詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

おつかい

2015年12月12日 | 
四つ辻の先、行き止まり
その向こうにあるものは空しか知らない
目的地は決められていても
それを忘れてしまうのは得意だから立ち止まる
大きなビルが道をあけ
いつも夕方のような冬の陽が
女の子の髪と瞳の色を薄くして
ふんわりさせると
身体の周りで散っていた火花が
急に静かになった

堅い靴音が後ろからやってきて
やわらかく追い越して行った
私もすぐに私を追い越したり
遅れをとったりして
ぴたりと同じ歩調で歩けることは稀だし
一緒になったと思っても
またすぐに追い越したり
遅れていったりしてしまう

わびしさを飾るだけのショーウィンドウの中に
埃を被っている古い西洋人形をのぞく
昔、家にも同じようなものがあった
子どもにとってはかわいさよりも
不気味さのほうが際立って
茶色の靴を脱ぎ履きできるとわかって
脱がせたり履かせたりして
気持ち悪さも少しは抱きしめられる気がした

私たちを産んだ女性たちはみな母だけれど
娘の私たちみなが母になるわけではなく
産むことのなかった女性は
ほんのひとときこの世のどこかに
誰にも知られずに自分でさえ気付かずに
娘や息子を育てていたりするのかもしれない

眼球が裏へ帰る
行き先や歩く速度よりも
誰かが自動販売機に投入したコインのような
遠いわずかずつの力を信じてしまうので
頭の中の地図はぷつりぷつりと途切れていて
どの角を曲がっても近付けない場所が
標識を立てて浮かんでいる
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