「シーボルトと川づくりシンポジウム」という不思議なタイトルに魅せられ、11日(土)波佐見町まで行ってきました。
はじめに前シーボルト記念館長の土肥原弘久さんの基調講演、
続いて、九州大学大学院農学博士の中島淳さんの「シーボルトと川棚川の魚たち」という講演がありました。
シーボルトは、当時の西洋医学の最新情報を日本へ伝えると同時に、
生物学や地理学など多岐にわたって日本を研究したことでも知られていますが、
特に、生物標本またはそれに付随した絵図は、当時ほとんど知られていなかった日本の生物について重要な研究資料となり、模式標本となったものも多いそうです。
動物に関しては、『日本動物誌』として刊行され、トキ、ニホンオオカミ、マダイ、イセエビなど初めて世界に報告されています。
魚類の記録は350種にのぼり、標本の多くは長崎県産でした。
新種が登録される場合、その模式標本(基準となる標本)が採集された産地は、模式産地と呼ばれ、重要な場所として位置づけられるそうです。。
シーボルトの標本により、長崎県は日本の多くの魚の模式産地となることから、学問上、長崎の魚類は大変貴重な存在となっているらしい。
シーボルトは、長崎県産の新種として淡水魚19種を紹介。
そのうちの11種は現在も長崎県に生息。
いなくなった8種のうち4種は琵琶湖の魚らしい(シーボルトの勘違い、整理ミス?)が、
残り4種は県内から絶滅してしまったようです。
そして、これら15種の淡水魚が長崎県内のどこの川で採取されたのかというのは、
川の勾配その他いろんな要素から、川棚川を中心に収集されたらしいと考えられるそうです。
ということで、次のように結論づけられました。
そこで、まだ川棚川に生き残っている11種の魚の紹介があり、
写真の他にオイカワ、カマツカ、メダカ、イトモロコ、モツゴ、アブラボテ、カネヒラetc
などの説明がありましたが、魚に縁のなかった私にはメダカ以外は未知の世界で・・・
しかし、次の魚のことを聞いて驚いた!
「川棚川水系ではかなり少ない」と書かれていますが、
現在生息が確認されているのは、石木川だけ。しかもダムによる水没予定地に…
で、質疑応答のときに確認しました。
「ダムができたら、ヤマトシマドジョウは川棚川から絶滅してしまうんですか」と。
中島先生曰く、「断定はできませんが、その可能性はかなり高いです」
私は、先生がおっしゃった言葉、「シーボルトの見ていた川棚川の魚は180年経ったいまこれだけになった。これから180年経った時どう変化しているだろうか」という言葉がとても印象に残りました。
石木ダムは佐世保市民に水を供給するために造られると聞いていますが、
川棚川にとって貴重な魚が絶滅したら、佐世保市民として心が痛みます・・・
というようなことを言いました。
すると、
長崎県の河川設計に携わっているという男性(名前が聞き取れませんでした)が、発言。
皆さんのおっしゃっていることはごもっともで反論するつもりはありません。
しかし、多くの皆さんは総論賛成各論反対です。環境を守り生物を守りたいという。
しかし、自分たちの生活に関わってくると違ってくるのです。
生き物のためなら、多少の洪水も渇水も我慢できますか?
