「サテンの夜」は、いわゆるオールディーズもののコンピレイション・アルバムに収録されることが多いので、ご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。
このムーディー・ブルースというバンドは1964年にデビュー、同年末から翌年にかけて「ゴー・ナウ」の大ヒットを放つなど、初期はR&Bをベースにしたロック・グループとして活躍していました。
その後メンバー・チェンジを行い、1966年にヘイワード、ピンダー、ロッジ、エッジ、トーマスの5人編成となりました。このメンバー・チェンジ以前と以後では全く別のバンドに生まれ変わったと言えます。ちなみに、この時脱退したのが、のちウィングスのメンバーとなるデニー・レインです。「ゴー・ナウ」はウィングスでもレパートリーに取り上げられました。
ちょうどその頃、英国デッカ・レコードは音響的に広がりのある「デラミック・サウンド」を完成させ、これを大々的に広めるという目的で、実験的レコードを発表させるためのバンドを探していました。そんな時に、プロデューサーのトニー・クラークがたまたまヘイワードの作った曲を聴き、オーケストラとロックが融合したアルバムを作ることを思いつきます。こうして生まれたのが「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」です。
『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』(1967年)
「サテンの夜」は「デイズ・オブ~」の中に収録されています。この曲は日本やイギリスで注目されたものの、アメリカでは曲が長すぎる、という理由で「チューズデイ・アフタヌーン」がシングルとしてリリースされました。
「サテンの夜」が生まれてから5年後の1972年、アメリカ西海岸のあるラジオ局でオンエアされたことから火がつき、この曲は徐々にチャートを上昇、最終的には全米2位となる大ヒットを記録しました。
「サテンの夜」は8分の12拍子で、テンポはミディアム・スロー。導入部から柔らかなストリングスが鳴っています。オーケストラとメロトロン、コーラスが曲にクラシカルなカラーをもたらしていて、まさに「夜」の雰囲気を醸し出しています。中間部はアコースティック・ギターとメロトロンをバックにしたフルートのソロ。ブリティッシュ・ロック特有のほの暗い雰囲気が漂います。
アコースティックなその曲調によく映えるヘイワードのクリアーなヴォーカルが、雰囲気をよりいっそう高めています。
「デイズ・オブ~」はある日の朝から夜までの「人の一日」を歌詞と音にして表したコンセプト・アルバムです。共演しているのはロンドン・フェスティヴァル・オーケストラで、編曲・指揮はピーター・ナイトによるものです。
「サテンの夜」は、ドボルザークの「新世界」のロック・ヴァージョンを意識して作られました。こういった構想は、再出発をきったムーディー・ブルース自身の発想だということです。歌詞は、ジャスティン・ヘイワードが、贈られた白いサテンのシーツからインスピレーションを得て書き上げたものだそうです。少々難解な歌詞ですが、この頃はサイケデリックの全盛期であり、抽象的でトリップ気味の詞は当時の空気を表していると言えるでしょう。
ムーディー・ブルースは、アルバム全体をひとつの作品として提示するという方法論をいち早く指向したことで、プログレッシヴ・ロックの先鞭をつけたバンドのひとつとも言えます。「デイズ・オブ~」こそ、そうした彼らの出発点であると言っていいでしょう。
[歌 詞]
[大 意]
夜は白いサテンに包まれて 決して終わることはなく
幾度も書いた手紙は 決して送られることはない
美しいものを私はいつも見過ごしていた。 この目がその前にあるというのに
真実とは何か 私はもはや言うことはできない。
なぜなら 愛しているから そうなんだ 愛しているんだ
ああ なんてあなたを愛していることか...
人々に目をやる 手をとりあっているのもいる
私が今経験していることを あの人達ならわかってくれる
私に言おうとするものもいる 擁護できない考えを言おうとしている
あなたはなりたいものに 帰するところ なるものなのだ
そして 私は愛している そうなんだ 愛しているんだ
ああ なんてあなたを愛していることか...
ああ なんてあなたを愛していることか...
■サテンの夜/Nights In White Satin
■歌・演奏
ムーディ・ブルース/Moody Blues
■シングル・リリース
1967年11月10日
■作詞・作曲
ジャスティン・ヘイワード/Justin Hayward
■プロデュース
トニー・クラーク/Tony Clarke
■録音メンバー
ムーディー・ブルース
☆ジャスティン・ヘイワード (acoustic-guitar, lead-vocals)
☆マイク・ピンダー/Mike Pinder (mellotron, backing-vocals, gong, narration)
☆ジョン・ロッジ/John Lodge (bass, backing-vocals)
☆グレアム・エッジ/Graeme Edge (drums, percussion, backing-vocals)
☆レイ・トーマス/Ray Thomas (flute, backing-vocals)
ピーター・ナイト&ロンドン・フェスティヴァル・オーケストラ
■チャート最高位
1967年週間チャート アメリカ(ビルボード)103位、イギリス19位
1972年週間チャート アメリカ(ビルボード)2位、アメリカ(キャッシュボックス)1位、イギリス9位
1972年年間チャート アメリカ(ビルボード)32位、アメリカ(キャッシュボックス)82位
『サテンの夜』ムーディー・ブルース(ライブ)
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ジョニーデップが主演する映画のオープニング曲を聴いてこちらに辿り着きました。
イギリスのロックは全く分かりませんが、この曲の様な雰囲気が大好きです。
記事を読ませて頂き大変勉強になります。ありがとうございます!
