詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

分かる

2016年03月30日 | 雑記
最近、あまり日記を書いていない。ブログを書いて満足してしまっている。これはよく考えるとかなりゆゆしき事態である!というのは大げさだけど、別にそんなに支障はないのだ。だからこそ、問題なのだ!

ブログと日記とでは違う。こんなに自分のことばかり書いているブログでも、自分だけが読むノートに書く日記とは違う。こう書いている間に、一人暮らしの頃、日記に対して抱いていた気持ちを思い出した。まるで恋人みたいだった。夫とは付き合っていたのだけれど、ずっと遠距離で。その頃の独特の気分、小さな部屋にわたしの意識と夢ばかりが充満している、というとあまり素敵に聞こえないけれど、ちょっとした自分との蜜月みたいな日々だった。日記はその対象のようなものだった。

ブログと日記では違う。しょっちゅうしょっちゅういろんなことを発見して、こんなことがわかった!こんなことに気が付いた!と研究者のように逐一報告して(日記に)。あとで思い返すと、それがどんなものだったのか雲のように漠然としているのだけれど、日記を読み返せば、さも新しいことを見つけたかのように、何度も何度も、同じようなことを書いているのだった。

話がかなりそれた。要するにここで書きたかったことはと言うと、最近あまり日記を書いていないせいで、性懲りもなくまた新しく発見したことを、はっきりと思い出せない上に、記録がないからよくわからない、ということなのだった。微生物のような小さな発見(実際の微生物の研究は偉大なものだと思います、もちろん。ここではただ単にその大きさを、いや小ささを言いたいだけなのです)を、心が動いたことを、心を動かしたのがどんなものだったかを、以前はあんなに一生懸命書き留めていたのに。それが、わたしの意味だったから。詩を書くなんてことよりもずっと前に。

またそれた。それで、あの発見の感覚はけっこう大事なものだったのではないかと、貧乏たらしく思い出せることをかき集めて、ああ日記をちゃんと書いておけばなぁ、と思ったのだった。でも日記を書いていないことによる問題(あくまでもわたしにとっての)というのは、そういう備忘録的なことではないので、いつかそれについても書きたい。

日記にもちょろっと書いてあったり、携帯のメモにも少し残してあるのに、それだけでは大事なことがよくわからない。たとえばメモには……

ねえこの話を聞きたいと思ってくれるかな
分かるが分かった
という話なのだけど
だけど分かるが分かったのは付随的なことであって
本当に大事なのはやっぱり分かった
ということそのものなんだ

なにを分かったのか

書き留めないんだね
未来を見ているとでも
こだわっていた足跡も

分かるが分かった
いま思い出せるのはそれだけ

……無理矢理、詩にしようとしていたみたいです……。でもしばらく放置したせいで、何を書きたかったのか思い出せない!本当に大事だと思ったのはどれだっけ?「分かる」の感触を書きたかったのではないかと思うのだけれど。ね、日記って大事でしょう?(そうでもないか……)どんどんおぼろおぼろ記憶がおぼろ豆腐のようにくずれていくよう。

そうしてこのように、肝心な「分かる」が分かったことにいつまでもたどり着けないのでありました。分かるの道のりは遠い。そしてさらにおぼろおぼろおぼろ……。

つづく

のかな……?


さみしいといろんなもの、ことに感情移入する。
ひとり暮らしをしていた頃は、洗濯物が風に揺れる影や部屋の中に射す光の変化などにも
自分の正しさや間違いが示されている気がして熱心に意味を読みとろうとした。
景色と心が一体化して、全身で感動してた。


もやがかかっているように見える。レースのカーテンの影?




もやつながりで。足跡のようにも見えるし。なんだかかわいい。
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身を委ねよう

2016年03月24日 | 
身を委ねよう
いま、初めてのように

街から光は消えていき
人工の灯りばかり
厳かに呼吸を始めるこの時に

シートにもたれ
蛸が墨を吹くように
順番に発火していく四気筒の力に
押し出されるように身を委ねて
列車の連なる光と競争し
タバコの匂いにまみれ
ジャンパーのポケットに両手を突っ込んで
自分の感情の名が失意だとも知らずに
夜の匂いを嗅いでいる獣のように尖った男が
煙と入れ違いに入っていくネオン鮮やかな
高架下ゲームセンターを追い越して
トウモロコシの粒のように
蛍光灯が整列するマンションを遠く旋回して
力を抜いて
流れ行くままに

わたしも自分の感情の名が
失意だったり期待だったり
恐れだったり安穏だったり
することをほんとうには知らない

世界にかけてしまうフィルターを
剥がそうと躍起になるのはやめました
無理矢理外から剥がされずにすむように
自分から剥がそうと躍起になるのはやめました
そうやって守るのはやめました
そのままにしておくこと
この世に生を受けてから
育んできたぬるいゼリーのような
フィルターそのままで
触れてしまうこと
それこそがなまであることに気が付いたから
きっとものすごく驚くだろう
きっとものすごく怖いだろう
きっとものすごくグロテスク
そしてものすごく美しい
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記憶に残っていく風景

2016年03月21日 | 雑記
そのときはなんとなく見ていた景色が、ある種の感覚というか感情と共になんとなく記憶に残っていることがあります。先日行ったところも未来の記憶に残っていくのかなぁ。
ひとりの人間の中には、いろんな風景が重なったり、はみ出したり、浮きあがったりしています。


この日は夕方からお出かけ。
どこへ向かっているのでしょう?


