【かす巻き】
「かす巻き」は、餡(小豆餡または白餡)をカステラ生地で巻いた菓子である。ところによっては「とら巻き」とも呼ばれる。
『概要』
「かす巻き」とは、長崎県(主に壱岐・対馬地方)名産の和菓子のことである。
名前の由来は、カステラ生地で餡を巻いていることからついたものという説が有力で、江戸時代に朝鮮貿易で栄えた対馬藩において参勤交代で江戸から戻った藩主の無事を家中で慶び、長旅の疲れを癒やすために考案されたとの言い伝えがある。
当時の日本ではまだ珍しかったカステラ生地の皮と、贅沢品であった餡をふんだんに使った高価な菓子であった。ちなみに、対馬のものはずんどうと太く、壱岐のものは細巻きである。
同じスタイルの菓子であるが、南島原市方面では、「とら巻」と呼ばれている。また、地域によっては、「かす巻き」と「とら巻」が併存し区別されている。(外の皮が素焼き生地の場合が「かす巻き」、その生地にザラメがまぶしてあるものが「とら巻」)。
長崎県外で「かす巻き」が親しまれている地域は、壱岐・対馬系の「かす巻き」では、佐賀県西部や島原系の「かす巻き」で熊本市の方でも認知されている。
因みに対馬と島原の食文化には共通点が多く、「かす巻き」以外に六兵衛など郷土料理で同じ名称の物があり、一説には島原の乱後の入植者で少なからず対馬出身者がいたのではないかと考えられている。
【むらすずめ】
「むらすずめ」は、岡山県倉敷市に本社を置く「橘香堂」が製造販売する和菓子である。
『概要』
「むらすずめ」は、クレープ状に焼いた外皮を裏返し、焼けている方の面に粒餡を載せ、半円状に丸めたものである。これは盆踊りなどでかぶる編み笠の形を模したもので、形状と大きさは餃子に近い。
江戸時代に天領であった倉敷の人々が豊作を祈願して踊った盆踊りが、まるで稲穂に群がる雀のようであったと言われたことから、明治初期に橘香堂の初代がこの逸話をヒントに作ったのが「むらすずめ」である。
現在では、吉備団子や大手饅頭などと共に、岡山県を代表する土産菓子として知られ、倉敷駅・岡山駅などのキヨスク、倉敷市・岡山市内のデパート・大型スーパー。土産物店などで販売されている。