【釜揚げそば】
岩手の「わんこそば」、長野の「戸隠そば」と並んで、日本三大蕎麦のひとつとして知られる「出雲そば」。その歴史は古く特に旧暦10月の神在月、全国から参集する神々を迎える「神在際」になると、出雲大社の門前の蕎麦屋台が並び、たくさんの参拝客が身体の温まる「釜揚げ」で蕎麦を食べていたいう。
出雲の「釜揚げそば」の特徴はひと目見てわかる黒っぽい色と濃厚な香りにある。出雲蕎麦では、蕎麦粉を作るときに「挽きぐるみ」といって、蕎麦の実を甘皮ごと石臼で挽く。そうすることで麺は色黒でこしがあり、香り豊かな蕎麦となる。出汁に「うるめいわし」を使うのも出雲流。うるめいわしの出汁が昆布出汁と絡まって、甘く上品な香り、旨味が生まれる。
【けんちんそば】
昔、禅僧が中国から伝えた普茶料理、中国名の巻煎(けんちぇん)が訛って「けんちん」になったとする説。
我が国、最初の禅の専門道場として西暦1253年に創建された鎌倉の名刹・建長寺の修行僧が料理を作っていて豆腐を間違って落としてしまい(崩れた豆腐を)入れた精進汁を住職に出したところ「これは美味しい「建長汁」と名付けよう。これが変化して「けんちん」になったという説がある。
奥久慈地方では、古来より滋養豊富な郷土食として日常家庭で蕎麦を打ち熱々の汁をぶっかけて食べていた。