太陽が印象的。


特徴的な形の橋が見えてきました。


その橋を、いま渡っています。




飛行機が見えます。






着きました!城南島海浜公園です。


羽田空港が近いので飛行機がよく見えます。














なんとなくさみしい景色。そう感じるのは海と空の境が見えないから?


さみしいのになんだかなつかしいような。過去のようで未来のようで。吸い込まれるような。




さみしいのに、なぜか惹かれる。




















管理受付にネコさんがいました。
めっちゃ寝てる!
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言葉は

2016年03月19日 | 
言葉は嘘をつけるが
言葉に嘘はつけない
幸せを選んで夢を捨てたのだと
言葉は見抜いている
ひとりきりの空の住人たちとの暮らしや
ひとりきりの地の影たちとの戯れを
捨てることを選んだのだと見抜いている

言葉は羽毛の一本一本の細やかさを
ふくらみに指をもぐらせる
その手ざわりを
忘れた

貧しさやさみしさこそ財産
倦怠こそ肥沃な大地
そう思うとき
来るべき老年に向かって
煙に燻された太い柱が立つ
柿の渋を塗り続け
空虚という名の虫喰いを阻もう

まるくなる生に
さびしいことにも気付かぬほどさびしい生に
レースのように言葉で縁飾りを
ぎざぎざや凹凸や陰影や手ざわりの

心細さを巻き終わり
ひとによってかじぶんによってか
かりそめにも
太く白い道にどっかり座ってみると
さみしくてもさみしくなくても
かなしくてもかなしくなくても
うれしくてもうれしくなくても
どんな方便が東西南北を駆けまわっても
空隙に無為を見つけ巣づくりをはじめる
この心の傾きは
雲をつくり落ち流れ
固まりなどしても
いずれ遥かなる安定へと注ぎ込み
安らっている海のように
しぶとくわたしの真ん中である
そうわかって安心した
もう他のものになろうとしなくていいと
ようやくあきらめがついて
幸せでも不幸せでもいいのだとわかって

太陽はきっと昇るだろう
太陽はきっと沈むだろう
幾度もわたしをなぞっていくだろう
過去を積んで先端が現在である木が
空に向かって枝を開くように
わたしも未来へ体いっぱいに手を開こう
未来を手放そう
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循環する欲望

2016年03月18日 | 
欲望はひとを
遠くに連れていくかもしれない
だけどねじくれて
たくさんのヒトとモノとカミを巻き込み
世界を複雑にする

いつか公園で見た木は川へ落ち込む斜面に
巨大なタコのような長い脚を
にょきにょきとのたうちまわらせて
頭をぐっと上にもたげ落ちるまいとして
絶妙なバランスで踏ん張っていた

ひともそのように欲望の脚を
にょきにょきとのたうちまわらせて
落ちまいとして踏ん張っている
脚はもつれ合い
もうどれが誰のだか
自分のだかひとのだかも定かでない

わたしは今日
七十歳を越える両親と実家の近所を散策した
わたしのものらしく見える二本の脚で
何十年の太った動線のあとに
新しい角を折り新しい線を引いていくと
知らない景色が広がっている
知らないことが懐かしい街
父は以前見つけたという
イーハトーブを見せたがった

雲は多かった
光も多かった
わたしたちの顔は翳ったり
明るく照らされたり
風に強く吹かれたりした
髪がそれぞれで
同じように踊った
父が天を指差す
見上げると青さの中で
雲からちぎれ
飛行機がまっすぐに伸びていった
真っ白で紙飛行機みたい
母が言った

欲望はひとを
強く太くすることも知っている
けれど空と直結している
こういう単純さもいいと思う昼下がり
わたしはただ
薄まっていくばかり
暇を持て余した小学生の夏休み
幾度も読んだ本を投げ出して
部屋に差す光が弱くなっていくのを
じっと見ていた午後のように

暮れていくのも悪くない
カーペットに丸くなりほおづえついて
そんなことを考えていると
煮ているカレーが吹きこぼれた
あわてて火を弱め蓋を開けた
わたしもときどき吹きこぼれる

遅くなるからやっぱり昼ごはんを一緒に食べずに帰ると言うと
四十近い娘なのに
父の目じりと口角が
ほんのわずかに下向きになったのを見逃さなかった
そんな表情を見てしまえば
四十近い娘もしばらく薄荷のような空気を噛む
小さな場所にいるほど
遥かなものを見ようと眼を細めるのはなぜだろう

わたしたちも遠い昔
氷河期や干ばつをくぐり
腰が折れるほど落ち穂拾いをし
戦地に赴き
自分の裏切りを
仲間の眼玉の中に見せつけられ
遠くない未来
人が作ったものに捨てられ
死んだ星の化石となるさだめ

絆と言われる撚り合せも
見えない両端から強くひっぱられて
糸がぷちぷち切れていく

だから……
(いつも弱くなった自分をくぐり抜ける
頭を低くして)
上手に忘れよう
これまでも幾度も生まれ変わってきたように
勇気を出して
まるでいまここしかないかのように
いまが永遠のように
過ぎていく時間を前に王様のように振舞おう

私はもう一度生まれよう
閉じずに開こう
想定されている返事を追いかけるのではなく
ひとつひとつみずみずしく出会いたい
そんな欲望が堅くなってきた皮膚の下で
いまも何度でも新しく育ち続ける
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