貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

二重の視線

2021-04-09 16:40:38 | 日記

二重の視線

令和3年4月9日(金)

 冬景色を詠む。

 しかし、冬景色の中に、芭蕉自身が

入っている。

 自分の幻のを見つめている。

唯見るだけでなく、その中に自分を見る

別な眼の感覚がある。

 そんな一句。

冬の日や 

  馬上に氷る 

     影法師

 冬の弱い日射しの中、馬上で凍り付い

たような自分の影法師が見える、の意。

 ○ 貞享四年 作
 ○ 笈の小文
 ○ 豊橋の在、天津の海岸。

 海岸に冬の寒風が吹き抜ける。

 馬に乗る自分の姿を、冬の太陽が

照らして影法師を作っているが、

その影法師も氷るかのよう。 

 そして、幻の眼で、馬上の自分を見ると、

自分自身も馬上に氷り付いてはないか。

 芭蕉はこの二重の眼でもって、

自分の姿を見つめる。

 初句は、

さむき田や 

  馬上にすくむ 

      影法師