11日から14日にかけて、九州に降った大雨による被害の凄まじさ…
テレビには、踊り狂う濁流や、一面茶色の海と化した平野部などが映し出され、
日に日に死者や行方不明者の数も増えていきました。
地震や津波の猛威ではなく、台風でもない。
たかが雨、梅雨前線の活動が活発になったことによる大雨に、
私たち人間の生活は、こんなにも弱いものだったんですね。。
気象庁は、この記録的な大雨を「平成24年7月九州北部豪雨」と名付けました。
この4日間の雨量は、熊本県の阿蘇市乙姫で816.5ミリ、大分県日田市の椿ヶ鼻で656.5ミリ、
福岡県の八女市黒木町で649ミリだったそうです。
水につかったり壊れたりした家は、2800棟以上、死者22人、行方不明者8人。
そして、大きな被害は出ていないものの、実は佐賀市でも記録的な集中豪雨を観測しています。
13日昼過ぎから雨脚が強まり、1時間の雨量はなんと91ミリ!
1990年7月の大水害の時の72ミリを上回ったのだそうです。
ちょうどその頃、実は私は佐賀市にいました。
外の異変には気付かず、のんきに友人とホテルのバイキングを楽しんでいました。
中学時代の親友Tさんとは、年に1,2回デイトします。
福岡に住んでいて、仕事や介護で忙しい彼女と会うのは、いつも佐賀です。
佐賀は私たちの中間地点ですし、
佐賀城公園と本丸資料館が私たちのお気に入りの場所だからです。
いつものように10時半に駅で合流した私たちは、すでに雨が降り始めていたので、
とりあえず駅構内の喫茶店でおしゃべりを楽しみ、雨が止んだら佐賀城へと思っていたのですが、
お昼に近づくと雨脚は先ほどより強くなり、予定変更。
駅のそばのホテルでランチバイキングを楽しむことにしました。
今回は一年ものブランクがあったので、積もる話は互いにいっぱいあって…
お客さんが少なかったこともあり、安心してじっくりと食事も会話も楽しみました。
もう充分、満腹、満足、とレストランを出てホテルの出口まで来たら…
前の道路は水浸し。
もちろん雨は土砂降り。
ジャブジャブと歩いて駅へ向かいました。
さあ、それからが大変!
駅に着いたら、上りも下りも不通。
「運転再開の見込みは今のところたっていません」とのこと。
バスセンターへ行ってみると、
福岡方面は高速バスが動いていたので、友人はそれに乗って帰ることに。
しかし、長崎・佐世保方面は動いていないとのことで、
私は友人を見送ってから、もう一度JRの改札口へ。
駅の構内放送は音響設備が悪いのか、何と言ってるのか聴き取れません。
みんな駅員さんをつかまえて訊いています。
「いつになったら動くんですか?」「今日はもう動かんと?」
「いえ、そんなことはありません。レールの点検が終わらないと走らせるわけにはいかないので…
点検が始まったらだいたい1時間ほどで終わる予定なんですが、まだ始まっていないようで…」
そのやり取りを聞いて、私はコンビニへ行き、お茶とお菓子と文庫本を買いこみました。
そして、ホームに止まっている電車に乗り込み、そこでじっくり待つことに。
しかし、1時間以上経っても全く動き出す気配無し。
そこへ夫から電話があり、肥前山口から先は動いているとのこと。
肥前山口までなら路線バスが走っているのではないかというので、もう一度バスセンターへ。
訊いてみたら、確かに走っているけど「時間はめちゃくちゃのようですよ…」と。
でも、動いているだけマシだと思い、しばらく待ってやっと来たバスに乗り込みました。
運良く座れたので、安心したのか走り出してすぐにウトウト。
目が覚めると、バスは止まったまま全然動こうとしない。
窓の外を見ると、ギョギョ!
まるで厳島神社みたいに水の中に社が…
そこに友人からメール。
今着きました。そっちはどう?今どこ?
どこと言われても…よくわからないけど、川のような道路上にいるよ~
と返信。
だんだん水嵩は増していき…
ここにいてはヤバイと思ったのか、どの車も泳ぐように前に進み、
その動きで水嵩は一時的にさらに増し…
こんな状態に!
やがてピークは過ぎて水も引き始めましたが、ただひたすら渋滞は続き、
肥前山口の駅に着いたのは21時を過ぎていました。
平常では35分ほどの距離を、なんと3時間半かけて辿り着いたというわけです。
肥前山口から早岐、早岐から佐世保と電車に乗り継ぎ、10時過ぎにやっと佐世保へ到着。
自然界の現象の前に、いかに私たちは無力であるか、痛感しました。
ほんのちょっとの大雨でも、こんなに大混乱するのに、
「この川の基本高水は〇〇m3/秒なので、ここにダムを造れば洪水は防げます」とか、
「ここには活断層も走ってないし、〇〇mの堤防もあるので、津波がきても大丈夫。
この原発は安全ですから再稼動させましょう」など、よく言えるものです。
自然の威力を見くびっているのか、人間の科学力を過信しているのか…
愚かとしかいいようのない人たちが国の舵取りをしていることの恐ろしさを感じます。
2,3日前に届いた「ペシャワール会報No.112」の中に綴られていた、
中村哲医師の言葉が思い出されました。
ともすれば、
科学技術が万能で、人間の至福を約束するかのような
錯覚に陥りがちではなかっただろうか。
また、自然を無限大に搾取できる対象として生活を考え、
謙虚さを失っていなかっただろうか。
自然はそれ自身の理によって動き、人間同士の合意や決まり事と無関係である。