多分に我が儘な柏倉家の面々(たいていは姉たち)が毎回のように衝突を繰り返し派手な罵りあいなども繰り広げながら、物語全体はどこかほわんと暖かで品のある雰囲気をもっているのは、勝地くんのおすすめ本である『寺内貫太郎一家』(もともとはドラマだったものを脚本家の向田邦子さんがノベライズしたものと思われます)に共通するものがあるかも。
おばあちゃんがある歌手の熱狂的ファンだったり(『末っ子~』ではさだまさしさん、『寺内~』では沢田研二さん)、その歌手の方が最終回にゲスト出演したりするあたりが特に。
勝地くんの役どころは賀来千香子さん演じる柏倉家の長姉・節子の息子・米山健一。
勝地くんいわく「自分とは似ていない」(でも知り合いには似てると言われたそうな)ちょっと、というかかなりドライな高校生男子を、さらっと演じていました(実際は豪華共演者の方々を前に緊張の極地だったらしいですが)。
公式サイトのフォト日記(なぜかレギュラー出演者ではない(第2話、第3話、第8話、第10話に登場)勝地くんによる舞台裏の写真つき日記が当時不定期連載されていました。「撮影日記」の10月13日、10月26日、11月9日、11月19日、12月5日、12月19日が勝地くんの担当です。なお12月17日分のスタッフ日記にもフォト日記についての補足あり)で、
「台本を読んだ時は、可愛くない奴だな~と思ったけど、最終回までには愛されるキャラクターにしたいな」と話していた通り、一見クールな言葉の端に家族への愛情を上手く表していたと思います。
「息子の声くらい分かれよ」と言うときの声が存外優しい響きだったこととか。
最終話の号泣シーンは健一のキャラからするとちょっと意外でしたが、お父さんの台詞をまんまなぞったような「何時何分?」に笑いました。大泣きしてるわりに妙に言うことが事務的というか。
ところで、このフォト日記で勝地くんは「相変わらず健一はクールすぎ!(中略)自分で演じながら、こんな健一はみなさんから愛されてんのかな~??と不安になってしまう」と書いてるんですが、自分のイメージが悪くなることでなく「健一」が視聴者に悪く思われることを恐れているかのような表現が、親しい友達のことを「あいつ誤解されやすいけど、本当はいい奴なんだよ」と周囲にアピールしてまわってるみたいで、微笑ましいなあと思ったものでした。
個人的見解ですが、彼は役そのものになりきるというより、その役の最大の理解者としてその魅力を余すところなく観客に届ける媒介を務めようとしているように感じます。
インタビューなどで役柄について語っているのを読むと、あくまで自分自身とは別個に存在するキャラクターの性格を懸命に理解し、自身の感情を擦り合わせるようにして表現しようとする彼の努力が伝わってくる気がするので。
『CREA』2007年7月号で鈴木杏ちゃんがコメントしていたように「役を心から愛し、そして心で演じる役者」なんですよね。
余談ですが、初めて勝地くんの書く字を見たのがこのフォト日記でした。「文字には書いた人の人間性が表れる」というのが持論の私は、当時いささかショックを受けたものでした(笑)。
もっともヘタなりに雑に書き流していないきっちりした文字は読みやすくて、他の字と混同することはまずない。そんなところに彼の真面目さや飾り気のないさっぱりした気性が表れているように思えるのは・・・欲目ですかね(笑)。