詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

滲む

2019年03月29日 | 
せ咳き込みかかしこみ
手をつないで
掛け布団に口をあてて
やり過ごすと
薄闇の向こうにぼんやりと光が見える
窓がある
家がある
それはつまりそこにきっとひとがいる
そんな気がする

ひととかそんな気がするだけで
薄闇の中の光は
砂埃が立っているようにぼやけて
水が滲むことがあると
テレビでは言われていた

水に滲むは親しいようだけれど
水が滲むとは実は実に不思議な言葉だ
あわてて画面に目をやると
たしかに水は滲んでいるのだった
一瞬滲むとはどういうことを指すんだっけと
わからなくなり
ああそうだどういうことを指すんだっけと思い
それを自分で思い出したいと
子どものように思うのに
思うよりもすばしこく眼は動き
水が滲むと言い表される現象を
見てしまうのだった

海水と淡水では水の比重が異なる
そのため海水と淡水がまざりあうあたりでは
水が滲むのだ
とナレーターが語った
海水と淡水はそれぞれを見ても
それぞれの区別はつかないのに
まざりあうことで
まざりあっていることが見えるようになる
感じる
水の重たさなめらかさ
からだに沿うその温度さえも

自分を自分に対し
ひとに対し
物事に対し
信じられるとき信じられないとき
どちらのわたしも見分けはつかないだろうが
まざりあうところでは滲んでいる
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停車

2019年03月16日 | 
駅に近づいて
大人しい動物のように
電車の長い体がホームに沿って横たわる
ドアが開くと
車内の空気を風が明るく掻きまわす
春が届いているのだ
座っている人たちの顔が驚いたように瞬く
もうすぐ花びらもトッピングされる
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踊る光

2019年03月05日 | 
季節はもう春。
街のあちこちで花の色が明かされていますが。
この詩の中はまだ冬なのです。





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