いやー、ほんとに思いがけなくて、びっくりしてねー。
そうですか~お口に合うといいんですが…
こんな新鮮な海の幸、僕らはめったに口にできないから、
息子にも電話して、持たせてあげましたよ。
えー!そんなにたくさんはなかったでしょう?
先生たちが召し上がる分が足りなくなったんじゃ…?
いえ、十分です。十分いただきました。
何よりも、Mさんの気持ちが有難かった。
今日はほんとに嬉しかった。ほんとに幸せだった。
あまりにも喜んで頂いて、却って恐縮してしまって、汗・・・
一昨年、中学時代の恩師の喜寿を祝っての同窓会以来、私たちは毎年集まることにした。
先生がお元気なうちにもっとお話を聞いておきたいと思ったから。
でも、実際に集まると、それぞれの仕事上の悩みや、家族の話や、趣味の話など、
話題は尽きることがなく、先生はそれをニコニコと笑顔で聞いて下さるばかり…
今年もつい一月ほど前に集まったのだが、その時、
先生が最近散歩の途中で倒れ、入院なさっていたことを知った。
病院での精密検査の結果はそれほど心配するものではなかったと聞いたけれど、
少しでもより元気になってほしくて、牡蠣を贈ることにした。
牡蠣は「海のミルク」と言われるほど、ビタミン、ミネラルたっぷりの滋養食品だし、
ここ佐世保には九十九島産の美味しい牡蠣があり、昨年もお歳暮で重宝したので、
先生にお歳暮を贈るのは初めてだったけど、時節柄自然でいいかなと思った。
冷や汗が出るほど感謝の言葉を頂いた2日後の今日、先生からのお歳暮が届いた。
牡蠣のお返しは「おかき」だった。
「もち吉」の缶入りおかき。来年の干支の兎の箸置き(有田焼)も入っていた。
カキにかき…しゃれのつもりか…?
電話でお礼を言った後確認してみると、
「ああ、そう言えばそうだね。僕の方はあんなありふれたものしか思いつかなくて」
と、全くの偶然だったらしい。
そして再び、牡蠣が美味しかったこと、心遣いがとても嬉しかったことを口にされた。
心遣い?と思っていたら、どうやらそれは、
牡蠣と一緒にナイフ、軍手、レモンなどが箱詰めされていたのだが、
それをセットしたのが私だと勘違いなさっていたようだ。
あ、違います。それはお店の方で箱詰めして送って下さったので…
という私の声と、先生の嬉しそうなお声が重なって、届いてなかったかも。
でも、それならそれでかまわない…という気持ちになってしまって、先生の声を遮るのは止めた。
先生が喜んで下さる。幸せだと思って下さる。
そのことが大事で、そのことが嬉しい。
事実よりも大事なことも時にはある。
そして、すっかり忘れていた大事な言葉も思い出した。
実るほど首を垂れる稲穂かな
二日前とは違った冷や汗がまた噴き出してきた。