詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

飛沫

2017年01月27日 | 
今朝、鳥を見た
冬のぴーんとはりつめた空を

ひらいた白い輪っかが連なるように
したから光を受けて
灰色に光って
五羽

あ、いま
時空を飛び越えた……

ふいと空を見上げたわたしは
農夫だったかもしれない
手仕事ばかりの村で
電線もビルもインターネットも
なにも知らないけれど
土とつながっている
目と耳
休めた手だけになって

とつぜん素朴な古い歌が流れてきた
心の回線はいつもどこかにつながっている
まるで初めて鳥を見たように
ぴたっとした

振り向くと
黒い鳥の群れが一列になって飛んでいる
小学一年生の整列みたいに
でこぼこ並んでいる
まるでいっぽんのひもで
むすばれているようだ
そのいっぽんのひもがまるで見えるようだ

空がぴかぴかであんまり新鮮なので
まるでマンガチック
まるで生まれ変わったみたい
生まれ変わったのは
空なのか
わたしなのか

なんだかすごくあたらしい
なんだかすごくあたらしいその感じが
なんだかすごくなつかしかった

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瞬き

2017年01月22日 | 
キッチンの折りたたみ式の白い椅子

背もたれがハート形になっている

そこに座って

久しぶりの人からのメールを読んでいると

手もとが急に明るくなった

窓に目をやれば

ガラスの粒がきらきらきらきら光っている

すぐ向こうに海があるようだ

波の響きのような音もする

寄せては返す

寄せては返す

ただゴゥといううなりだけなのに



キッチンの静物たち

伏せた皿やマグカップ

おたまやフライ返し

おおぶりなパンのかけら

何も言わないことで語っている



今日という日は二度と来ない

とてもとてもありふれた今日も

たった一度しか訪れない日

おなじように静かな午後が

訪れることをくりかえし

そのくりかえしの中にいる

けれど二度とは訪れない



光の色が変わる

静物はだんだんシルエットになっていく

窓はゆっくり落ち着きを取り戻し

光は窓から外へ後ずさっていく

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テーブルの上の手紙

2017年01月16日 | 
テーブルの上に手紙がのっている
もうポストに投函するばかり
封筒はふくらんで
封がしてあり
封印がわりのシールも貼って
宛先も差出人も書いてある
重さに合った料金の
封筒の色に合わせて選んだ切手も貼付済み

この厚み
この充実感
投函せずにしばらくここに置いておきたい
みかんとか会社でもらったお菓子とか新聞
まわりのものを手で押しやり
テーブルの上には封筒しかないかのように
そういう写真を撮るかのように
構図を決めるように
頭を傾げて眺め入る

下手な字で
つまらないことをだらだら書いた
思いの詰まった手紙

子供の頃、中身をいっぱいに詰めて
ぱちっとフタをして渡されたお弁当箱を
かちゃかちゃ持って学校へ行くときの
満たされた気持ち

満ちている気持ちが封筒の中
いまは無言でそれなのに堂々と
ぎゅっと集まっている
ひらかれるまで

手紙
という
静かな充実感
ふくらみのせいで
四隅が少し浮いている
そのわずかな影


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たんぽぽみたいに

2017年01月10日 | 
ブルー
陸橋を境に
イエロー

陸橋を境に
空がブルーとイエローに分かれていること
いまここで気が付いているのはわたしだけだ
シルエットはどれも向こうを見ていないから
夢の中のように

美しさはわたしを押し潰し
わたしをはみ出す
ことばにならない
意味を超えている
そのはみ出した部分が意味だと思う
そう思えるほど
わたしは無邪気なのだと思う

ずっとずっと無邪気でいたい
なにがあっても無邪気でいられるほど
つよくなれたらいいな
そうしたらほんのわずかにだれかを
笑顔にできるかも
ほんのわずかにだれかを

たんぽぽみたいな笑顔に
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

朝の窓枠

2017年01月07日 | 
枯れていく花水木
斜めに切れ目なく落ちていく雪
車が水を跳ね飛ばし走っていく響き
白鳥の湖を象った
切れ目なく降る音の
カーテンの向こうにあった
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする