ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

デヴィッド・ギルモア

2022年07月23日 | ミュージシャン

【Live Information】


ロック・バンドの花形といえば、リード・ボーカリストにリード・ギタリスト。
野球で例えるならエースと4番打者。
ぼくの中学~高校時代は、「家にビデオデッキがあるよ」なんていう友だちはまだほとんどいなかったし、ミュージシャンの映像を観ることなんてこれまたほぼありませんでした。
だから、貴重な映像のなかのギター・ソロのときには、ギタリストの左手(つまり指板の上を動き回るほう)を食いつくようにして見たものです。
なんであんなに指が動くんだろう。
カッコいいな~、って。
でもそんな時に限って画面は右手ばっかり映すんです。


ぼくが20歳前後の頃のギター・ヒーローといえば、当時「三大ギタリスト」と言われたクラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックをはじめとして、リッチー・ブラックモア、マイケル・シェンカー、エドワード・ヴァン・ヘイレン、スティーヴ・ルカサーなどなど。
そうだ、忘れちゃならないカルロス・サンタナに、ニール・ショーン、デュアン・オールマン、ジョー・ウォルシュ。
ブリティッシュ・ロックだと、ブライアン・メイ、ジミ・ヘンドリックス、アルヴィン・リー。。。
キリがありませんね。
彼らに共通していえるのは、誰もが一目置くテクニックと、「ギター・ヒーロー」の名にふさわしい、まさに「スター」然とした存在感があったところでしょう。
そのなかで、なんと最近になってもまだ「好き」の度合いが増しつつあるギタリストが、「派手さ」「スター性」などにおいては多少地味な印象がぬぐえないデヴィッド・ギルモアなのです。





デヴィッド・ギルモア。(あるいはデイヴ・ギルモア)
プログレッシヴ・ロックの雄、というより、いまやロック界のモンスター・バンドとも目されている、ピンク・フロイドのギタリストです。
初期のピンク・フロイドのギタリストはシド・バレットでしたが、シドが健康面で悪化をきたしたため、バンドの補強としてデヴィッドに白羽の矢が立った、というわけです。
フロイド加入後のデヴィッドは、ギタリストとしてはもちろん、ヴォーカルや曲制作においてもバンドの重要な存在となります。
ロジャー・ウォーターズがフロイドから脱退した1985年12月以降は、デヴィッドがリーダーとしてバンドを率いました。





ギルモアは、超絶技巧を誇るタイプのギタリストではありません。
しかし耳に残って容易に消えることのない彼のギター・プレイは、多くのロック・ファンに受け入れられています。
ギルモアのギター・ソロで、ぼくにとって印象深いものは、やっぱり「タイム」(『狂気』収録)が筆頭でしょうか。
そして、「エコーズ」(『おせっかい』収録)や、「狂ったダイアモンド」(『炎』収録)。


ロングトーンをうまく生かした、味わい深いメロディックなフレーズの数々。
内面から滲み出ているかの如き歌心あふれるプレイは、どこを切ってもブルースの香りに満ちています。
クリアーな音色で弾かれるギルモアのギター・ソロを聴いているときの幻想的な感覚は、醒めかけの夢の中にまだ半分とどまっている時の気分によく似ているのです。
ギルモアのギターが生み出している音楽のことを『叙情的』と言うのでしょうね。
「ピッグ」(『炎』収録)や「マネー」(『狂気』収録)、「吹けよ風、呼べよ嵐」(『おせっかい』収録)などでは、ロック・スピリットにあふれた攻撃的なプレイも聴かせてくれます。
また「コンフォタブリー・ナム」(『ザ・ウォール』収録)におけるギター・プレイは、「DiditalDreamDoor.com」が選出した「偉大なギターソロトップ100」で1位に、2009年に「Guitar World」誌が選出した「50グレイテスト・ギター・ソロ」では4位に選ばれていて、ギルモアのベスト・プレイとも言われています。





21世紀の今日では、驚異的なテクニックを誇るギタリストが次々と生まれています。
しかしギルモアのソロは決して埋もれてもいないし、埃をかぶった過去の遺物でもありません。
時に吠え、時にすすり泣き、時には熱く語るギルモアのギター。
「目がくらむような輝き」とか「聴く者を圧倒する」などの大仰な表現は似つかわしくないかもしれません。
しかし、派手ではなくとも失われることのない独特の輝きを持った、唯一無二の世界がそこにはあるのです。




















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