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about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『花よりもなほ』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2007-10-23 01:36:13 | 花よりもなほ
・黒い画面にマンガみたいなフキダシの形でサクッと状況説明。
いかにも瓦版調の文面と陽気なメインテーマが、作品のカラーを象徴しているかのようでワクワク感をあおる。

・立ち並ぶ長屋は今にも崩れそう+匂ってきそう。
大半の長屋の住人の衣装(屑屋の乙吉(上島竜兵さん)などそのままゴミに同化しちゃいそう)も含め、雑誌やメイキングでも言及されていた美術さんの「汚し」技術に感服。

・たてつけの悪い障子の開け閉めに難儀する宗左衛門(岡田准一くん)。
話が進むにつれこの障子は滑らかに開くようになってゆきますが、それは宗左の精神状態に呼応してるのだそう。同時に彼が次第にオンボロ長屋の生活に馴染んでゆく過程を表してるようにも思えます。
ちなみに貞四郎(古田新太さん)に仇の所在を知っていると打ち明けた直後の場面で、障子に刀が引っ掛かる演出は岡田くんのアイディアなのだそう。
「あれがあることで宗左自身、自分が刀を差している意味がわからなくなっている状況が見事に伝わりました。」(是枝監督談)。
岡田くんの役柄及び作品に対する理解の深さが感じられます。

・「仇を残して亡くなるなんて本当にいい父上を持たれましたなあ」。酷い言い草だが、宗左は特に怒らない。
仕官の当てもないまま虚勢を張り続ける平野(香川照之さん)を哀れむ気持ちがあるからだろう。宗左の人の良さがわかる場面。

・飯屋での宗左と貞四郎のすっとぼけた会話。
仇らしい男が見つかったといわれては体よくたかられてる宗左が、すでに貞四郎を信用していないのが目付きと冷め切った口調から伝わってくる。
ところでこの貞四郎という男だが、ストーリーに赤穂浪士の仇討ちが絡むと聞いていたので、てっきり赤穂不義士の田中貞四郎かと思っていた。
実際は全然違ってたわけですが、貞四郎の口から赤穂浪士を批判するような言葉がたびたび出てくるので、田中貞四郎にちなんでのネーミングだったのかな、と思ったりもします。

・作品の要ともいうべき「糞を餅に変える」の台詞が孫三郎(木村祐一さん)の口から出る。
難しい会話の流れが理解できない分原因と結果をストレートに結び付けてしまう彼の台詞は、それゆえにしばしば本質をつく。

・貞四郎と大家(國村隼さん)の会話。相手への反感を隠そうともしない皮肉を含んだ、そのくせ軽口めいた口調の応酬は、大人の男の洒落っ気を感じさせる。

・宗左の元に故郷からの手紙が届く。文体からするに書いたのは母親(女性)ではなく弟ですね。
「送るべき金子がない」という内容が嘘だったことは後の里帰りの場面で明らかになるんですが、あの弟がそういう姑息なやり方をするのはちょっと意外。
「いつまでも仇を討てん、不甲斐ない兄上に送る金なぞない」とかきっぱり言ってよこしそうな感じなのに。

・そで吉(加瀬亮さん)にどうやって仇に勝てるつもりかと嫌味を言われた宗左は、「かなわなければその時は潔く桜の花のように散るだけです」と答える。
それに対するそで吉の反論は、宗左を批判しているのみならず、死を観念的に捉え美化する武士道そのものを批判してるのでしょう。

・「ツケって何?」「ごはんが食べたいんだけど今お金がないから支払いは今度にしてください、って意味だよ」「貞さんのは(中略)どっちかっていうと踏み倒しかしら」 
子供の疑問に大真面目に解答する(「踏み倒し」の書き方まで教えてる)大人たちがどこかトボけていていい味。
このへんの天然ぷりを見るに宗左とおさえ(宮沢りえさん)は結構お似合いなんでは。

・「踏み倒し」の字を教える場面から、宗左が子供たちに手習いを教える場面に転換。その流れのスムーズさが心地好い。

・子供たちに丁寧に文字を教え、口の汚れまでぬぐってやる世話焼き宗左の表情はとても優しい。
到底仇持ちの男の身過ぎ世過ぎとは思えない。侍より手習い師匠の方が天職だよなあ、と一分たらずで納得させられてしまう名シーン。

・宗左が吉良方の間者ではないかと疑って、あれこれ探りを入れる赤穂浪人たち。
「青木さま、趣味は何かおありか」がいきなりすぎて怪しくなってるのが笑える。
赤穂浪人たちの口から出てくる大石や同志についてのあれこれが、ちゃんと史実(として伝わっている出来事)に基づいているのが『忠臣蔵』もの好きとしてはちょっと嬉しかったり。

・宗左と寺坂(寺島進さん)が碁を打つシーンでやっと明かされる宗左の父の死の経緯。
いさかいの馬鹿馬鹿しいきっかけをぽつぽつと話す宗左の姿は、そんなくだらないことで命を落とした父とそのために仇討ちしなくてはならない自分の両方を少し嘲っているように見えた。

・長屋の連中は基本的に宗左にタメ口。
身分制度のかっちりしていた当時、浪人同然とはいえ武士階級の宗左は本来こんな口を聞かれる立場ではないのだが、それを当然のように許している(逆に自分の方が敬語だったりする)あたりに宗左のなめられがちな人の良さがよく出ている(平野も相当ないがしろにされてるけども)。宗右衛門だったら青筋立てて怒鳴るところだろう。


♪おまけ♪

『東京フレンドパーク2』のコーナー「ボディ&ブレイン」風お題を一つ。
「NHKで放送された勝地くん出演のドラマを5つ挙げよ」。正解は次回で。

 


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