道彦の散歩道

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ
毎日の事件事故の記録

11/01 売れ筋最前線⑬

2014年11月01日 | 日記

【じゃがポックル】

サクッとした軽い歯応えの後に、ジャガイモの旨味とシンプルな塩味が口の中に広がる。2003年発売され、北海道土産として人気の「じゃがポックル」。カルビー千歳工場だけで造られ、販売も道内のほか空港免税店などに限られる。
主力品で864円と決して安くないものの、売れ行きは好調だ。カルビーは商品別の年間売上高を明らかにしていないが、「じゃがポックル」は既に数十億円に達しているとみれ、看板の一つに育った。

カルビーは元々、ポテトチップスや「じゃがりこ」といった「比較的安価でどこでも手に入るスナック菓子」が得意分野。畑違いの土産市場への参入は一筋縄ではいかなかった。北海道支店新規販売課長の長浜さんは「石にかじりついてでもやりぬこうと思った」と振り返る。

1990年代後半から生産体制の見直しを全国で進めていたカルビーは00年、千歳工場の主力だった東北向けのポテトチップスの生産を他工場に移す案を固めた。
「このままでは千歳工場の雇用を守れない。新製品を生み出さなくては」。当時、北海道地区の新規事業開拓を担当していた長浜さんの危機感は強かった。

目を付けたのが土産物市場だった。洋菓子系甘い品が多い北海道土産の中で、塩味は目新しい。土産店が並ぶ新千歳空港まで工場から約7キロと近い地の利もある。
とはいえ普通のスナックは土産に向かない。ちょうどその頃、上司から耳打ちされた。「創業者の松尾孝・名誉会長が“じゃがりこは堅すぎる
”と指摘し、新たな商品を作らせようとしている」ーー。

長浜さんはすぐ、東京にある会長直轄の研究所を訪ね、そこで差し出された開発中の試作品に驚いた。
ジャガイモを皮をむかずに切り、キツネ色に揚げてある。堅すぎず軟らかすぎず、絶妙な食感。「こんな旨いものが作れるのか」。早速、千歳工場で製品化することを社内で働きかけ、02年9月、「じゃがポックル」の前身「ピュアじゃが」の発売にこぎつけた。
ターゲットは「旅行好きの20~30代の女性」。デザインを工夫し、外箱にケーキの箱のような持ち手をつけた。

ところが、この工夫があだとなった。持ち手を付けたせいで外箱が丸みを帯びてしまい重ね置きが出来ず、土産店で店頭に高く積んでもらえない。カバンに入れにくいせいか、空港のゴミ箱に外箱だけが捨てられているとも聞いた。

結局、カルビーは3ヵ月ほどで商品の大幅変更を決断する。新商品名は「大地のかけら」ど、いくつもの案の中から絞り込んだ。決めてとなったのは、アイヌ語のコロポックルから連想する北海道らしさと、語感の良さだ。外箱は4センチ弱の薄型に切り替え、中身も従来の40グラム4袋入りから、20グラム8袋入り(現在の主力は18グラム10袋入り)に小分けにした。ようやく「じゃがポックル」が産声を上げたのは、03年6月だった。

狙いは当たり、人気は尻上がりに高まる。現在の生産能力は当初の約40倍で、千歳工場全体の4割を占めるまでになった。土産店運営の全日空商事が今年初めて発表したゴールデンウイーク期間中の土産売上ランキングによると、「じゃがポックル」は全国73カ所の同社系列店で、計約2万4千個を売り一位に輝いた。同社は「アジア人観光客にも人気が広がっている」と分析する。

選ばれる理由は何か。長浜さんは「客の声に耳を傾け続けたから」だと思う。寄せられた声を基に、塩分は当初に比べ2割減らし、塩の粒もきめ細かくした。食感も当初より軟らかい。こうして磨いた品質を維持しようと、仕上がりにムラの出やすい大型製造設備も使わずにきた。
工場長は「コスト高でも小型機械を使い続けている。品質が落ちては意味がない」と話す。

カルビーは12年前、ピュアじゃがの発売に合わせ、「ポテトファーム」という新ブランドをつくった。
「安価なスナック菓子」というイメージを払拭するため、社名をあえて外す賭けだった。結果は吉と出て知名度は上がり、有色ジャガイモを使った姉妹品「じゃがピリカ」や、乾燥スープ「ほっとポテト」など商品も増えている。

ブランド管理を担当する遠藤さんは「道産食材をふんだんに使って新商品を送り出したい」と力を込める。
目指すは「北海道を代表するお土産ブランド」。第二、第三のじゃがポックルを生み出すため、千歳工場の挑戦は続く。

Img_2879

Img_2882

Img_2881

Img_2885

Img_2887