詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

ブラームスのワルツ

2017年03月28日 | 
回っているレコード
同じ動作を繰り返しているようで
少しずつうごいていっているんだね
針がすべらかに溝を通って
奏でられている
テーブルの上に春
ふんわり降り立つよ
窓から入る光
琥珀色

何十年も聞いてきた同じ音楽も
少しずつうごいていっているんだね
すべらかにわたしの溝を通って
奏でられていくよ

連弾で
互いの呼吸を合わせて
互いの足りないところを補い合って
ちがう花を次々咲かせて

加速していく
いいやこれは速さじゃない
気持ちの高ぶり
やっぱり速さだ
急いている
頂点へ着けば下降するのみ
なのに

ゆっくり
ゆっくりに戻った
けれど同じゆっくりではない
もう遠い花畑
憧れのように見ていた終焉が近づいている

4本の手は重なり合って
優しいメロディーに翳りが紛れ
深みに異なる模様も見える

鼻がつんとすることも
願っていたことのような気がする
そう思ってもっと泣きたくなる
レコードの溝
何本あると思う?
子どもの頃、きっと大人たちをよろこばせる
間違いを答えた

溝は何本もあるように見えるけれど
たった一本なんだよ

たった一度きりの人生なんだって
ともに生きるひとと過ごす時間は
何本もあるわけではなくて
たった一本だということ
大人になるにつれ
どんどんむけていく皮のように
隠れていた不思議さが
どんどん露わになってくる

ブラームスのワルツは
何回転もしているけれど
戻ることのない道を進んでいる
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内側に入り込む世界

2017年03月20日 | 
内側に入り込んでいる世界を
離れて立ってみるなら
縁のぼやけたジオラマの部屋

花が一輪
深い色を見たいなら
僅かな差異にとらわれず
切り分けていかなくては

お気に入りの下着を
突然の赤い月で汚してしまった夜は
染みを水で丹念に流した

わたしは血まみれの両手で胸をなでさする
黒人の美しい女のひとが
苦悩のために焼けた鉄を両手で握りしめる
恐ろしい悲鳴をあげながら
(今日駅ですれ違ったひとだ)
冷やすための水をもとめて
右往左往するわたし
うつつにそれらが記憶と
両手のひらに響いているしびれから
ほとばしる幻視のくびれ
そう液体のようにわかる
闇にひらひら流れて落ちる金色の水

内側に入り込む世界
内側に入り込んでいる世界
似ているようで
主体が入れ替わっている
と見ることもできるかもしれない

そのように思えば
細い流れは夜を貫いて
駅と線路の関係
旅先の街で見つけた喫茶店
がらんとして暗く
ショーケースの中に陳列されている
レバーが瑪瑙色に光っている
歩いている
この街はいつも暮れ方のように
青く沈んでいる
駅と線路が
蛇口から流れる水の帯のラインのように
さりげない主体の入れ替わりのように
絡み合っている
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キッチンで手は

2017年03月15日 | 
キッチンで手は
ふととめるようなものだ
塑造のように

皮がよれないよう
包丁をななめにすべらす
すらっとうつくしい長ねぎを切るとき

小さい塊のまま
歯の裏に残っている感触と匂い
奥歯に噛みながら
切り口を平らにするイメージを握り直す
腰を入れてまっすぐに立つ

その背中は声を集める
動かす手が黙しているから

ひとは距離も時間もまたいで闊歩する
ことばやできごとが信号しながら行き交い
空想が景色をふくよかにしていく
手がとまる
泳いでいる

背中に寄り集まってくる影
水が手に勢いよくあたった
はっと生身になる

通りぬけられた街はさっと色褪せ
どこかすぐにわからなくなる
けれど知らぬ間にまた
新しい街へすべり出す
動かす手は舟を漕ぎ
ミトコンドリアをかきわける
塑造のようにまた
ふいととまるための下ごしらえとして

新じゃがと冷蔵庫に残っていたごぼうにんじん豚肉は甘辛く煮て
アスパラはきのことバターで炒めて醤油を垂らし
あざやかなグリーン
おさしみを買ってある
栄養たっぷり

夫は近頃忙しく
今夜も夕食を家で食べられないとの連絡
じぶんひとりを太らせるための料理が
テーブルにつぎつぎ積みあがる



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満ち干

2017年03月11日 | 




わたしの愛は長く野ざらしで錆びしいシャツ
そのひとの抜け殻のような
海辺に横たわっている










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整理上手

2017年03月04日 | 雑記
もしかしてブログを継続的に読んでくださっている方、もしかしていらっしゃったら、私、整理が得意だと思いますか?