自由に感じれるところが音楽の素晴らしいところですね。
そんな情景のサテンの夜のPVがyoutubeにあったよ。
検索して一度見てみます。
最近昔録音しておいたラジオの洋楽ベストテン番組を、youtubeにアップすることを覚えた関係で、当時(71年前後)の話をされているブログやホームページを同世代(多分)として、懐かしみながら、読んでいます。こちらへは、ストーリーイン・ユア・アイズのつながりで飛んできました。
いまのところ、とりあえず、TBS、ニッポン放送のベストテン番組を1本ずつあげてあります。今は文化放送みのもんたのベストテンをアップしている途中です。全部上げるには、まだしばらく時間がかかりそうですが、宜しければ、是非聴いてみてください。
ニッポン放送ポップスベストテンとか入れれば、検索で引っかかると思いますので、よろしくお願いします。
どうぞ、歌詞をお持ちになってください。
なつかしい曲ですね。LP持ってますよ
解説してくださって、ためになりました。
私のブログで歌詞を紹介しても良いでしょうか?
ムーディーズの中で「サテンの夜」だけは、結構あちこちのコンピレーション・アルバムで見かけます。
今ではそれだけこの当時を代表する一曲だと受け止められているんでしょうね。
ぼくももちろん大好きな曲です~(^^)
訳詩、どうぞお持ちください。
この曲は当時は知らなかったと思うんですが、最近60年代後半から年代別にCDに録音するために借りてきて気に入りました。
訳詩コピペさせていただきますね。
お願いします。
ムーディー勝山には似合わない曲だと見ました!(^^;)
こうなったらいっそのことムーディー勝山に「サテンの夜」を歌ってもらいたいですね。(・∀・)
おっ、カルロスさんムーディー・ブルース好きだったんですか~(^^)
>トロントロン
ダジャレを言うのはダレジャ(;^ω^)
ひろさんがおっしゃっている「ストーリー・イン・ユア・アイズ」は僕がムーディーの中では一番大好きな曲です。(もちろん勝山ではありません)
なにを隠そう僕はムーディーの隠れファンです(もちろん勝山じゃありませんよ)。サテンの夜、いいですね~!メロトロンの音にトロントロンになります。
はい~、奇跡的(笑)に覚えておりました。ちょうどろ~ずさんが記事を書いた時にぼくもレコードを引っ張り出してみた、というコメントを書いたのと、ろ~ずさんが「サテンの夜」くらいしか知らなかった、と書いてた記憶があったものですから。(^^)
ぼくも2枚組ベスト・アルバムをレコードで持ってますが、通して聴くと、たしかに目立たない曲なんですよね。ムーディー・ブルースって結構ハードな曲も多いですもんね。
でも「サテンの夜」だけ聴くと、とてもきれいなバラードだというのを再認識しました。
>『ストーリー イン ユア アイズ』
ムーディー・ブルースの最高傑作アルバムと言われる「童夢」に収録されている名曲ですね。1971年の作です。。。などと知ったように言ってますが、実は今調べたばかりです(汗)。
「童夢」は聴いたことはあるんですが、曲名までは覚えてませんでした~(再汗)
しかも2年も前の記事を覚えていてくれたなんて感激でございます。
あの時ベストを聴いて実はあまり「サテンの夜」はぴんとこなかったのです。
でもこのMINAGIさんの訳詩を読んで、もう一度聴いてみました。午後出かけた時車で聴いたのですが、弱い秋の光の中で、訳詩を見てたおかげで英語を聞いてても少し意味が分かって、ああ、聴くほどに味が出てくるいい曲なんだなあ、と思い直した次第です。
あ、やっぱりご存知でしたか。ムーディー・ブルースって、この曲だけが突出して知られている感じです。
>1967年は生まれたての頃
ほほぉぉぉぉぉ。(疑)
歌詞はロマンチックながら少々難解な香りもいたしますね。
>ムーディー勝山
Nobさんってばいやに最近の芸能人を知ってるじゃないですか~ ぼくはあんまりテレビ見ないので、一、二度しか見たことないんですよぅ。差をつけられてしまった。。。(汗)
何せ、1967年は生まれたての頃でしたからね(笑)
ドボルザークの影響と言えば、確かにそんな雰囲気。
詞の内容が何ともロマンチックですね♪
見た目とグループ名は、ムーディー勝山の影響ですかね・・・あ、そんなわけないですね(汗)