詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

キンチョーの冬

2019年12月18日 | 雑記

先日、夢を見た。

ピアノの発表会が予定されていて、その前に一度リハーサルとして、公共の商業施設の広場で小さな演奏会をしましょう、ということになる。
会場に着いてから、曲を覚えてもいないし、楽譜も持ってきていないことに気が付いて、はっとする。

よくある悪夢だ。
それなのに、数日間はこの夢を思い出して充実感を味わっていた。興味があることを学んでいるときの、粒の詰まったような満たされたような気持ち。

焦りはある。
少し前に知り合いから発表会に出ないかと誘われた。一月下旬。五分ほどの曲をたった一曲弾くだけなのだけれど、私はその一曲を仕上げるのさえ、間に合うのかなぁと思うようなレベルなので、そんな夢を見たようだ。

趣味というのは不思議で、他人から見ればつまらない自己満足にすぎないのだろうけれど、自分にとっては小さな人生ほどの世界なのだ。その割に大して詳しいわけでも大して上手なわけでもないのだけれど。気持ち気持ち。

夢によって「音楽に対して、もっとがんばっていいよ」と肯定してもらったような、資格をもらったような、うれしさがあって、一生懸命練習したい、という気持ちがふつふつと湧いてくる。

ところで私はとてもあがり症である。
昔はこれほどではなかったと思うのだけれど、いつからか、すごく緊張する人間になっていた。たった七人の会社のミーティングで話すだけで声が震える。手が震える。

30代で再び習い始めたピアノの発表会でも、もちろん震える。震える!
小学四年生ですでに素晴らしく上手な男の子のお母さんに「手、震えてたね⁉︎」と驚かれた。

大人になってから習った先生は、二人とも、大人は発表会で楽譜を見ても良い、というお考えだったので、子どもの頃から暗譜が苦手だった私はこれ幸いと、最初から暗譜をする気はなく、それなのに舞台では緊張のあまり譜面上で迷子になったりした。

ところが40代になったいま、私はなぜか急にやる気になり、暗譜をするぞ!とか、緊張を乗り越えて、聴いている人に感動してもらえるような演奏をするぞ!と意気込んでいる。

振り返ってみると、「昔はこうではなかった、これほど緊張しなかった」というのは、強かったわけではなく、昔はそのような場面では照れたり、苦手だからとごまかして、逃げていたからなんだとわかる。一生懸命やらないことで失敗する、という事態から逃れられると思っていたらしいのだ。

いまはちゃんと乗り越えようと思うから緊張する。ちゃんとがんばらないと人並みになれないぞ、と思うから緊張する。
そして40代ともなると、失敗してもいいと思える。とにかく良い演奏ができるように精一杯やりたいと思うようになる。

何かひとつのことにこだわることが、生きるエネルギーになる気がしている。自分が注ぐ、もしくは捧げる気持ちの分だけ、その物事が自分に応えてくれているような気がする。それは錯覚というよりも、むしろ少し考えれば当たり前すぎるくらいのことなのかもしれないけれど。

自分がそこにそれだけの注意を向けているということは、それだけ気付くこともとても多くなるわけで、そのことを「応えてくれている」とでも言えば神秘性は増す。

以前、「愛とか…」という記事にも書いたけれど、愛する(気持ちを傾ける)ことで見えてくるものがきっとたくさんあり、その感覚は、当然のことだからといって、味気なくなる、というものではないのだと思う。むしろ自然な反応だからこそ、消え去ることはない。

きっと子どもの頃からこういうことをよくわかっている人もたくさんいるのだと思うけれど、私は最近ようやく知って、おもしろいな、と思っている。

どうやったら上手に弾けるか、暗譜ができるか、と考えて、本も読んだりして、こういう学び方もあったのだ!と今さら思ったりして、すると上達の道は果てしがなく、今度はどこまでやるべきかが難しい。

興味はいくらでもひろがってしまいそうで、すべきことを絞り、どこまでを目指すべきなのか。という次のステップが、けっこう難しい気がしている……。


以前一人暮らしをしていた石神井に散策に出かけた。いつも通っていた道に、とてもおいしいフレンチレストランができていた。




思い出の石神井公園へ









このCDがとても好き。
ジャケットにまずうっとり。ロマンチック。



今度の発表会はそのようなわけで
ブラームスのインテルメッツォOp.117-2を弾こうかと。でも聴けば聴くほど難しい。以前習っていた先生には、あまり聴きすぎるのも良くないと言われたけれど。

ただ真似っこするのではね、ということなのでしょう。でも、まずは音楽的な表現を知るところから。なんて。

コメント
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