思いませんよねー。思えないですよねー。
でも実は、超不得意なんです。

不です、不。
「でも実は」に一瞬だまされませんでしたか?

私、ものすごい忘れんぼなのですが、そのための予防策を蜘蛛の巣状に張る、ということはできるんです。だからものすごい忘れんぼの割にはミスはそれほどしてない(あくまで忘れんぼの割には、ですが)と自負しております。うんたぶん。

でもそのための策を効率化する、というのがなかなかできない。忘れるのが怖いので念には念には念を入れてしまう。そして作業に没頭してしまって、要領良く、ということができていない。そのとき没頭したら、あとはケロッと忘れる。

資料やノートはぜんぜんきれいじゃない。自分がわかればいいと思って。ぐちゃぐちゃすぎて、自分でもあとで読むのが嫌になるのだけれど。それで手っ取り早く隣の人に聞いちゃったり。ハタ迷惑な奴です。

そんなふうだから、他の人が、自分のためのメモなのに、ちょーきれい☆にしているのを見ると驚愕する。自分がすごい欠陥人間のような気がしてくる。

文章力もきっと同じで、私はもしかしたらちょっと変わっている(ときどき言われる。近頃けっこう気にしている)のかもしれないけれど、その分、整理上手な人より少しは奇妙な文章が書けるかもしれないいつか、そうよ、そもそも、生物は混沌のスープから生まれたんだから、混沌は大事なのよ、ということにしていた信念、というか、信じ込んでいた言い訳も、ものすごい勘違いなのではないか、と急激に不安になってくる。

思い返せばピアノを習っていたときも、先生のところへ行って、ぜんぜん上手じゃない、と、わかると(自分でわからないところがすでにだめなのですけど)、文章も同じなんじゃないか!?と思って、とてもがっかりしてしまって、文章の練習をすればいいのに、文章力があるんだと思い込みたいがために、ピアノを必死で練習しようと奮起する、という、いかにも整理が苦手なひと的思考回路なのだった。

考えてみれば、整理とは、断ち切ることなのだ。本当だったら分けられないものを、バッサバッサと切って分類していく。だから決断力が異様に弱い私が整理が苦手だというのも、もっともなことなのだった。それとも整理が苦手だから決断ができないのか?

ともかく、私の中で、ものごとはずるずるずるずるだらしなくつながっていて、おまけに自分の感情もずるずるずるずるだらしなくつながりっぱなしで、そういう人間にはそういう人間の良さがあると思い込もうとしてきたけれど、ほんとにそうなのかな?と、こういうとき(他の人のちょーきれい☆なノートやメモを見つけたとき)、激しく動揺する。

整理ができないということは、そうやって、いつもムダなものを大量に持ち歩いている、ということで(実際、私の鞄はいつも重い、そしてブログの記事は長くなっていく)、いまやるべきことに力を注ぎきれず、そもそも、いまやるべきことをひとつに絞り込むこともできないから、時間ばかりが過ぎていく。

アクティブで遊び上手な人(大抵お酒も強い)というのは仕事もできる。そういう人は、捨てるのも上手。ぱっぱっぱっと決める。さっさっさっと動く。私が20年くらいかかる成長をたぶん1年くらいですましている。決断が早いから。そして普段、文章のフの字も考えないのに「きみ、これ、ちょっと、書いてみ」とか言われたら、さらさらさら〜とセンスの良い文章を書いて、「きみ、文才もあるんだねぇ」とか言われて、本人は別に文章に興味はないので「えー、そうですかぁ」みたいになる。そして私は地団駄を踏む。天よ、二物も三物も与えやがって!て。

そう考えてくると、私もそろそろ整理上手を目指すべきときなのではないかと思う。家を買ったので、これまで以上に、というかこれまでは最低レベルだった「稼ぐぞ」という気合が最高レベルに跳ね上がっているし、そうなると、「できる人」にならなければいけないのだ。

できる人になって、決断も速くなれば、文章にも良い影響があるかもしれない。何について書くか、ぽんぽん決められるようになるかもしれないし、ブログのレベルアップ方法を編み出したり、詩を書くためにどんなことをすればいいか、などなど、すばらしく有効なPDCAできるかもしれない!

と、能天気な私は、落ち込んだ後にかえってテンションがあがってしまうのでした。「だめな人間→これからよくなる可能性がたくさんある」という考えにハッピーになってしまって。まだ何もしていないのに。

さて、ではそれを実現するために、一体なにからどう手をつけたらいいのだろうか……。


追記
稼がなきゃ!と思ったら、今度は気合を入れて文章を書こうとしている私……。仕事じゃないのに。やっぱりとんちんかん。



かわいいはかわいいの分類の箱にすぐ入れられる。
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