新型コロナ 自宅療養中の過ごし方、注意したい異変、問い合わせした方が良い症状の目安
忽那賢志 | 感染症専門医
YAHOOニュース(個人) 1/16(土)
新型コロナウイルス感染症患者の爆発的な増加に伴い、感染者でも自宅療養やホテル療養となる方が増えています。
本来は重症化リスクの低い方が自宅療養の対象となっていましたが、現在は入院先が見つからないなどの理由で重症化リスクが高い方も自宅療養となっている地域があります。
自宅療養中、どういった症状に注意すれば良いのでしょうか。
どんな人が自宅療養になる?
これまでは新型コロナと診断されたら原則入院となっていましたが、2020年10月14日に運用見直しが行われ、無症状・軽症の新型コロナ患者は入院勧告・措置の対象ではなくなりました。
現在、入院勧告・措置の対象となるのは、
・ 高齢者、呼吸器疾患等の基礎疾患があるなど重症化リスクのある者
・ 症状等を総合的に勘案して医師が入院させる必要があると認める者
・ 都道府県知事が入院させる必要があると認める者
等に該当する方です。
入院とならなかった場合は、ホテル療養、自宅療養のいずれかとなります。
ただし、現在東京都など新型コロナの感染者が急増している地域では、本来はただちに入院することが望ましい方でも入院先が確保できず自宅療養を余儀なくされている方が多くいらっしゃいます。
報道では、1月16日時点で全国の自宅療養者は3万人を超えているとのことです。
自宅療養中は原則として外出はできません
新型コロナと診断され入院ではなく「自宅療養」となった場合も、人にうつす可能性があります。
具体的には発症3日前から発症5日後くらいまでは特に感染性が強く、軽症の方でも最大10日目まで人にうつす可能性があると言われています。
これを踏まえて自宅療養の期間は、
・発症から10日経過かつ症状軽快から72時間経過
となっており、最短で発症から10日間までは自宅療養となります。
この期間が過ぎ保健所の指示があるまでは人との接触を避けるため外出はしないようにしましょう。
自宅療養中の健康管理
新型コロナウイルス感染症の初期症状は風邪やインフルエンザと似ています。
典型的には、
・発熱
・咳
・だるさ
・食欲低下
・息切れ・息苦しさ
・痰
・筋肉痛
・嗅覚障害・味覚障害
などの症状の頻度が高いとされます。
こうした症状の有無について、1日2回はご自身で確認し、1日1回は保健所に連絡するようにしましょう。
診断時点では無症状であった人でも、経過中に発熱や咳などの症状が出現することがあります。
この場合、自宅療養期間は症状の出現時を起点として最短10日となります(ずっと無症状の場合は検査日を起点とします)ので、症状が出たことを必ず保健所に伝えるようにしましょう。
自宅療養中に注意したい異変、問い合わせした方が良い症状の目安
新型コロナウイルス感染症の経過(BMJ 2020;371:m3862より イラストと頻度は筆者加筆)
自宅療養中に新型コロナの病状が悪化することがあります。
特に注意すべきなのは、発症から約1週間前後です。
この時期に「息切れ・息苦しさ」が強くなると、新型コロナが悪化している可能性があります。
我慢できないほどの/我慢できなくなる一歩手前の「息切れ・息苦しさ」が出現した場合は、なるべく早く保健所にその旨を伝えるようにしましょう。
ただし、新型コロナの呼吸不全は「幸せな低酸素症"happy hypoxia"」と呼ばれるほど、体内の酸素が極度に低下していても自覚症状が強く現れないことがよくあります。
自験例でも、入院先が決まるまで自宅療養をしていた自覚症状のない高齢者が、いざ入院してみると「重症」の基準を満たすほど体内の酸素が欠乏している状態だった、というような事例を多く経験しています。
自宅療養中の方の中から、こうした自覚症状に乏しい低酸素症の方を正しく適切なタイミングで見つけることは非常に難しいというのが正直なところです。
強いて言えば、パルスオキシメーターという血中の酸素濃度を測定する医療機器は症状が乏しい低酸素症の方も早期に見つけることができると考えられます。
保健所によっては自宅療養となった際に貸し出してくれるところもあるようですが、全ての自宅療養者が利用できるものではありません。
