詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

冬の夕方

2018年11月28日 | 
夕方六時の電車が進み
心の時計はとまっている
停まる駅ごとに人がほぐれ
夜の空気が忍びこむ

一日の枯葉があちこち
吹きだまりをつくる
ふっと息を吹きかけて
となりの人へ追いやると
口を開けて吸いこんで
夢の中へまで運ぶ
働き者もある

一定数を下回れば
ふいにばらばらのひとびとは
空気を分かち合い
たがいのゆるやかなむすびつきを
コートのように羽織っている

携帯を見つめ
空(くう)を見つめ
目を閉じて
家々が過ぎ
明かりが灯っていくのを
見ないことで思い出す

目を開けると
冬の匂いを貼り付けた顔
飛び込んできた
白い息が漏れる

靴が脱げそうだ
昨日も今日も
明日もあさっても
疲れた
とても疲れた

疲れた皮を脱ぐすべを知らない
からだのあちこち
きもちのあちこちが
先の割れた爪のようにひっかかる

せめてあの月にひっかかり
両岸の明かりを
黒く厚い腹の底に映している
あのまだらの川面を
いっしょに覗き込めたなら
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詩が書きたくて

2018年11月24日 | 
詩が書きたくて
あたしは詩が書きたくて
描きたくて
ピアノを
弾く

満月の夜
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現実真実

2018年11月17日 | 
でもそれが本当のわたしではなかった。
でも本当にすばらしいものは
本当なんてことをあざ笑って
本当をはるかに超えて真実だった。

残念だけれど
わたしは
子ヤギのようにおとなしくて
正直の破れた袖にしがみついていたのだ。
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丘の上の家

2018年11月17日 | 
駅から離れた丘の上の家
窓を開けて風にのって
遠く聞こえる車輌の連なり
おもちゃの双眼鏡をのぞくと
対岸の丘の暗がりに
緑色に光る病院の名
逆さに見える
わたしたちの幼かった頃
逆さに見える
心は変わらない
それなのに
あとはもう離れていくばかり
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めくる

2018年11月15日 | 雑記
携帯をタップして画面が切り替わるまでの間
期待していたことはなんだった?
わたしは何かを読みたかった。
新しい画面が現れて
消えない欲求をかすかに残したまま
気持ちから少し離れたものを
読み始める。
違っていたということなど
すぐに忘れられる。
若い頃、見たいと思っていた滲む景色を
なんの苦もなく忘れてしまうように。

本を読むべきだったのかもしれない。
すぐに満たしてはくれなくても
長い時間をかけてわたしを先回りして
毛布をひろげて待っていてくれる。
ああ、あの夢の続き……。
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