詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

あたたかい布団にくるまっていると

2022年12月13日 | 
あたたかい布団にくるまっていると
子どもみたいなことをかんがえてしまう
暗闇の中では
目をつむっているのか
開いているのかわからなくなる
見えないってどういう感じ
目をつむるってどういう感じ
そう思うとわからない
とても簡単なことだ
試しに目をつむってみれば
でもそう思って目をつむると
天井のない宇宙で
ブラックホールに吸い込まれていくような
心地がする
宇宙でも
心地って、ありますか
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平均律クラヴィーア

2022年12月10日 | ピアノ
ブラームスのインテルメッツォOp.117-2をいったん卒業することにしたあと、次は何の曲を練習しようかな、としばし考えた。

ピティナはこれまでフリーステップでしか参加したことがなく、フリーはそれぞれの人のレベルに応じて、評価をしてくださるものなので、今度は23ステップで参加してみたいと思っている。23ステップはレベルが指定されている「課題曲」を演奏し、各レベルの合格を目指すというもので、自分のレベルをより、客観的に、絶対評価的に?頂ける。

自分のレベルでは、どんな曲をやったらよいか、現在はピアノを習っていないが、こういうときが一番、先生につきたいと感じる瞬間かもしれない。

とりあえず、23ステップに参加するには、「課題曲」を選ばなくてはならない。
ちょうどその頃、久しぶりにまたグレン・グールドのバッハの曲ばかり収録したアルバムを聴いていた。バッハも良いなぁと思い、平均律クラヴィーアの5番D-Durがいいかも!と、今度はスヴャトスラフ・リヒテルの『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』を聴き始めた。

すると私の(遅い?)『平均律クラヴィーア曲集』との出会いとも言うべき、2番のC-Mollに耳が反応し、以前、プレリュードだけ練習したけれど、ここからやり直すのもいいかも、と考えた。

高松に住んでいた頃、近所のピアノ教室に通っていた。職場の隣の席の人が、「娘が習っているピアノの先生がすごく良い先生で」と言うので、その先生のお宅が近所だったこともあり、急に私も習いたくなって、高校2年生以来、約20年ぶりに始めた。

あるレッスンの日、前の生徒さんが弾いていた曲にしびれて、稲妻が見えたように感じた。「さっきの生徒さんが弾いていたのは何の曲ですか?かっこいい・・・・・・」と先生にお尋ねしたところ、それが『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』2番のプレリュードだった。

そこで先生は、リヒテルのCDを聴かせてくださり、Presto(きわめて速く)になるところで、「リヒテルはここをすごく速く弾いているわね。怒りみたいな感じね」とおっしゃり、その言葉に私はさらにしびれてしまった。バッハだけに、宗教的な怒り、いかづち、のように感じた。

早速リヒテルのCDを買い、何度も聴いて、私のレベル的にプレリュードばかりだったものの、2番をはじめ、何曲か練習させてもらった。

平均律クラヴィーアは、プレリュードとフーガが1つのセットで、ドからシまでの全12音について、それぞれ長調と短調の(全ての調の)曲があり、全24曲という構成になっている。

アルバムですべてを(聴くともなく)聴いていると、その時々で好みの曲が,潮のように押し寄せたり引いたりするのがおもしろい。

こうしてあらためて聴いてみると、一曲一曲ももちろん素晴らしいけれど、全体で物語のようにも感じられる。全ては無理だけれど、いろんな曲を練習したいな、と思う。

いまの私の小さな野望は「フーガも弾く!」ということ。
フーガの難しさは(プレリュードもそうだと思うけれど)、多声であることなのだと思う。リヒテルさんの演奏する2番のフーガを聴いていても、本当にいろんな声が聞えてくる。このように弾き分けていくのが、そして全体としてひとつの建造物のように聴かせるのが、とても難しいのだろうと思う。

いまさらだけれど、調べてみると、フーガは遁走曲と訳され、出てきた主題や旋律が次々と追いかけるように出てくる楽曲形式、とのこと。

さらに調べると、平均律クラヴィーア 第1巻の2番は最初に取り組むのに、かなりオススメとの記事も発見!なるほどなるほど。

それにしても、平均律クラヴィーアは指をよく動かす曲が多いので、自宅の電子ピアノの鍵盤で練習するのはなかなかつらいものがある・・・・・・。変な癖がついてしまいそう・・・・・・。

リアルピアノで練習したいと、先日実家のピアノの調律をお願いしたが、「2年ぶり、久しぶりですね」と言われてしまった。
はい、おかげで、出ない音や、戻らない鍵盤があります・・・・・・。お恥ずかしい。

ちなみに第2巻のほうは、あまり聴けておらず、耳に馴染んでいないせいで、以前、第2巻の演奏会があったときは、気持ちよく寝てしまいました、ごめんなさい!!





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備忘録

2022年12月03日 | 
シベリウスについて調べる
シリアスに調べる
樅の木について調べる
樅の木の枝ぶり
わたしの生きる力
わたしにも何か書けることがあるか調べる
わたしの感情に、大人しい起伏に、
つながる水脈(みお)があるかどうか
『樅の木』という風景の奥行で

『樅の木』という字面は
雪をかぶっているように見える
父を失って母がどれほど寂しいのか
わたしには見えていないと思った
『寂しい』という字面がかすれて見えた
実家の時計は次々に止まった
父が入院中にもわざわざ家から持って来させ
身に付けていた腕時計
母の腕時計や目覚まし時計まで
健やかさ朗らかさが少しずつ古びて
埃をかぶっていく
わたしはわたしであるだけでは

腕時計をつけたお父さん
の頼もしかった腕
かっこよかった腕
腕を失った腕時計
暗さと雪の白さが領分を守りながら
ひとつになっているとき
踏み固めていく足取りの光と影は
音の波間の無音の層に踊っている
言葉がなければ
分かる、と思える

帰り道、太陽が曇り空を
ちぎれそうな繊維のように広げている
懐かしい心地
不思議と呼び起こされる
あるぬくもりがわたしにとって
どのような役割を果たしていたか
鮮やかに広がっている
 
本に挟まれてたわみ始めた化粧箱を救うため
相方である本を
慌てて積まれた山から探し出した
あるぬくもりのこもる文章が大事なのだけど
書名が銀の箔押しになっていて
木の実の型押しまでしてある箱のほうも
手触りを不意に思い出してしまうほど
その質感
しっかりとわたしのどこかに植え付けられていた

起伏の乏しい土地においても
雪や光や風の中から
ぎゅっと糖度は集められて透明になる
何度も引き直したような手の相にも
恵みをもたらす
変わらないように思える物の中で
そっと変化していく
その足音を聞き逃さず
引き立たせること
語らせること

経験のグラデーションの中で
生と死において誰もがまなざしを持っている
風が吹いていること
重力を忘れた方向の中に感じている
わたしに価値があるかどうかではなく
わたしがわたしの中にある物
わたしの中に響いているもの
軽視せず大切にすることができるのか
ある日の風景のような
その「物」とは何なのか
「物」ではないもの
ほんとうにもう思い出せなくなってしまいそうな

書き留めようと指が開くとき
未来が郷愁の色を帯びていた頃が
まだ少し生きている
浸透圧がいつも働いていて
にじみやかすれにもとても親しかった
美しいと感じられる力
まだ残っているだろうか
風雪や忘却に耐えて樅の木が立っている


 

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