ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

キャプテン・アンド・ミー (The Captain And Me)

2007年04月25日 | 名盤


  ぼくが最初に好きになったアメリカン・ロック・バンドが初期のシカゴと、ドゥービー・ブラザーズです。
 

 ロサンゼルスのイーグルスに対するサンフランシスコの人気バンドとして、1970年代のウェスト・コースト・サウンドを代表する存在だったのが、ドゥービー・ブラザーズです。その彼らの初期の傑作が「キャプテン・アンド・ミー」です。
 サイケデリック・ロックの発信地であるサンフランシスコで生まれたバンドながら、サイケな部分は微塵もなく、フォークやブルースなどの伝統的音楽を下地にした豪放磊落なロックを聴かせてくれます。


     


 バンド名は、まだ彼らが売れていない頃、マリファナ(カリフォルニアの俗語で『ドゥービー』)を回しのみしていた時に、誰かが言った「まるでオレたちはドゥービー・ブラザーズだな」という言葉がその由来となっています。


 バンドの柱は、ブルースやロックン・ロールをルーツとするトム・ジョンストンと、フォークに根ざした音楽を追求していたパット・シモンズのふたりです。好対照の音楽的指向を持つトムとパットが、ドゥービーズをリードしているんですね。このふたりは、お互いに影響を及ぼし合いながら、自分のカラーを存分に発揮しています。
 豪快でソリッドなトムと、繊細でアコースティックなパットの対比をうまくまとめたプロデューサーのテッド・テンプルマンの手腕も光ります。


 アメリカ西海岸の乾いた空気の香りと肌ざわりが感じられるところがドゥービーズの魅力です。ハード・ドライヴィンなギターのカッティングと分厚いコーラス・ワークがとても印象的。疾走感あふれる演奏に乗った軽快なメロディと、美しいハーモニーは、まるでハイウェイを車で突っ走る時のような爽快感を味あわせてくれます。


     

     


 収録されているのは全11曲。うちトムの作品が6曲、パットの作品が3曲です。
 ギターによる16ビートのカッティングと、疾走する汽車を連想させるようなハーモニカ・ソロがカッコいい「ロング・トレイン・ランニン」、耳に残るギター・リフを持つ、勢いのあるハード・ロック「チャイナ・グローヴ」、なんといっても目立つのが、ヒットしたこの2曲です。
 底抜けに明るいハード・ロック「ウィズアウト・ユー」や、ブルージーな「イーヴル・ウーマン」、パットの個性がよく表れているアコースティック・ナンバー「サウス・シティ・ミッドナイト・レディ」なども、とても印象に残ります。


     


 建設中の近代的なハイウェイの下、ドゥービーズの面々が開拓時代を思わせるいでたちで4頭立て馬車に乗っている、というユニークなジャケット・デザインは、アメリカのルーツ・ミュージックであるフォークやブルースなどを携えつつコンテンポラリーなロックを展開するドゥービーズの音楽を示唆しているようにも見えますね。


 このアルバムは、春の陽気に誘われてドライヴに出かけようとする時など、良き相棒になってくれると思いますよ。


◆キャプテン・アンド・ミー/The Captain And Me
  ■歌・演奏
    ドゥービー・ブラザーズ/The Doobie Brothers
  ■リリース
    1973年3月2日
  ■プロデュース
    テッド・テンプルマン/Ted Templeman
  ■収録曲
   A① ナチュラル・シング/Natural Thing (Johnston)
    ② ロング・トレイン・ランニン/Long Train Runnin' (Johnston)  ☆全米8位, 全英7位
    ③ チャイナ・グローヴ/China Grove (Johnston)  ☆全米15位
    ④ ダーク・アイド・ケイジャン・ウーマン/Dark Eyed Cajun Woman (Johnston)
    ⑤ クリア・アズ・ザ・ドライヴン・スノウ/Clear As The Driven Snow (Simmons)
   B⑥ ウィズアウト・ユー/Without You (Hartman, Hossack, Johnston, Porter, Simmons)
    ⑦ サウス・シティ・ミッドナイト・レディ/South City Midnight Lady (Simmons)
    ⑧ イーヴル・ウーマン/Evil Woman (Simmons)
    ⑨ オコーネリー・コーナーズ/Busted Down Around O'connelly Corners (James Earl Luft)
    ⑩ ユカイア/Ukiah (Johnston)
    ⑪ キャプテン・アンド・ミー/The Captain And Me (Johnston)
    ☆=シングル・カット
  ■録音メンバー
   【Doobie Brothers】
    トム・ジョンストン/Tom Johnston (guitars, harmonica, synthesizer, vocals)
    パット・シモンズ/Patrick Simmons (guitars, synthesizer, vocals)
    タイラン・ポーター/Tiran Porter (bass, vocals)
    ジョン・ハートマン/John Hartman (drums, percussion, vocals)
    マイケル・ホザック/Michael Hossack (drums, percussion)
   【guests】
    ビル・ペイン/Bill Payne (piano, organ, keyboards)
    ジェフ・バクスター/Jeff 'Skunk' Baxter (guitar, pedal-steel-guitar, steel-guitar)
    テッド・テンプルマン/Ted Templeman (percussion)
  ■チャート最高位
    1973年週間チャート  アメリカ(ビルボード)7位 
    1973年年間チャート  アメリカ(ビルボード)17位



