佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

フリースペースふきのとう

2008-09-16 | 佐世保・長崎

20年前のクリスマスイブの日、ここ佐世保の片隅に「ふきのとう」が生まれた。

寒くて暗い日だったと、代表の山北さんは回顧する。

山北さんは、当時不登校児の親として不安で胸が押しつぶされそうな毎日を送っていて、少しでも理解しあえる仲間が欲しいと願って、グループを立ち上げた。

その「ふきのとう」は、勉強会や講演会、相談会など幅広く活動し、どんどん成長した。

5年後には、「いじめ登校拒否110番」を設置し、

16年後には「フリースペースふきのとう」を開所し、

18年後にはNPO法人として登録、

そして、20年後の今年、様々な記念行事を企画している。

 

昨日は「いじめ・不登校から学ぶ」というテーマで、佐世保市最大のイベントホール「アルカス佐世保」を一日貸し切っての大イベントだった。

 

午前中は全体会で、メインは尾木直樹さんの講演会だったが、総合司会も実行委員長あいさつも、フリースペースに通う子どもたちが堂々と行い、「ふきのとう」の活動の素晴らしさが窺い知れた。

 

中でも、わかりやすく翻訳された「子どもの権利条約前文」の朗読は、とても感動的だった。

紹介したい。

 

  地球上には 差別に苦しみ 悔し涙を流している子どもがいます

  「あきらめろ」と おとなに言われた子どもがいます

  立ち上がろうとし 打ちのめされ絶望した子どもたち

  戦争で傷ついた 子どもたち

  学校に押しつぶされそうな 子どもたち

  ただ 何となく生きている 子どもたち

  寒くて震えている 子どもたち

  生まれてから一度もお腹がいっぱいになったことがない

  親の顔を知らない 売り飛ばされて こき使われて

  そんな子どもたちがいます

  子どもは「人間」です

  この「やくそく」は そのことを認めるところから始まります

  「人間」だから 差別を受けない

  「人間」だから 権利を持っている 

 

 

基調講演を行った尾木直樹さんは、教育評論家としてTVなどでもおなじみの方だが、こんなにユーモアたっぷりのお話をなさる方だとは知らなかった。

約1時間半の間、笑いに包まれリラックスした中で、私たちは日本の異常な事態をしっかり教えられた。

 

近年(正確な年号は聞き逃した)、ユニセフが行った調査結果の棒グラフが示された。

席が遠くて、国の数も正確にはわからないが、10以上は並んでいた。

中ほどの1国だけが、抜きんでいて、他はドングリの背比べといった感じ。

 

その調査は、「あなたはよく孤独を感じますか?」という問い。

思春期の子どもたちを対象にしているのだから、Yesと答える子ももちろんどの国にもいる。

 

が、ほとんどの国が、5~10%の間であるのに対し、日本だけが29.8%、2位の国の約3倍の数値である。

最下位のオランダは2.9%だから、オランダの10倍の子が孤独感を抱えていることになる。

 

もっと衝撃的だったのは、国内調査。

2006年、厚労省が静岡県で行った調査では、中学生の4人に1人が鬱的傾向にあり、中2の女子に限れば3人に1人の割合だったとか!

 

しかし、これはある公立中学校1校だけで行ったペーパーによる質問形式の調査だったので、より確かなものを…と、昨年北海道大学が行った調査がある。

小学校8校、中学校2校を対象とし、専門医師が出向いての詳しい調査である。

その結果、

小学4年=1.6%、小5=2.1%、小6=4.2% と学年が上がるごとに数字は増え、なんと中1=10.7%

これは有病率の数値である。

「うつ的傾向」ではなく、「うつ病」と医師が下した数値なのだ!

中学生の10人に1人は鬱病?

俄かには信じ難く、尾木先生の言葉と言えども信じ難く、帰宅してネットで調べたが、その調査はしっかり報じられていた。

そのころ私がニュースを見落としていたか、見聞きしても忘れてしまうほど私の意識が低かったのだろう。

 

また、日本が「こども権利条約」を批准したのは1994年だが、1998年には国連から2回目の勧告を受けているとのこと。

そういえば、「憲法を読む会inにいざ」で学んだことがあったっけ・・・。

帰宅後確認してみると、「児童の権利に関する委員会」より49項目にわたるという厳しい内容の通達が、日本政府に勧告されていた。

例えば、

19委員会は、家庭内における、性的虐待を含む、児童の虐待及び不当な扱いの増加を懸念する。委員会は、児童の虐待及び不当な扱いに関する全ての事案が適切に調査され、加害者に制裁が加えられ、とられた決定について周知されることを確保するための措置が不十分であることを懸念をもって留意する。委員会は、また、虐待された児童の早期の発見、保護及びリハビリテーションを確保するための措置が不十分であることを懸念する。

21.先進的な保健制度及び非常に低い乳児死亡率を考慮に入れつつも、委員会は、児童の間の自殺数が多いこと、この現象を防止するためにとられた措置が不十分なこと、及び、学校外を含めリプロダクティヴ・ヘルス教育やカウンセリング・サービスへの十代の児童によるアクセスが不十分なこと、青少年の間でHIV/AIDSが発生していることを懸念する。

24.委員会は、学校における暴力の頻度及び程度、特に体罰が幅広く行われていること及び生徒の間のいじめの事例が多数存在することを懸念する。体罰を禁止する法律及びいじめの被害者のためのホットラインなどの措置が存在するものの、委員会は、現行の措置が学校での暴力を防止するためには不十分であることを懸念をもって留意する。

等々・・・。恥ずかしいのは通り越して、情けなく、子どもたちに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

確かに、この国は子どもの自殺が多い。異常に多い。

2006年に自殺した未成年者の数は886人だったそうだ。

その内いじめで自殺した中学生の数は81人、小学生でさえ14人もいたと記憶している。これは以前たまたまネット上で見た数字を記録したものだが、あの頃は、特にいじめによる自殺が連鎖反応のように蔓延していたので、今はもう青少年の自殺件数は減少しているものと思い込んでいた。

 

しかし、今年は硫化水素による自殺が激増し、1~5月までですでに517人が亡くなっているとのことで、そのうちの60%は若者だそうだ。

 

なぜ、このような悲しい日本になったのだろう。

尾木さんは、教育行政の貧困や教育現場の質の低下を指摘しながら、一方でこれらの子どもたちを救うのは、身近な大人が子どもたちにどう接するかの大切さを説かれた。

一番大切なのは、あるがままを受け入れること

子どもたちのあるがままの姿を受け入れたら、その子の中に自己肯定感が生まれる。自己肯定感を育てたら、自然とエンパワーメントが備わってくる。

それは大人にも言える…と。

 

帰りに尾木さんの著書を買った。サインをしてもらった。

"ありのままに"、"今を輝く"と書かれていた。

 

コメント
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