【馬刺し】
「馬刺し」とは、馬の肉を薄く切り分けて生で食べる日本料理のことである。馬肉の刺身。
『歴史』
馬肉食の習慣のある地域は古来より馬の名産地であり、馬の生産と直結した文化が根付いていたと考えられる。文禄・慶長の役当時、補給線を断たれ食料が底をついた加藤清正軍がやむを得ず馬肉を食したのが始まり、帰国後、清正が領地である肥後国(熊本県)に広めたという俗説がある。今日では、馬刺しは熊本県の郷土料理として広く認知されている。
『現状』
馬肉を生で食べる習慣は熊本県の他、青森や山形県、福島県、長野県、山梨県に存在する。現在は、馬刺しの消費量は約2万3000トンであるが、日本で流通しているほとんどは、北米産、欧州産、あるいは生体を輸入している国内肥育のもので占められており、純国産は僅かである。
日本の馬肉輸入は、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、アメリカであり現在シェア60%の会社がオーストラリアから輸入している。
『生食用加工施設』
1998年9月11日に出された厚生省からの通知により、その生食用食肉の衛生基準に適合していると畜場から生食が認められた馬刺しが出荷されていいる。
2011年現在、生食用食肉の加工基準に適合し、生肉の出荷が認められたと畜場は全国で12カ所のみであり、全て生肉は馬肉のみを出荷している。
流通は、冷凍と冷蔵の2種類で行われているが、冷凍で流通するものは風味・色合いが激しく落ちてしまう。このような理由から、冷凍より冷蔵で流通している物のほうが、信頼出来る品物である確率が高い。
『食べ方』
馬刺しには、大別して「トロ」や「霜降り」、「赤身」があり、また一頭あたりから採れる量が少ないので珍重される「タテガミ刺し」や「こうね(タテガミの脂)」のほか、匂いがほとんどない「レバ刺し」や「タン刺し」などもある。「トロ」と呼ばれ部分は、バラ肉の極上部位であり、赤身に霜がふっている部分を「霜降り」と呼ぶ。また、馬のあばら部分の三層肉は「ふたごえ」と呼ばれ、コリコリとした食感がある。
馬刺しは、おろしショウガやおろしニンニク、刻みネギなどを薬味に醤油につけて食べるのが一般的である。また、馬刺しや炙った馬刺しを載せた寿司としても親しまれ、回転寿司などでも見掛けるようになった。
牛と異なり馬肉の沸点は低く、口内の温度でも十分溶けるため、霜降り肉でも刺身で美味しく食べられる。
【鹿肉】
「鹿肉」は、鹿の肉を食用としたものである。
『特徴』
鹿類の肉は、一般的に高タンパクで低脂肪という栄養学的特徴がある。さらに鉄分の含有量も非常に高い。
こうした特徴から、生活習慣病といった病気の予防につながる食品として注目されることもしばしばある。
鹿肉は、ヘモグロビンやミオグロビンといったヘム鉄を含むタンパク質を含有するため、ほかの畜肉と比較して肉の色が濃い赤となる。こうした赤色は血液を連想させてしまい消費者に敬遠されることもある。
また、世間では鹿肉は「硬く匂いがきつい」という評価が多いが、これは血抜きが悪いなど処理方法に問題があることが原因であり、実際は柔らかく匂いが穏やかという特性をもつ。
生食の場合はE型肝炎の感染源となることがあるため、加熱処理して食べることか必須である。
『鹿肉と栄養価』
「ヨーロッパ」
欧州などでは、鹿肉を始めとする狩猟野生動物の肉を高級レストランで特別に食べられる「ジビエ料理」「最上」の肉として扱われる。世界最大の鹿肉消費国はドイツで、年間消費量は4万~4万5000トンとなっており、輸入が半数近くを占める。
「日本」
日本では鹿肉の流通や消費はヨーロッパと比べて非常に少ない。日本の各地で、貴重なタンパク質、また薬肉として、鹿肉が食料とされてきた。北海道ではハンターによりエゾシカが捕獲され個人的に食肉として利用さされているに過ぎなかった。
しかし、1990年代後半から2000年代になって北海道て増えすぎたエゾシカによる問題が顕著になり、このエゾシカを資源として利用しようとする取り組みが活発化している。
エゾシカ肉は主にジンギスカンとして利用されることが多いが、淡泊でクセが少ないため様々な味付けで煮物・焼き肉などの料理に使える。
エゾシカ肉のカロリーは、牛肉、豚肉に比べて約三分の一、タンパク質はおよそ2倍。脂質は10分の1以下、鉄分は3倍と栄養面でも優れている。