決して安くはありませんが、高齢者や持病のある方など重症化リスクの高い人は市販のものを購入を検討しても良いかもしれません(※筆者はパルスオキシメーターの販売メーカーとの利益相反はありません)。
その他、稀ではありますが血栓塞栓症など突然の体調不良も起こりえますので、「突然の強い胸痛や頭痛」などが出現した場合はすぐに保健所に連絡するようにしましょう。
なお、発熱や倦怠感、咳などの症状は軽症の人でも長く続くことがありますので、程度が変わらず続いているだけであれば新型コロナの自然の経過のことが多いです。
気になる症状があれば定期報告の際に保健所に報告・確認するようにしましょう。
その他の新型コロナに関する症状についてはこちらを参考にしてください。
同居者の過ごし方・居住環境の整え方
新型コロナは飛沫感染または接触感染によって広がりますが、特に3密(密閉・密集・密接)の環境で広がりやすいことが分かっています。
自宅は3密の環境になりやすい場であり、家庭内感染は最も多い感染ルートになっています。
家庭内で自宅療養者が出た場合に、同居者が新型コロナに感染せず安全に療養できるための工夫が必要です。
気をつけるべきポイントは、
・自宅療養者と同居者が接する時間をできる限り減らす
・家庭内の設備や物の、自宅療養者と同居者との共用を可能な限り避ける
・こまめな換気と手洗いを心がける
です。
新型コロナと診断され自宅療養となった方(自宅療養者)は、同居者との接触を避けるためにできるだけ個室で過ごすようにしましょう(どうしても個室が確保できない場合は、同じ部屋の中にいる家族はマスクを着用し、十分な換気を行うようにしましょう)。
自宅療養者の行動範囲は最小限とし、同居者が自宅療養者の個室に出入りする時には、マスクを着用し、自宅療養者と接する前後で手洗いを行うようにしましょう。
洗面所やトイレについても自宅療養者専用が望ましいですが、普通は無理だと思いますので、共用する場合は十分な清掃と換気を行うようにしましょう。入浴は家族の中で最後に行うのが望ましいでしょう。
自宅療養期間はリネン類(タオル、シーツなど)、食器、歯ブラシなどの身の回りのものも共用しないようにしましょう。 洗濯は自宅療養者と同居者のものを一緒に行っても問題ありません。
食事は自宅療養者と同居人とは別々の部屋でするようにしましょう。自宅療養者が使用した食器や箸、スプーンなどは通常の洗浄で問題ありません。食事で出たゴミは密封し捨てるようにしましょう。
自宅療養者の安全を確保するためには
繰り返しになりますが、現在、地域によっては入院先が確保されていない地域では本来入院が必要な方でも自宅療養を余儀なくされています。
また残念ながら自宅療養中に症状が悪化し亡くなられる事例も増えてきているようです。
自宅療養者の安全が確保されていない現状は大変危険な状態です。
医療従事者や保健所もこの状況を改善すべく努力しているところですが、本来入院が必要な方が自宅療養をしなくても済むようにするためには、現在の増えすぎている感染者を減らし、本来医療を提供されるべき人が適切に医療を受けられる環境にまで戻す必要があります。
そのためには、私たち一人ひとりが、
・できる限り外出を控え人との接触を減らす
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策の遵守を、一人ひとりが意識するようにしましょう。
忽那賢志
感染症専門医。2004年に山口大学医学部を卒業し、2012年より国立国際医療研究センター 国際感染症センターに勤務。感染症全般を専門とするが、特に新興再興感染症、輸入感染症の診療に従事し、水際対策の最前線で診療にあたっている ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:skutsuna@hosp.ncgm.go.jp、研究プロフィール:https://researchmap.jp/kutsunasatoshi
罹患者全員が入院・隔離できればいいのですが、もう限界を超えてしまいました。元気にウイルスをまき散らす無症状者をこそ隔離しなければどうにもなりません。
久しぶりのいい天気でした。おかげで今朝の最低気温は氷点下20度。布団に入ってても寒い。