ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

アンプラグド~アコースティック・クラプトン (Unplugged)

2007年05月14日 | 名盤

 
 これは、エリック・クラプトンが1992年3月に出演した「MTVアンプラグド」の模様を収録したライヴ・アルバムです。
 「アンプラグド」は全世界で1500万枚を売りつくす大ヒットとなり、エリックは1992年度のグラミー賞で「アルバム・オブ・ジ・イヤー」など6部門を受賞しました。


     


 「アンプラグド」とは「プラグを抜いた」の意味で、文字通りアコースティックな楽器を使用した演奏のことです。
 落ち着いた、渋味のあるステージです。バンドと聴衆の間の空気がとても近く感じられます。
 聴衆の反応がとても温かくて、ライヴ会場であるスタジオ全体には、終始リラックスした一体感があります。


 プレイヤーが趣味に走ってしまうと、えてしてひとりよがりな音になってしまいがちなものですが、エリックは好きなブルーズを演奏しながらも、濃すぎもせず薄すぎもせず、という絶妙なバランスを保っているようにも思えます。
 もともと泥臭いものだったブルーズを、オリジナルを踏襲して演奏しながらも聴きやすい感じに仕上げているのは、やはりクラプトンのセンスの良さに負うところが大きいのではないでしょうか。
 レイド・バックしたチャック・リーヴェルのピアノも心地よく、バンド・サウンドに大きく貢献していますね。
 水割り片手に、灯りを少しおとした居間で聴きたい感じです。
 
 
     


 オープニングの「サイン」は、肩慣らしといった風情のインストゥルメンタルです。場の雰囲気がほどなく温まるのが分かります。
 2曲目、3曲目と1950年代のブルーズを続けた後に演奏されるのが、「ティアーズ・イン・ヘヴン」です。


 1991年、エリックの4歳になる息子コナーが、住んでいた高層アパートの53階から転落死するという事故が起こりました。音楽に打ち込むことで息子を失った痛手から立ち直ろうとするエリックは、精力的に活動を続けます。自然とオリジナル曲も生まれるのですが、その中の1曲が亡き息子に捧げられた「ティアーズ・イン・ヘヴン」なんですね。
 しっとりとしたメロディー、憂いを含んだエリックのヴォーカルがとても魅力的です。歌詞を聴く(読む)だけでもしんみりとする曲です。
 「ティアーズ・イン・ヘヴン」は大ヒットし、その結果、若い世代をも巻き込んだ「クラプトン人気」が高まりました。


     
 
 
 6曲目の「ノーバディ・ノウズ・ユー」はデレク&ザ・ドミノス時代にもレコーディングしていますが、ここではややダルに渋くキメています。ちょっとジャジーな感じ。
 続く「いとしのレイラ」は説明不要の名曲ですね。このアルバムではミディアムのシャッフルでブルージーに演奏されています。
 「ロンリー・ストレンジャー」や「ランニング・オン・フェイス」には、メロディーだけで泣ける温もりがあります。
 「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」は、チャック・リーヴェルのピアノも聴きものの、とても楽しいブルーズ・ナンバーです。途中で鳴るカズーの音色に愛嬌があります。
 ラストの「ローリン・アンド・タンブリン」はクリーム時代にも演奏しているブルースの名曲。ここではドブロ・ギターの音色が、泥臭くてアーシーな雰囲気を醸し出しています。


     
 
 
 「アンプラグド」は、「ロック・ギタリスト」として活動を続けてきたエリックが自分の原点に立ち返り、自身が憧れていたブルーズをリスペクトした作品だと思います。彼のリスペクトするビッグ・ビル・ブルーンジーやロバート・ジョンソンなどのブルース・マンの作品を取り上げていることでもそれが窺えます。
 リラックスしてアコースティック・ギターを操り、好きなブルーズを奏でるエリックはとても幸せそうです。
 貫禄あるギター・プレイだけでなく、枯れたヴォーカルにもしぶい味わいがあります。


 ドラッグやアルコールへの依存、離婚、交通事故、息子の不慮の死と、エリックは度重なるアクシデントに遭っては苦しみ、そして周囲の援助もあって、苦しんでは蘇っています。「アンプラグド」には、不測の事態から立ち直った末のクラプトンが描かれているんですね。
 このアルバムは、ミュージシャンとしてのエリックはもちろん、人間としてのエリックの温もりを感じることのできる作品だと言えるでしょう。
 


