ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

角銅真実 Live at 岡山禁酒会館

2019年09月04日 | ライブ

【Live Information】


 ライブ・タイトルは「砂の毛布」。  
 ふだんあまり夢を見ないという角銅さんの見た、とても気持ちの良い夢から取ったものだそうです。
 聴いているぼくもその砂の毛布にくるまれたかのような、夜でした。


 打楽器奏者の角銅さんですが、この夜はギターまたはピアノの弾き語り。オリジナルとカバーをまじえながらの約90分のステージでした。
 セット・リストを決めずにステージに臨んだそうですが、それだからこそ「生まれたてのステージ」な、瑞々しい空気が醸し出されていたのかもしれません。
 貫頭衣をイメージさせるワンピースもユニークでした。


     


 ライブ会場は、岡山市民ならなじみのある「禁酒会館」。
 大正時代に建てられ、岡山大空襲をもくぐりぬけて生き残っている、ドイツ風の3階建ビルです。
 この禁酒会館のレトロ感と、角銅さんの透明感のある歌がよく合うんです。


 クーラーから出る音が気になるため冷房を消し、窓を開けてのライブとなったのですが、面白いことに、屋外の車や市電の音、横断歩道の視覚障碍者用のメロディなどなどが、いつの間にかまるで角銅さんの音楽の一部のように聴こえてくるんです。  
 ちょうどエンディングのフェルマータのあたりで市電が通り過ぎたり、サウンド・エフェクトのように人の声や車・市電の音が曲にかぶっていたり。  
 そう感じさせてくれるような歌声、あるいは曲の数々だったのだと思います。


     


 澄んでいて、静かで細やかで、よく通る声。
 本に例えるならば、童話とか、絵本のような雰囲気をもつ個性的な曲の数々。
 今はなきアトラス・ピアノ社製作のピアノ「モルゲンスタイン」の音がこれまた異界の寂しさみたいな味があったり。
 

 メトロノームやオルゴールなどを使ったしかけは、ピンク・フロイドとかカンタベリー系のプログレッシブ・ロック、ミュージック・コンクレートなどを思わせるところがありました。
 「優しく和やかに弾き語る」だけではない、前衛的なもの、ルナティックななにか、異界との狭間にいるような気にさせるなにか、などなどが自然な感じで曲の背後に潜んでいるような気がしました。


     


 ライブのあとの妙な満足感は、本を読んだあとの気分に近いような気がします。  
 会場は満席でした。
 県外からも聴きに来ている人がいたようですが、たぶんこの「妙な満足感」のとりこになった人たちなんだと思います。  
 この「砂の毛布」には、またくるまってみたい、と思わせられた夜でした。


 角銅真実さんはパーカッション奏者です。  
 パーカッション&コーラスとして「cero」をサポートするほか、「ORIGINAL LOVE」などのアルバムにパーカッショニストとして参加したり、原田知世さんなどに詞を提供するなど、幅広く音楽制作に携わっています。  
 いま多方面から大きな注目を浴びている「新星」です。



◆角銅真実ライブ 「砂の毛布」
 2019年9月2日
 岡山 禁酒会館
 [出演] 角銅真実 (vocal, guitar, piano, sound-effect)





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