旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

心因性嘔吐症に「待った」

2012-01-24 23:25:16 | 診療

30代前半の男性。年末から体調を崩し、入退院を繰り返しています。

嘔吐が頻回にあるので、「看護師や医師は吐いているところを誰も見てない」「独りトイレに行って自分の指を入れて吐いているのでは」と疑いをかけています。

「心因性嘔吐症かどうか診てください」と依頼が来ました。

面接してみましたが、患者さんはうつむいていて、とても辛そうです。言葉少なに「治るでしょうか?」と尋ねてきました。「これから授業があるので、また夕方話を聴きます。病気には必ず原因があるので、よく調べてみましょう」とお別れしました。

夕方、病院に戻って、まずカルテを読みました。検査データでは、電解質が乱れていて、腎機能も少し悪くなっています。本人にも経過を詳しく教えてもらいました。

昔の苦い経験も蘇ります。本も読み直してみて、主治医の先生にコメントを書きました。

心因性かどうかの判断は難しいです。まずはガストリン測ってみてはどうですか? 胃液が多ければ吐きたくなるでしょうから。ガストリノーマ、副甲状腺機能亢進症など隠れていることもありますから。

さすがに優秀な主治医は消化管ホルモン産生腫瘍を探り当て、多発性内分泌腺腫症Ⅰ型との診断をつけました。

よかった。よかった。治療が成功するとよいですね。