詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

余暇に何をしてますか?

2016年07月30日 | 雑記
先日、友達の集まりで、
「最近、余暇は何してますか?」と聞いたら笑われてしまいました。
「余暇って!!余暇って!?はははー。余暇なんて言葉、普段使わないよー」
それから、「余暇は何してますか?」が、後からお店に到着した人たちへのあいさつになってしまいました。


ところで、余暇、何してますか?

質問をするのは、その質問をした人自身がそれについて話したいことがあるから、なのだから、同じ質問を返さなきゃ、ということは、私は年齢的に、恐らく人よりだいぶ遅れて知ったことでした。私は遠慮というかそういう配慮がなくて、話したいことがあればそんな遠回りをせずすぐ話してしまうし、だから何か質問をされても、それが実は相手の聞きたいことなのではなくて、話したいことなのだなんて、ぜんぜん気が付きませんでした。

というわけで、私の余暇の話です。
といっても、普段のではなく、つい最近の話です。

余暇を使って、ようやく『ミレニアム』の「ドラゴンタトゥーの女」を本で読みました!アメリカで作られた映画を観て、本で読むのもすごくおもしろいよ、と聞いて、ずっと読みたいと思っていました。

ミステリー小説の困るところは、余暇を楽しむためだった読書時間がどんどん拡大していって他の時間も侵食し始めてしまうことです。最初は節度を持って?ちゃんと他の用事もしているのですが、そのうちそれらにかける時間は最小限になり、気になって気になってすぐに本を手に取るようになり、一度手に取るとなかなか閉じることができない、という困った事態になります。さらに夢中になりたくて読み始めて、なるべくそういう時間を引き延ばしていたいのに、そういう本ほど大急ぎで読んでしまって、夢中になれる時間が早々に終わってしまう、というのも、なんだか奇妙です。

夢中になれる本を読んでいる、しあわせな状態はなかなか長続きしないし、バランス良くもいきません。『ミレニアム』にはまだ「火と戯れる女」と「眠れる女と狂卓の騎士」があるので、楽しみはしばらく続きますが、時期を選んで、心して(たとえば数回分のブログの準備をしてから、とか)読み始めないと、と思っております。

ところで、現在、家族と小旅行中です。本当は「火と戯れる女」を持ってきて読みたいところでしたが、そうすると家族よりも読書ばかりになってしまいそうだと思い、敢えて他の本を持ってきました(その持ってきた本がつまらないというわけではないですよ!)。

ところが、母が、もともと家にあったのに、子供が大きくなったからと、小さい子供がいるうちにあげてしまっていた『べにはこべ』を、「また買っといたよ」と言って持ってきたではありませんか!『べにはこべ』はもう何度も読んだのですが、おもしろいんだよね〜また読みたいな〜とずっと思っていたので、ついつい手に取ってしまいます!

そういえばぜんぜん関係ないですが『べにはこべ』も、村岡花子さんが翻訳していたのですね。一、二年ほど前に『ハックルベリー・フィン』をこれまたなぜいま?というタイミングで読んだのですが、そこでも、あ、村岡花子さんが翻訳してたんだー、と思いました。とても読みやすい文章で好きです。

ここまでダラダラ書いてきて、結局何が言いたかったのかというと、本ばかり読んでついついブログをさぼってしまったという言い訳なのでした。詩も書いていた、というか考えていたのですが、文章を前に悩んでいると、手が本に伸びて、つい読み耽ってしまうのでした。


余暇に松本城







余暇に何をしているか、コメントで教えてくださってもいいんですよー、なんて。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セミ記念日

2016年07月21日 | 雑記
7月19日、アパートの廊下でセミが死んでいるのを見つけた。まだセミの声を聞いていないのに、と思った。

7月20日、仕事の途中でトイレに行こうと建物の玄関前を通り過ぎると、外からセミの声が聞こえた。
あ!今日から、だ。今日からセミが鳴き始めた。お昼のとき、同僚が「セミが鳴き始めたね」と言った。お腹の底のほうから共感が沸騰して噴き上がる感じで、私は「ねっねっ!(そうだよね、そうだよね)」と言った。セミが鳴き始める日に気が付いたのは生まれて初めて。生まれて7日どころか15,000日近く経っていて、夏を迎えるのも39回目なのに初めて!

