ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ラプソディー (Rhapsody)

2009年05月03日 | 名盤

 
 昨日のニュースで「ボス」こと忌野清志郎さんの訃報を知りました。
 ある過去の体験から、生あるものの寿命は必ず尽きる、とあきらめているのですが、そうは言っても人ひとりが亡くなることはとてもとても寂しいものです。
 実は普段はこのブログには、なるべく逝去のニュースは書かないようにしているのです。音楽に関連した訃報ならどの方も平等に扱いたいのですが、そうするとこのブログは「訃報ブログ」になってしまいかねないからなのです。ですから、それぞれ心の中でお別れさせて頂いているのですが、「ボス」に関してはその病との闘いぶりと持ち前の反骨精神に敬意を表し、ひとつの時代が終わったと思えることから、追悼の意を込めて過去記事を再録してみます。


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 1978年から80年頃にかけてメンバーを入れ替えたRCサクセションは、ロック・バンドとして再生しました。ロック・バンドたるRCサクセションの実質的なデビュー・アルバムが、この「ラプソディー」です。
 「ラプソディー」、辞書を引いてみると、『形式にとらわれない、はでな器楽曲』とあります。まさにこのアルバムにピッタリの言葉ではないでしょうか。


 チャボこと仲井戸麗市が加わった1978年頃から、RCサクセションはライヴ・ハウスなどで人気を高めてゆきます。80年1月には、渋谷のライヴ・ハウス「屋根裏」でのギグを4日間にわたって満員にし、大成功を収めました。
 そして迎えたのが、1980年4月5日、東京・九段の久保講堂での、このライヴです。
 当時のRCサクセションは、なぜかレコーディングではおとなしくまとまってしまっていたため、何とかライヴ時の迫力が伝わらないものか・・・と考えた結果、ライヴを収録してそれをレコードにしよう、ということになったんだそうです。


     


 「ラプソディー」は、『日本ロック史上最高のライヴ・アルバムを選べ』と言われると、真っ先にその名が出てくるもののひとつだと思います。ライヴ盤がスタジオ盤を超えた数少ないアルバムとも言っていいでしょう。とにかく、一番ハジけていた時の彼らの姿が垣間見えるんです。メンバーのふてぶてしい面構えが見られるジャケット写真もカッコいい。
 オープニングで観衆をあおる清志郎、のっけからエンジン全開です。1曲目の「よォーこそ」ですぐ音の渦の中に引きずり込まれます。最高のウェルカム・ソングですよ、これ。


     


 ソウルとブルーズとが絶妙にブレンドされた骨太のロックが飛び出してきます。RCサクセションはまさに「KING OF ROCK」。
 R&Bの洗礼を受けている清志郎の音楽観と、従来のJ-ポップ(ニュー・ミュージック)の概念から逸脱した反骨精神旺盛で率直な歌詞が気持ちいい。ギラギラした輝きを持つこのバンドの精神、ロックンロールでパンクですね。
 ソウルフルなボス・清志郎の圧倒的な存在感は、例えていうならミック・ジャガーとか、御大JBらを彷彿とさせるものがあります。


 当時、「最強のライヴ・バンド」と言われていただけあって、スタジオで加工されていることを割り引いても、素晴らしく臨場感のあるアルバムに仕上がっています。
 バックの演奏は堅実で、ホットで、非常にパワフルです。不良っぽくて、エネルギッシュ。ローリング・ストーンズを思わせるところがありますね。サポートの小川銀次の驚異的テクニックのギターと、サックスの梅津和時の少々エキセントリックなサックスがバンド・サウンドに大きく貢献しています。


     


 全9曲、どれもステキです。中でもぼくのお気に入りは「よォーこそ」、ピーター・ガンに似たイントロを持つ「ボスしけてるぜ」、「雨上がりの夜空に」、そして清志郎が奥さんとのことを唄った曲「ラプソディー」です。~バンドマン歌ってよ/バンドマン今夜もまた/ふたりのためのラプソディー~という一節、泣けますね。


     
     『ラプソディー・ネイキッド』


 最近、このライヴの未発表9曲とDVDがついた「ラプソディー・ネイキッド」が発売されて好評を呼んでいるようです。MCまで含めた、このライヴの全貌を聴くことができますよ。


◆ラプソディー/Rhapsody
  ■歌・演奏
    RCサクセション/RC Succession
  ■リリース
    1980年6月5日
  ■録音
    1980年4月5日(東京 久保講堂)
  ■収録曲
  ■録音メンバー
   [RCサクセション]
    忌野清志郎(vocal)
    仲井戸麗市(guitar, vocal)
    小林和生(bass)
    GONTA-Ⅱ(keyboards)
    新井田耕造(drums)
   [Guest Musicians]
    小川銀次(guitar)
    梅津和時(sax)
  ■チャート最高位
    1980年週間アルバム・チャート オリコン47位