 


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8 コメント

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Unknown (bugalu)
2007-04-25 21:01:15
こんちは。

ワタシ、前期ドゥービーズは大好きなんです。
ある意味、理想のロックバンドだと思ってます。
バランスがいいんですよね、メンバー的にも、楽曲的にも。

このアルバムも、豪快な楽曲と、「South City Midnight Lady」「Dark Eyed Cajun Woman」のような渋い楽曲がバランスよくって、とても好きなアルバムです。
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はじめまして (オンデン1970)
2007-04-25 21:18:39
こんにちは。
ハマっこさんのところから来ました。
これからも時々寄らせてもらいます。
よろしくお願いします。
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いやぁ~好きです! (カルロス)
2007-04-25 22:46:01
この頃のドゥービーって最高にカッコイイ音してますよね!
僕もレコード擦り切れるまで聴いてました(ホントに擦り切れた)
今でもしょっちゅう聴いてるから古いって感じが全然しないけど、最早四半世紀以上も前なんですね。唖然・・・
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bugaluさん (MINAGI)
2007-04-26 08:42:08
こんにちは(^^)

>前期ドゥービーズ
 ブルーズとフォーク、豪快さと繊細さが絶妙にブレンドされてますよね。
 やっぱりトムとパットの相反する個性がうまく釣り合ってたからでしょうか。
 いいバンドの条件のひとつが、素地となる音楽+α、というかある程度の音楽的幅広さだと思うんですが、ドゥービーズにもそれが当てはまると思うんですよね(^^)。
 
 
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オンデン1970さん (MINAGI)
2007-04-26 08:46:28
いらっしゃいませ(^^)。はじめまして。

さっきお邪魔してみました。すごいレア物をお持ちなんですね。羨ましいです。

いつでも遊びに寄ってくださいね。
こちらこそよろしくお願いいたします(^^)。
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カルロスさん (MINAGI)
2007-04-26 08:54:49
>この頃のドゥービー
 カルロスさんもドゥービー・フリークでしたか~(^^)
 ほんと、カッコいいバンドですよね。
 レコード擦り切れるまで聴く、ということは、ほとんどドゥービーズに恋していた、と見ましたが。
 30年以上も生き続ける音楽って、やっぱりドゥービーズは普遍性のあるバンド、というか、すごくエネルギーのあるバンドだったんだと思いますね。
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ドゥービー♪ (Nob)
2007-04-26 15:29:43
一番好きな曲は「ロング・トレイン・ランニン」です。
これ、初めて聴いた時は衝撃的でした♪
一番好きなアルバムは、この後の「ドゥービーストリート」。これはCDも買い直しました、
その後は、持っていますがあんまり聴いていないです・・・


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Nobさん (MINAGI)
2007-04-26 18:29:24
「ロング・トレイン・ランニン」、カッコいいですよね(^^)。
汽車とか列車にちなんだ曲には不思議とハーモニカをフィーチュアしたものが多い気がします。

>ドゥービーストリート
 このアルバムからマイケル・マクドナルドが入ったんですよね。「イット・キープス・ユー・ランニン」、けっこう好きです。
 これより後のAORドゥービーは、好みが分かれるところでしょうね。
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