ということで、今日はセミ記念日。

(これを書いたのは昨日なのでした。もっとたくさん、夜更かしまでして書いたのですが、考えた末、削除。削除したうちの乱暴な部分は捨てて、やわらかい部分は心の中で大切にして反芻することにします。虫の声がどこからともなく連れてくる、いつかの夏の感触のように)



あじさいが好きなのに載せそびれたので。










金井美恵子さんは、あじさいは嫌いだとどこかに書いていた。なぜだろう?好き嫌いに理由なんてないのかもしれないけれど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2016年07月19日 | 
ゆかりのひとにもらった
映画のチラシは四つ折りにして
バッグに入れたまま時が経ち
折られた角が弱く白くなった

白くなって
ベロのように巻き上がる
残像がカタカタカタ
という音とともに脳裏に焼き付く

「きおく」という形を記録している
「ぼうきゃく」という形を音にしている

使い古された英語の辞書の
薄紙のページをめくり
She turned down a narrow street.
彼女は角を曲がって狭い通りに入っていった。

煉瓦の壁面が押し寄せる
石畳の狭い通りに入っていった
スカートが揺れて
見えなくなった

黒猫が一匹
軽やかに後を追いかけた
その後を帽子を目深に被った影が追いかけた

石畳の上を
音もなくすべる影
タバコの煙
香り
後をたどり
空白になる
鑑賞者の来歴

ニュースペーパーが丸まって
道端で風に吹かれている
なにげないふうを装って
重大な転機を伝える
無言のインク

計画された予想外の展開に
計画通りひきずりこまれていく
ポップコーンを食べていた手が
忘れられて
保たれて
浮いている

日常をすべって
光の筋の中の
煙のような埃の群れの向こうの
スクリーンの流れに入り込み

意味の枠に収められない
日々の連なりに倦んだひとびとに
かならず意味のある
表情、動き、カット、シーン、ストリーム

長い時間をかけて
まるで見てきた歴史のように
ひとりの中に一本の透明な流れが
生まれている
本人にさえ
自覚されないほどひっそりと
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雷雨

2016年07月15日 | 
流しで洗い物をしている
窓の外で雷が鳴っている
それほど遠くはないけれど
怖くなるほどでもない
気がかりなことでもあるように
ふと、聞いている

買い物帰り自転車で川沿いを通った
橋の向こうの雲の衣の中では
すでにあれかこれかというように
ネックレスを試しているのが見えた

外の情景が内にひろがる
窓の外はもう夜で
流しの上の白い蛍光灯が
チカチカした
いま外にいる人のことを
歌川広重の絵の中のイメージで
ふと、思い浮かべている

窓の外で雷が鳴っている 
流しで洗い物をしている
水の音が激しくなって
外でも汚れが
勢いよく洗い流されている

暗い道を通り
流れていく先はいっしょになる

窓の外は真っ暗で
流しの上の白い蛍光灯が
チカチカして
家が急に古びた

本棚のある部屋の天井の隅では
きっと蜘蛛が器用な脚で
レースを編んでいる

雨の音は流しとは反対の
ベランダのほうへ移動した
カーテンを少し開け
外の様子をうかがう
駐車場を隔てた向こうに建つ
アパートの一室で
明るい青い光がぱっぱっと切り替わる
誰かテレビを見ている

今朝もくたびれたまま
仕事に出掛けただんなさん
まだ帰ってこない
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

線を引く

2016年07月12日 | 
書かせたくないんだよ
と太い声が言った
太い指が細い鉛筆を
(絞め殺しそうに見える)
軽く握っている
いまはまだ余裕がある
とでも言うように

蛍光灯の光が
小さい事務所の白い壁
濁った灰色のキャビネや事務机の
面を拡げている

腰にあててそりかえる手の
太い指には毛が生えている
まっすぐでないことも
強くて重たい意志に見える
(カールは愛嬌)

顔を覗き込むようにして
言われているのは私なのに
私の視線は男の後ろに回り込んで
腰にあてた鉛筆を握る手を
影になるくらい覗き込んでいる

鉛筆がチッチッとしきりに首を振る
生意気な鉛筆め
と私は思う

聞いているのかい!
鉛筆を持っていないほうの手が
ドンと机をたたく
パチッと目を開くと
空が深々と
青を吸い込んでいくのが見える

一行が空をアア、アア
と横切っていく
カラスのように気まぐれな線を引いて

メタセコイヤの森が……
と口ごもると
ああ、そうだな
と太い声が答えた
いまどんな表情が
白髪混じりの頭と
耳と首と顎の豊かな線しか見えない
この顔のおもてを通ったのか

自分のとぐろをいかに美しく巻くか
ミリ単位で微調整するばかりなのに
図柄としては互いの尻尾を
身をよじらせて
うまく噛み合っているように見える

燃えあがった
と顔をきっと赤らめながら
言うそれは
メタセコイヤの森のこと
空のこと
それとも胸の奥に広がる街……

私は傷ついた遺伝子が繰り返し見てしまう
螺旋状の夢について
蛇行を繰り返しながら
乾いたアスファルトの上で
夢を見
鉛筆が描く線と不器用に交わっている


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする