旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

老健における看取り(須田啓一先生)

2012-07-11 23:34:41 | 診療
須田啓一先生はぼくの自治医大血液科時代の同僚であり、少し彼が後輩です。ここずっと「老人保健施設かみつが」に勤務しています。

論文「介護老人保健施設における看取りの医学的分析」を送ってくれました。

4年間の看取りを分析したものです。3名は病院へ転院後死亡しています。老健内での死亡が15名。3名が突然死、12名が看取り死とのことです。

突然死の群はもともと心疾患があって、心臓変化による可能性が高いと推定しています。

看取り死の方々を3群に分けています。認知症群と老衰群と合併症群(認知症の有無にかかわらず癌や肝硬変、腎不全を合併していた)に分けると認知症群は3か月くらいかけて体重が減り続ける。老衰群は死亡前2週間わずかに減少。合併症群は疾患により体重変化はいろいろだったそうです。

15例すべて経管栄養はしなかったそうです。警官栄養による状態改善のエビデンスはないからとのことです。

老健での看取りの可能性は家族の意向によるところが大きいようです。末期であることを受容し、積極的治療法の限界を知り、慣れた環境での継続を望むことがポイントのようです。

福祉施設入所者に診療に大きな示唆を与えてくれる論文です。


日本医学会会長表敬訪問

2012-07-10 23:00:16 | 学会活動
午前中診療を終え、上京しました。

プライマリ-ケア連合学会の新旧理事長で日本医学会会長高久史麿先生に表敬訪問しました。

話題は総合医問題でした。30年近く前のことも話されました。最近も日医のスタンスが難しいようでした。

来週は日本専門医制評価認定機構をお訪ねします。

帰りがけに同じ建物の中にある日本医師会長横倉義武先生に御挨拶のみいたしました。

今後の展望は丸山理事長とも練って進めていきたいと思います。

柴田洋美さんの活躍

2012-07-09 23:45:43 | 学会活動
PCAT(プライマリケア for オールチーム;PC連合学会震災支援プロジェクト)活動の中で、母子保健部分をPCOT(Primary care obstetrician team)として進めてきました。

最初は日本助産師会、東京都助産師会と学会が共同で進めてきたのでしたが、やがてPCOTの柴田洋美助産師のみが活動するようになりました。

震災直後は高齢者ケアが注目されてきましたが、妊婦さんや子育て中の母親支援がほとんどなされない状況でした。そこでPCAT支援に来てくれていた産婦人科医や助産師さんたちが立ち上がったのです。

柴田さんの活動は「東日本大震災被災地での長期的な支援助産師の活動」として『助産雑誌』6月号に報告されています。

既存のサークルの再出発、地元リーダーの再生、柴田さんは東松島市ばかりか、石巻市、女川町まで活動を広げてきました。

本来は行政の仕事かもしれません。今後は宮城県に対しても提言をまとめてもらいたいと願っています。

PCAT本部会議

2012-07-08 23:55:42 | 学会活動
やめるべきか続けるべきか悩んでましたが、PCAT本部長続投です。

続投が決まってから初めての本部会議です。

丸山理事長からは寄付金の使用使途、仕事の目的明確化などの提言がありました。

現在の活動の中心は気仙沼市本吉地区の病院診療支援です。指導医が二人体制になり、後期研修医を受け入れやすくなっているのですが、9月からの派遣医がゼロになります。PR用のDVD作成など対策を練ると同時に研修の意義を再検討しなければなりません。

石巻市開成診療所はまだ患者が少ないとのことですが、長先生のプライマリヘルスケアの考え方での展開は学ぶところが大と思います。

いずれにしてもこの2か所は近々に訪ねたいと願っているのですが、日程調整が難しいです。

宮城県山元町の保健活動はITが機能しないようです。また広島大学の企画と町のニーズにズレが生じているようです。柔軟な対応が求められます。

東松島での子育て支援活動は来年3月までだそうで、終息の仕方を考慮する段階に入ってきました。


リハビリテーションの深み

2012-07-06 23:10:20 | 読書
発達障害のリハビリテーションに心血を注いで、未知の世界に光を当てたのは人見眞理「発達とは何か リハビリの臨床と現象学」です。

以下、その主張の一部を紹介します。


私たちは心を見えないもの、身体を見えるものと勘違いしている。

身体の見えない事象に注目すると、身体の緊張、バランス感覚、姿勢制御、身体内感などがある。

発達ということも、観察者から見ると変化、能力の獲得と見えるが、本人にとっては感じとる働きや記憶の再編がなければ能力の獲得に至らない。

身体に固有の特徴を姿勢制御、重さ、身体運動感、身体イメージ、身体内感(身体があるという感じ)、気づきの6点を考える。これらのうち、身体運動感、身体内感、気づきが行為の調整能力である。

これらの感じ方を尊重して脳性麻痺患者のリハビリテーションに取り組み、経過を追って外部観察、内部監察、病理の考察を繰り返す。病理とはリハビリテーションにより、セラピストと患者が密接な関係となり、様々な変化が双方に起こることを指す。


著者は20年にわたる困難な取り組みを論文にまとめて急逝します。原因はインフルエンザだそうです。

発達のセラピストからの新たな問題提起は、まさに患者の外部と内部を見つめながら診療することの大切さを教えてくれていると思います。