 、1年間プログラムに通い続けたという。

 そんな高井さんをずっと見てきた吉祥さんは、最初にDVの基本的なことを話してくれた。

 内閣府の調査 (内閣府男女共同参画局『DVの現状等について』、2020年11月27日)によると、結婚している女性のうち、実に3人に1人が配偶者からの暴力被害の経験があり、7人に1人は何度も被害を受けているという。

 そんな吉祥さんが強調したのは、DVは身体的暴力だけではないということだ。

 例えばパートナーを対等な存在として扱わず、軽く見ることは精神的暴力(モラルハラスメント)である。

 十分な生活費を与えないなどは、経済的DV。

 また、夫婦間でも同意のない性行為は性的暴力。

 ここまでは有名な話だが、「じゃあ別れればいいじゃん」という話ではない。内閣府の調査によると、DVがあっても別れた人はわずか1割。子どもがいれば、離婚へのハードルは高くなる。だからこそ、多くの女性が望むのは「夫が変わってくれること」。そのために加害者プログラムがあるのだ。

 吉祥さんは言った。

「高井さんがプログラムに通うきっかけになったのは、パートナーが行ってほしくないと言っている“女性が接客する店”に行ったことでした。『仕事だし付き合いだし、自分は国を動かす大きな仕事をしてるんだからそんな細かいことを言ってもらっちゃ困る』とパートナーの訴えを聞いてこなかった。それが加害者プログラムに通う大きな要因だったんです。高井さんはそのことで党を除籍になって、議員をやめようというところまで追い詰められました 。パートナーが『行かないでくれ』というところに、『わかった、あなたが嫌がるなら行かない。そういうところに行かなくたって政治の話、仕事の話はできる』と生活していたら、こんなことにはならなかったんです」

 吉祥さんが言う通り、この場合、パートナーの気持ちをないがしろにしていたことがモラルハラスメントになっていたのだ。

 さて、ここで男女関係なく、問いたい。あなたは、パートナーが嫌がる行為を「これくらいいいじゃん」「カタいこと言うなよ」などと言いながらやってしまったことはないだろうか。相手の気持ちをないがしろにするそのような行為も「DV」にあたるということを、私は吉祥さんの話を聞くまで、はっきりとは認識していなかった。

 そして思えば、私自身、「してほしくない」と伝えた行動が、相手によって何度も破られた経験を持っていることに気づいた。その相手とはもうとっくに別れたのに思い出すだけで辛いのは、「自分が軽視されている」ことに気づいていて、そのことに当時も深く傷ついていたからなのだろう。だけどその頃、私はそれが「DV」の一つのケースにあたる可能性があるだなんて、まったく認識していなかった。それどころか、「こういうことをしてほしくない」と伝えることで、「理解のない女」「束縛女」扱いされ、嫌われてしまうのではという恐怖だけがあった。

 さて、吉祥さんによると、社会的地位の高い男性が家庭をおろそかにするケースは非常に多いという。

「そういう人こそ、家庭の中で横暴に振る舞い、パートナーを軽視しているケースが多い。高井さんが生まれ変わるには、一番小さい組織の単位である家族の中でパートナーを大事にする。聞く耳を持つ。そういう人にならなければ、国を動かし政策を作る重要なところで、『誰一人取り残さない政治』ができるわけがないと思いました」

 まったくもってその通りだ。

 高井氏はブログ で、〈私の中で最も欠けていたのは「パートナーを思いやる気持ち」と「コミュニケーション」であることがわかりました〉と書いている。文章は、以下のように続く。

〈勉強を重ねていくうちに、日本の男性のほとんどが、実は「DV的発想」を心のどこかに持っているのではないか、と思うようになりました。

 その原因は、子どもの頃から見てきた、教えられてきた「男尊女卑的発想」にあると思います。

 私の経験で言えば、正月やお盆に親戚一同が集まると、食事の準備や片づけは全て女性だけが行い、男性はただ飲んだり食べたりしているだけでした。日本ではそれが当たり前だと、子どものころから刷り込まれていたように思います。

 多くの日本男性の心の中に潜む「男尊女卑的発想」を根本から変えない限り、ジェンダー平等は実現しないと思い至りました。

 既に1年以上通っていますが、まだまだ学びは道半ばです。でもこのプログラムを続けていけば、DV問題だけでなく、ジェンダー問題全般に対する理解が深まり、政策に活かせる気がしています〉

 吉祥さんによると、高井さんはこの1年間、ほぼ皆勤賞でプログラムに参加し続けてきたという。が、まだ「卒業」ではないそうだ。

「1年間通って、自分の考え方に問題があったと気づいたばかりです。ここで告白したことで禊ぎ終了ではない。みなさんどうぞ高井さんを見守ってください」

 続けて、高井さんも言った。

「最低1年、52週通って、パートナーのOKが出たら卒業できるルールと聞いて、『1年か……』と思ったんですけど、1年じゃとても変わらない。一緒に学んでる仲間は4、5年とか、長い人だと10年以上、毎週土曜、通っています。とてもDVをしたとは思えない人が今も通っていて、大きな学びを頂いています」

プログラムの「卒業」ルールの厳しさに驚いたが、それでも、誠実に話をする高井さんを見ていると、応援したい気持ちになった。

 なぜなら、高井さんには「逆ギレする」という選択肢もあったからだ。

「なんで合法の店に行っただけでDVとか言われて加害者プログラムなんて行かなきゃいけないんだ、みんなやってることじゃないか、ふざけるな」

 そんなふうに開き直る選択だってあったはずだ。というか普通、多くの男性は「あなたのやっていることはDVだ」と指摘されるとキレる。もしくは無視する。しかし、彼は「DVはしていない」と思いつつもそれを受け止め、1年間、徹底的に自分を見つめ直した。

 私の知人男性に、吉祥さんと同じようにDV加害者プログラムの講師をしている人がいる。その男性に、このプログラムは非常に高い人間性を求めていると聞いたことがある。自らを振り返る作業は決して楽ではないだろう。しかし、たどり着いた先に、生まれ変わった人々が多くいるという。

 私はこのような「回復者」の姿に、幾度も感銘を受けてきた。

 例えば覚醒剤で逮捕され、自助グループにつながったことで自らを振り返り、今、様々な形で発信している俳優の高知東生(たかちのぼる)さん。高知さんがツイッターで発する言葉が「深い」と評判だが、「仲間」とともに語る作業という意味では、加害者プログラムと自助グループには共通点がある気がする。

 高知さんだけでなく、私がこれまでの人生で最も感動させられてきたのは、なんらかの事情で「どん底」に落ち、その後、自助グループなどにつながって復活した「回復者」である。その人たちの言葉は、優しく、深く、鋭く、そして人間への深い理解に満ちている。

 高井さんは今回の衆院選で落選したが、当選したら、おそらく日本で唯一の「加害者プログラムを受けた男性議員」だ。ジェンダー問題に対して、どんどん発信してほしい。

 最後に。加害者プログラムを受けるべきは、高井さんだけではない。まずは永田町で、全男性議員にプログラムを受けてほしい。最低でも、みっちり1年間。

 そこからしか、日本社会は変わらないと思うのだ。


 昨夜から今朝にかけてかなりの雨が降ったようだが、調べてみるとあまり降っていない。わたしの周りだけなのか?確かにトタン屋根にぶつかる雨音を聞いたのだが。おかげで雪もかなり消えた。

こちらの園地に来るまで、ほとんど雪は消えているのに、ここと居住地だけしっかり残っている。