さきほど佐世保の方が石木ダムのことを言われましたが、それなら
川棚町の人には床上浸水があっても、生物を守るためだからしかたないよね、
佐世保市民は渇水で1,2か月時間給水が続いても、生物を守るためだからいいよね、
と思って頂かなくてはならない…という趣旨の発言があり、会場はちょっとザワザワ。
司会者から「そういう議論にもっていくべきではないと思います。さきほどの人は、
180年後のことを考えると、将来に責任のある今の大人として心配しているわけで…」
というフォローがあり、とても嬉しかったです。
最後に映し出された写真には、水の青と岸辺の緑が生い茂っていました。
こういう風景がたくさんの生物を生かすのですね。
コンクリートの護岸や、ましてダムなどもってのほか…
と会場にいる多くの人が感じていたのではないでしょうか。
コメントありがとうございます。
私は子どもの頃川には縁がなかったので、そんな思い出はないので、うらやましいですね。
つい先日、岩屋郷のあたりでピクニックをしたのですが、こどもたちがとても川に興味を持ち、楽しんでいました。
といっても夏ではないので水に入るわけではないのですが、川で魚をつかまえたり泳いだりできれば、もっともっと大喜びしたことでしょう。
そんな経験を今の子どもたちにも、未来の子どもたちにも、もっとさせてあげたいですね。
もともとはもっと上流にいました
小さい頃から川に親しんできました。
子供の頃に「ドジョウ」といって小学校の側溝で捕まえていたこのドジョウ
こんなに希少種だったとは
ダムについては触れません
なつかしいなぁ
学校から帰ると川へ行ってガサガサやる思い出
今はもう出来ないよなぁ
門外漢の私は、中島博士のお話を100%理解できたわけではありませんし、聞き落としなどもあったかと思います。
博士も自信を持って模式種の魚が川棚川にいたとおっしゃったわけではなく、あくまでも可能性が高い…という表現をされていました。
ところで、昨日、石木の知人からメールが届いたのですが、石木川でシマドジョウを2匹も見つけたと書かれていました。
魚の名前をきいても全くその姿が思い浮かばない私など、いかに川と接してこなかったか…いまさらながら実感しているところです。
しかし、遅ればせながら、川や海や森など自然を自然のままで残しておくことの大切さに気づきました。
あんなか細い石木川にダムなどとんでもないと思っています。
同じお考えだと知り、心強いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
さて,たまたまこのHPに立ち寄りましたので,生物的見地を述べさせていただきます。確かにシーボルトはTemminckやSchlegelといった生物学者に日本に生息する生物の調査を行わせています。この結果,話にある通り,長崎県内で採集された魚類等が模式種となったものもあります。希少生物調査もこれらの記録やこれまでの学術論文を基にして調査を行っております。この項にある川棚川は県内においても有数の河川であり,多種の魚類が生息しています。カマツカ,イトモロコ,アブラボテは非常に貴重な種といえます。ちなみにカネヒラは県内においてここ以外の記録はありません。しかも調査では全く見つかりません。陶土が流れ込んだり,河川改修等などの影響があったりして産卵床となるイシガイやドブガイが生息できなくなったたからでしょうか。
話は変わりますが,これまで数度なく地球は寒冷化し,縄文時代後期には大村湾はもっと小さな湖だったと言われ,川棚川を初め大村の郡川や東彼杵の彼杵川,佐世保市の小森川などは川棚川と繋がっていたと考えられています。ということは川棚川にいるとされる魚類はこれら近隣河川にもいるはずですね・・・。しかし,ヤマトシマドジョウやアブラボテは数河川で見つかっていますが,モツゴは諫早の干拓地のみでしか見つかりません(おそらく種苗放流)。カネヒラ,ヌマムツにいたっては佐賀県に行かない限り見つかりません(佐賀も長崎も肥前です)。生息環境もこれら3種に合う環境は川棚川にはありません。カワヒガイは数年前まで県内の某所で見つかっていますので県内絶滅とするにはまだ無理があります。オイカワは琵琶湖などからのアユと共に種苗放流されたとも言われ,県内の自然度の高い河川ではまず見つかりません。中島博士のおっしゃる論拠を直接伺ったわけではないので,詳しくは分かりませんが,川棚川の個体が模式種である可能性を完全否定できないものの,挙げられた種の模式産地がほぼ川棚川とするのはかなり強引な感じがしますね。
ちなみに,石木川のみでしか生息できない種とありますが,本流には同所的に見られるムギツク,イトモロコ,カマツカが生息しており,同じような生息環境はありますよ。今日も県内某所で数個体捕まえています。きっと精査されていないだけです。私も今年度中に再々調査します。漁業権があると面倒くさいのですが・・・。すみません,長くなりました。