◆アンプラグド~アコースティック・クラプトン/Unplugged
  
■リリース
    1992年8月18日
  ■歌・演奏
    エリック・クラプトン/Eric Clapton
  ■プロデュース
    ラス・タイトルマン/Russ Titelman
  ■録音メンバー
    エリック・クラプトン/Eric Clapton (lead-vocals, acoustic-guitar, dobro, kazoo)
    アンディ・フェアウェザー・ロウ/Andy Fairweather Low (acoustic-guitar, mandolin, harmonica)
    チャック・リーヴェル/Chuck Leavell (piano, harmonium)
    ネイサン・イースト/Nathan East (bass, backing-vocals)
    スティーヴ・フェローン/Steve Ferrone (drums, percussion)
    レイ・クーパー/Ray Cooper (percussion)
    ケイティ・キッスーン/Katie Kissoon (backing-vocals)
    テッサ・ナイルス/Tessa Niles (backing-vocals) 
  ■収録曲
    01 サイン/Signe (Eric Clapton)
    02 ビフォー・ユー・アキューズ・ミー/Before You Accuse Me (Bo Diddley)
    03 ヘイ・ヘイ/Hey Hey (Big Bill Broonzy)
    04 ティアーズ・イン・ヘヴン/Tears in Heaven (Eric Clapton, Will Jennings)
    05 ロンリー・ストレンジャー/Lonely Stranger (Eric Clapton)
    06 ノーバディ・ノウズ・ユー/Nobody Knows You When You're Down and Out (Jimmy Cox)
    07 いとしのレイラ/Layla (Eric Clapton, Jim Gordon)
    08 ランニング・オン・フェイス/Running on Faith (Jerry Lynn Williams)
    09 ウォーキン・ブルース/Walkin' Blues (Robert Johnson)
    10 アルバータ/Alberta (Traditional, Huddie William Ledbetter)
    11 サンフランシスコ・ベイ・ブルース/San Francisco Bay Blues (Jesse Fuller)
    12 モルテッド・ミルク/Malted Milk (Robert Johnson)
    13 オールド・ラヴ/Old Love (Eric Clapton, Robert Cray)
    14 ローリン・アンド・タンブリン/Rollin' and Tumblin' (Muddy Waters)
  ■チャート最高位
    1992年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、イギリス2位、日本5位
    1992年年間チャート アメリカ(ビルボード)36位
    1993年年間チャート アメリカ(ビルボード)3位
    1990年代ディケイド・チャート アメリカ(ビルボード)30位




 


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4 コメント

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クラプトン♪ (Nob)
2007-05-14 14:04:51
この人の人生も波乱万丈。
ジョージ・ハリスンとも、いろいろありながらも友情が続いてましたよね♪
若い頃よりも今の方が断然素敵です。
一番好きな曲は、やっぱり 「レイラ」♪
Nobさん (MINAGI)
2007-05-14 16:23:40
ホント、エリックにはいろんな出来事が起こりましたね。
クリスチャンのわりには酒やドラッグに溺れるし。(^^;)
そして何かあるたんびに誰かが支えになってくれてる。
これはエリックの人柄なんでしょうか。
ぼくもできることならエリックみたいに渋く年を取りたいもんです。渋カッコいい(^^)ですよね。そういえば去年だったか一昨年だったか、子供さんが生まれたそうですね。まだまだ若いなー、エリック。

むろん、ぼくもレイラ大大大好きですよ~♡。
クラプトンはアイドルですよ~ (カルロス)
2007-05-15 21:34:10
去年のジャパンツアー、見にいったんですよ。
やっぱり相変わらずカッコ良かったです!
アンプラグドの時もめっちゃかっこ良くて憧れましたね。
カルロスさん (MINAGI)
2007-05-16 08:42:39
エリックのライブ聴きに行ったんですね。東京だと11月か12月の日本武道館ですね。いいなー。(^^)
エリックって、来日する時はいつも10~12月の間なんですよね。何か理由でもあるのかしらん。
アコギを持つエリックのシブいこと!ティアーズ・イン・ヘブンを早速コピーしましたよ。だいぶ適当ですけど(^^;)

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