詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

夜に浮かぶ雲

2017年11月23日 | 
夜に浮かぶ雲の遠さは奇妙だ
街灯の光など
届かない高さにあるのに
街灯の光によって
私は見ている

夜に浮かぶ雲の働きは奇妙だ
もう人々は眠る時間だというのに
気付きもしないで
気ままにちぎれてみたりして
月や星々を手で隠す

夜に浮かぶ雲の色は奇妙だ
ため息ついでに見上げると浮かんでいる
白いとわかっているから
夜なのに
白に見えるあの色は
本当は
何色なんだろう


夜に浮かぶ雲の時計は奇妙だ
地球のまわりを針も忘れて旅している
わたしが忘れていてもゆっくりはやく旅している
柔らかなじぶん(体)(ふんわり)を忘れることなく

本当の色なんてない
ただ真似るのにふさわしい色が
こちら側にあるだけだ
奇妙な雲のもどかしい伸びやかな
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煙のような私

2017年11月19日 | 
書きたいことを書ききれずに、時は経ってしまい、忘れられてしまう。
やりたいこともやりきれずに、時は経ってしまい、忘れられてしまう。
信じていたことも信じきれずに、時は経ってしまい、忘れられてしまう。

目の前を通り過ぎる景色や感情に流されて、私は透明になってしまう。
きっとこれが幸せというものなのだと、手の皺を数えながら、畳の上の光の染みを覚えながら、煙のような私は思う。
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もしかして間違いなんてことが

2017年11月11日 | 雑記
信じていたことはいつのまにか信じていたことで、信じるための根拠がきちんとあるわけでもなかった。こう思ったとき、私は何を信じていた、と思ったのか……。

ーもうそのときには、その居間も、あまたのものが、きらきらと輝きながら、燃えるような光を放っていました。とりどりの器物のうえには、それぞれに、絹布やビロードが、ふんわりと掛けられて、さながら、黄金(こがね)いろの、一面に燃えたつ炎を、消し止めようとするかのようです。ー
『神さまの話』リルケ

カフェインのまぶたに

夜になって、コーヒーを入れてテーブルにつき、ほっとした。がぶりと大きなチョコレートに噛みつくように、日記のためのノートを開いた。私は薄く薄くひきのばされて、身体のまわりの印象がぶ厚く迫ってきていた。そういう幸福もあった。私はさみしくて、いつも意気消沈していて、いつもカフェインを欲していた。それが地面であるかのように。

詩……整えるというよりは、崩れていく過程を魚拓のように写し取ったもの?雪崩の中に奇妙な配列や突飛な物のきらめくのを見つける。
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落書き

2017年11月11日 | メモ
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嵐の翌朝

2017年11月10日 | 

土砂降りの雨に裾を濡らしながら
傘からしずくを滝のように絞りながら
なぜこんな日にとみなが思いながら
夜にとある街の角に灯りをつける
マンションのとある部屋へ
月との約束を守る蛾のように集まる

グラスをまわしてシチューをすすって
子どもが泣いたら大人の笑い声
遠く流れるクラシックはふいに流れ星のように
これはなんの曲だっただろう
会話のさなかで私を落し物にした

でも嵐のほうはすっかり
すっぽり入ってしまったので
かえって抜けてしまって
外へ出てはじめて
おや、と思うのだった
溶かしたばかりのハンダのように星が煌き
冷ましたような月が光っている
この一週間の灰色が洗い流された
傘はひらかれず楽しげに揺れる

翌朝
出勤時間
いつもの小道を何気なく入れば
家が遮る角度と
風に揺れる枝の網目で
光がきらきらと目を射る
新しいことにつぎつぎ出会う小学生のように
あわててまぶたを閉じる
これはもう何度目の青空
もうまるで生まれたて

コーヒーを買って
いつも仕事前のひとときを過ごす
建物の陰にあるベンチに座ると
落し物のように斜めに差した
光の淡いカーペットが見える

いつのまにか
わたしは暗がりの中で音に溺れている
乾いた葉がいっせいにカスタネットを叩く
じぶんの内側から発せられた声
狭い空洞の壁を幾度も屈折して反響して
もう何を言っているかもわからなくなった
無数の声は溶けてなくなる

空から波のように押し寄せてくる
葉叢が目を閉じたりひらいたりして
眩しさに青を散らしている音が聞こえる
なにも知らなくて光だけが見えていたときのように
それとも長い時を経て
何もかも知っているのに光が見えるひとのように
宙に浮かんでそれを浴びている

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