ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ニッキ・パロット・トリオ & ハリー・アレン @岡山蔭涼寺

2018年12月02日 | ライブ
【Live Information】


 「コントラバス弾き歌い」というと、現在ではエスペランサと、このニッキ・パロットが最も知られた存在でしょうか。
 地元岡山のジャズ発展を長年陰から支えている平井さんから、「ニッキ・パロットが来るよ」と教えてもらったとき、やはり「一度は見てみたい」と思ったことでした。
 ベーシストとしてとか、ボーカリストとして、というより、「ニッキ・パロットというタレントの存在」を見たい、という方が当たっているかもしれません。
 ニッキのトリオと、現代ジャズ・ジャイアントのひとりハリー・アレンの共演とあって、入れ替え制2セット、そしてそれなりのチケット代にも関わらず、会場はさすがに満席状態でした。
 ニッキ・トリオのヤコブ・フィッシャー(guitar)や、ジョン・ディ・マルティーノ(piano)目当てのジャズ・ファンも多かったようです。



リハーサル風景


ファースト・セットはニッキとジョンのデュオでスタート。次の曲でヤコブが入り、また次の曲で御大ハリーが加わる、という構成。ハリーの登場時にはさすがに拍手もひときわ高まります。
セット・リストは、日本で馴染みのあるスタンダードがほとんどです。
途中、ある曲でいきなり照明が全て落ちました。
エンディング前だったので、自分も含めて会場みんなは演出かと思ったんです。ところが曲が終わっても照明は戻らず次第にザワザワ、それでやっと「トラブルだ」と気づいたわけです。
でもバンドのみんなはそのアクシデントをも面白がっていた感じもあり、また客席でiPhoneの照明をつける人がいたり、それに対してニッキが笑顔で「Thank you~」と応えたりで、逆に会場はフレンドリーな雰囲気に包まれたくらいです。





 ニッキは、とにかくキュートでした。終始ニコニコ顔なのがちょっぴりときめいたりするんです。
 1960~70年代のアメリカのコメディドラマに出てくる、美人でユーモアと愛嬌がある奥様役がお似合いな感じです。
 彼女は、どちらかというとアンサンブルに気を配っているようなプレイに徹していたようでした。派手フレーズやソロはほとんどなく、演奏ぶりは堅実そのものでした。でも、だからといって下手でもなんでもなく、素晴らしいソロ・ワークにはやはり目が釘付けになりましたし、ピッチの正確さや、グルーブ感、アンプラグドに徹しての楽器の扱いなど、流石と思わされるところは多かったです。
 歌もなかなかいい感じでした。たしかに派手さはないのですが、丁寧で少し淡々とした感じがあって、ニッキ自身の持ち味が自然に出ていたように思います。
 ともすれば音楽の世界もビジュアル重視の風潮が濃くなっているようですが、ニッキは(当然ではありますが)そんなことには目もくれず、ただただ自分の音楽を奏でているだけなのだろうと思いました。


 そして、流石はハリーの存在感と安定感。評判違わず、といった感じです。
 音色といい、その歌い方といい、「心地良い」以外の何物でもなかったですね。
 知的というか、会社の重役だとか医師だとかのような風貌も、なんとなくハリーの持つ安心感みたいなものに一役買っているのでしょう。


 ピアノのジョンの演奏には初めて接したのですが、大胆に間を取り、かつメロディを最大限に生かそうとしているようなピアノには感銘を受けました。まるで秋の夜の静けさの中でひっそり鳴く鈴虫の音色のようでした。
 



 
 とても雰囲気のよいサウンドに満足しながら、この夜のちょっとした幸せの仕上げに炙りチャーシューの旨いラーメン屋さんに寄って帰ろう、と会場をあとにしたのでした。



2018年11月15日 岡山蔭涼寺
ニッキ・パロット・トリオ & ハリー・アレン

 ニッキ・パロット(Nicki Parrott/bass, vocal)
 ジョン・ディ・マルティーノ(John di Martino/piano)
 ヤコブ・フィッシャー(Jacob Fischer/guitar)
 ハリー・アレン(Harry Allen/tenor-sax)






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