RCサクセション 「よォーこそ」


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10 コメント

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Unknown (まり)
2009-05-04 17:58:57
愛読ブログめぐりをしてキヨシローがいかに凄かったか実感しています。

東京に住んでたなら絶対にライヴへいってただろうな~と残念な気持ちです。


R&Bに少しでも注目する若者がいればいいなと思いました!
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まりさん (MINAGI)
2009-05-04 21:34:31
いや~、昨日今日とブログ巡りしてたら、清志郎さんを惜しむ声があふれかえってましたね~
改めて彼の存在の大きさを感じました。
今日は朝一で「ラプソディー」とRCのベスト「EPLP」を聴いてましたよ。
ぼくも病気になったらああいうふうに前向きに闘えるだろうか・・・。自問自答したこの数日でした。
清志郎さんのフォロワー、もっともっと出てきてほしいですね。
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またひとつおりこうさんになっちゃった (Dulge)
2009-05-04 23:59:30
MINAGI師匠、ありがとうございます!
さっそくこのアルバムチェックします!
RCサクセションで検索したのですがあまりにヒットする曲数が多すぎて選びかねていたので・・・
ワタシにとっては坂本教授との「いけないルージュマジック」
当時小学生だった私には、彼らのキスシーンに、見てはいけないものを見てしまったようなヘンなドキドキが記憶に残っています。
うちの親父より1年上の訃報、まぁ、ロックンローラーとしては死に様すら粋なのかなぁ・・・
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おはようございまする (Nob)
2009-05-05 09:35:44
今まであまりご縁のない清志郎さんだと思っていましたが、今回のニュースで、ご自宅がかなり近かった事を知りました。
街中ではすれ違っていたかも知れないですわ。
ご葬儀はかなり斬新だったようですね。
彼を送るには相応しかった気がします。
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RC&Timers (photo)
2009-05-06 12:05:23
復活のニュースで喜んでいたんですが、こんなに早く訃報を聞くことになるとは思いませんでした。

J・レノンの訃報に接したのと同じくらいのショックです。
私にとっては、日本で唯一といえる真のロック・ミュージシャンでした。

今、曲を聴きながら、改めてスゴさを感じています。
涙とともに。
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こんにちは (ろ~ず)
2009-05-06 14:05:47
きっとMINAGIさん、書くんじゃないかな?と思ってました。

ニュースを知ってから彼の事を書いた記事を何度も何度も読んでいました。そんなヘビーなファンというわけではないな、と自分では思ってたのですが、清志郎さん、RCサクセションが深く自分の中に入ってたのに驚きました。

サックスは梅津和時だったんですね。

TBさせていただきました。
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Dulgeさん (MINAGI)
2009-05-06 14:36:07
師匠だなんて支障だなんて、照れて穴があったら入って掘りまくって金塊でも掘り当てたくなります~(汗)
RCではぼくはこのアルバムが一番好きかな。でも「Please」を推す声も大きいみたいですよ。
なんというか、皆同じ方向へ群れたがるこの世の中で、反骨精神を持ち続けた清志郎さんはやっぱり真のロックンローラーだったんじゃないかと思えます。病に真っ向から立ち向かって力尽きた、っていうのもロッカーらしいですよね。
それにまだ50代、早すぎます。悲しい、というより、彼がこの世から姿を消すのはとても寂しいことです。
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Nobさん (MINAGI)
2009-05-06 14:44:06
こんにちわんこ♪
そうでしたか~、ご近所さんでしたか。
音楽好きでしかもご近所なら今回の訃報もより身近に感じられたのではないでしょうか。
そうそう、なんでも戒名をつけてないとか。あの世でも「忌野清志郎」の名で通すのかなぁ。
型にはめられるのが似つかわしくない彼には、ああいう葬儀がふさわしいのかもしれませんね。
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photoさん (MINAGI)
2009-05-06 14:53:08
そうなんですよね、「完全復活祭」を行ったばかりだったのに・・・。
転移して再び治療を始めた、というニュースを聞いてからあとはほとんどニュースらしいニュースを聞いてなかったので、気がかりだったのですが。。。
ロックの世界から大きな文化の波を発信した功労者のひとりですよね。
ストーンズみたいにいつまでもヤンチャでロックし続けて欲しかったなあ。
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ろ~ずさん (MINAGI)
2009-05-06 15:03:17
ぼくなんかも、コアなファンの方々に比べたら取るに足らない存在なんですが、それでも清志郎さんの死は大きな灯りがひとつ消えたような、そんな寂しさを感じます。
いわゆる売れ線に走ったわけでもなく、自分のやりたいことをやり続けた、そんな生き様も尊敬に価すると思います。
そうそう、サックスは梅津さんや片山広明さんらと一緒にやっていた時期があるんですよね。今、梅津さんはドラマーの新井田さんと組んでバンドをやってるらしいですね。
こちらからもTB送らせて頂きました~
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