道彦の散歩道

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11/08 売れ筋最前線⑳

2014年11月08日 | 日記

【宛名職人】

住所録に住所、氏名を打ち込み、支持通り操作するだけではがきに綺麗な文字が印刷される「宛名印刷ソフト」。

文化庁の昨年の調査によると、ソフトの普及などで年賀状の宛名を手書きず、印刷する人は4割を占める。

アジェンダが手掛ける「宛名職人」は20年余りで計700万本(パッケージ版)を売り、米アップル社のマッキントッシュ(マック)向けの宛名印刷ソフト市場でほぼ100%のシェアを誇る。

「アジェンダ」は1990年、札幌の別のソフト開発会社に勤めていた20~40代の技術者5人が設立した。30歳で社長に就いた松井文也(現会長)は「個人向けに独自のソフトを作りたかった」と当時を振り返る。

まずは電機メーカーなどからパソコン向けのプログラム制作を受託し、自社ソフト開発のための資金作りを進めた。3年後の93年、松井さんは社員にこう告げた。「初めての自社開発ソフトとして、宛名印刷ソフトを秋までに開発したい」。
念願のソフト開発に向けて一歩を踏み出した瞬間だった。だが、松井さんの胸中は複雑だった。バブル崩壊でメーカーからの受注が激減し、十分な資金を蓄える前に、収益源となるソフト開発を迫られることになったのだ。

松井さんは前の会社でワープロソフトの開発に携わり、宛名印刷ソフト作りのノウハウがあった。だが、既に90年ごろ他社がウインドウズ向けに印刷ソフトを製品化していた。印刷ソフトは一度、住所録を作ると、それを保存、更新し、何年も使えるのが特長の一つ。長く同じソフトが使われることが多く、先行した社が有利となる。

そこで目を付けたのが、他社が手掛けていないマック向けだ。住所や名前の長さに応じて文字の大きさや配置を自動的に整える機能の開発に力を注いだ。社員に届いた年賀状を研究し、札幌の書道家を訪ねて美しい住所の書き方などを教わった。

ソフトは予定道り半年足らずで完成した。ところが、販売してくれる会社が見つからない。一緒に開発したウインドウズ向けは札幌のゲーム開発会社が引き受けたが、マック向けは十数社から断られた。「マックのユーザーはデザイナーやクリエーターが多く、宛名書きなど自分でやる。ソフトの需要は少ない」というのが理由だった。

松井さんは自社販売を決断し「売れなければ開発は中止する」と決めた。当初の出荷本数は損益分岐の2千本。実際に発売すると、わずか2週間で品切れになった。問屋や販売店から追加注文が殺到し、社員総出で増産の手配や配達に追われ、最終的に1万本売った。松井さんは「宛名書きに困っている人が、これほどいるとは思わなかった。市場の大きさを感じた」と話す。

評判を聞きつけたアップル社は95年から3年間、マックのコンピューターに組み込む附属ソフトに「宛名職人」を採用。これによりマック向けの国内市場をほぼ手中に収めた。一度マックを買った人がその後、他社のソフトに乗り換えることはほとんどないからだ。

98年からは、ウインドウズ向けも自社販売に切り替えた。こちらは競合する社が多く、市場は飽和状態だ。現社長の千葉均さんは出版社に「年末にうる雑誌の付録に宛名職人を入れたCD-ROMをつけないか」と持ちかけた。提供するのは前年に発売した旧版。これからソフトを買う層にPRるのが狙いだ。

現在は数社と契約し、年間約100万部に挟み込む。「宛名職人の認知度が上がり、パッケージ版の売上にも波及している」という。

2012年にはアップル社「IPHONE」と、「IPAD」に対応したアプリを開発した。外出先でも手軽に年賀状を作成でき、パソコンソフトと同様にプリンターで印刷できる。

昨年発売した年賀ハガキは総発行枚数が約34億枚と、過去最高だった10年前より10億も減った。モバイル端末の普及で電子メールやツイッターで年賀の挨拶を済ます人が増えていることが背景にある。それでも千葉さんは「アプリが年賀状の良さを見直すきっかけになれば」と期待を寄せる。

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