【三方六】
栁月の代表的な銘菓「三方六」が発売されたのは、1965年。前年にオリンピックが開催され、日本全体に豊かさの波が押し寄せて来た時代だった。
当時の「柳月」は和菓子が主流になっており、創業者の田村英也会長は、洋菓子を含め新しいお菓子作りの開発を進めていた。そんな中、ドイツから職人を招き、本格的な技術の習得を目指していた時に、目を付けたのがバームクーヘンだった。
そしてパンが主食のドイツ人とは違う、ご飯が主食の日本人が好む、しっとりとした味わいのバームクーヘンにするため、改良を重ねていった。しかし、しっとりとした食感に近づけるほど重量が増し、生地が途中で巻き取る心棒から落ちてしまう。
それを見た田村会長は「これは開拓時代の薪に似ている。人々の疲れや心を癒やしたその薪のように、人々に寄り添うお菓子として生長させたい」と提案。
北海道開拓時代、開墾のための伐採が各地で行われた。真っ直ぐな木は建築のために、その他は薪に割り、厳しい冬の燃料としていた。
小口のサイズ三方がそれぞれ六寸であったため、三方6寸で「三方六」と呼ばれたのが薪の呼称としての始まり。
今に残る「三方六」とは、薪の寸法を表す、割り方の基準だったのである。それから百年の月日を経て開拓時代の思い出深い「三方六」という呼び名から、このお菓子が生まれた。
薪の形を模した特製バームクーヘンにホワイトチョコレートとミルクチョコレートをかけ、白樺の木肌を表している。
この三方六は世界菓子博覧会「モンドセレクション」で最高金賞を受賞している。お菓子の国・十勝の銘菓は北海道の代表的銘菓として認められている。
『切れ端』
三方六を心棒に巻き取り、完成後、両端をカットする必要がある。その切れ端が影のヒット菓子となっている。
製造工場である、音更町のスイートピアガーデンでは、数量限定の切れ端を求め、早朝から並ばないと入手できない。買えたらラッキーと言う切れ端、三方六そのままの味で自家用に、贈答にまで使う人もいるという。
【ファーストレディ洞爺】
「ファーストレディ洞爺」は、柳月製菓が作り、2008年7月、北海道洞爺湖サミットで各国の首脳夫人が出席したお茶会で振る舞われた。サミット開催前に全道の菓子店から集まったチーズケーキでただ一つ選ばれたのが、このケーキである。
北海道産クリームチーズとマスカルポーネチーズの拘りの2層仕立て。口当たりはふんわり柔らかく、厳選された北海道産の材料をふんだんに使用したからこそ生まれる、コク深くまろやかな風味。