ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

恋のゆくえ (The Fabulous Baker Boys)

2008年03月17日 | 映画
 
 
■恋のゆくえ [The Fabulous Baker Boys]
■1989年  アメリカ映画
■監督・脚本 … スティーヴ・クローブス  
■音楽…………デイヴ・グルーシン
■出演
  ☆ミシェル・ファイファー(スージー)
  ☆ジェフ・ブリッジス(ジャック)
  ☆ボー・ブリッジス(フランク)


 Yahoo!オークションで落札したDVD「恋のゆくえ」が届きました。
 ビデオでは何度も観ている、ぼくの大好きな映画のひとつです。
 今日はこのDVDを二度観ました。字幕で、そして吹き替えで。
 で、再出ですが、今日はこの映画を取り上げてみたいと思います。


 【ネタバレあります】


 「破滅的な生き方」を認めるタイプです、ぼくは。
 でも、それは、単にやりたい放題のムチャクチャな人生を送ることではなくて、安定した生活や平穏な日常よりも、自分の生き方を貫くことを優先させることだ、と自分では捉えています。


 この映画は兄フランク(ボー・ブリッジス)と弟ジャック(ジェフ・ブリッジス)の売れないツイン・ピアノ・ユニットと、ボーカリストのスージー(ミシェル・ファイファー)の物語です。
 大向こうを唸らせるような作品ではないかもしれないけれど、ぼくにとっては心にしみいるような、せつなくて渋い映画です。


     
     左から B・ブリッジス、M・ファイファー、J・ブリッジス


 兄フランクは、ミュージシャンという不安定な世界で生きていながら、安定を大切にするタイプ。だからつまらない仕事でも、契約した以上はきちんとこなしていき、温かい家庭を守っていくことに喜びをみいだしています。


     
     ボー・ブリッジス


 対照的な弟ジャックは寡黙ですが、ピアノの腕前は抜群。クールでハンサム、天才肌のピアニスト。女性にはモテるし、淡々と仕事をこなして、一見気ままな独身生活を楽しんでいるように見える。でも本当は同じアパートに住む孤独な女の子以外には誰にも心を開かない。実はやりたい音楽があるのだけれど、それを隠して意に沿わない音楽を演奏している。そしてそのギャップに内心苦しんでいる。


     
     ジェフ・ブリッジス


 この売れない二人が、局面打開のため、ユニットに歌手を加えることを決意します。オーディションの末、選ばれたのがミシェル・ファイファー演じるスージーです。気が強く、強烈な個性を持ってはいますが、内面には孤独感を隠している女性です。


     
     ミシェル・ファイファー


 で、このスージーがとても魅力的!
 悪態のつき方ひとつ見ても頭の回転の速さが伺えますし、はっきりとした自分の人生観を持っているがゆえに自分で自分の非力さも痛感していて、そのためたくさん傷ついてきている、そんな女性です。
 で、スージーの歌う歌がまたカワイイ。歌を通じて自分の内面を表現しようとしているような、そんな歌です。


 映画の中では「More Than You Know」「Feelings」「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」などを歌ってくれてます。エンド・ロールでは「My Funny Valentine」も聴くことができます。なんと彼女は吹き替えなしで歌っているそうです。とても自然に歌っていて、心地良く耳に迫ってきます。一聴の価値はあると思いますよ。


     


 売れないバンドマンの悲哀が感じられる映画ですが、ジャックの、「本当はジャズに没頭したい、けれど食べていくためには我慢してヒット・ナンバーも弾き続けなければならない」という葛藤が高じて、兄フランクと次第に対立してゆくようになる様子、せつないです。


 そしてジャックとスージーの恋。反発を感じながらも実は似たもの同士なんでしょうね。自分の道を歩いて行こうとするスージーを見て自分が惨めに思えるジャックだけど、最後はジャック自身も自分の道を進もうとします。


     


 この映画の音楽担当はデイブ・グルーシン。劇中では、「Prelude To A Kiss(キスへのプレリュード)」、「10Cents A Dime」、「Moonglow」、「Solitude」、「Makin' Whoopee」など、たくさんのジャズ・ナンバーが楽しめます。


     


 ぼくはジャックの自分の人生に対する葛藤に一番惹かれました。
 そして、なによりも、この映画の持つ雰囲気が好きです。これ、ジャズのもつ雰囲気を映像で表しているように思えるのです。


 ラスト・シーンがとても印象に残ります。
 ふたりはそのまま別れてしまうのかどうかは含みを持たせていますが、明るい陽射しの下で交わされる二人の会話、ぼくにはなんとなくハッピーエンドだと感じられるのです。二人が結ばれないにしても、お互い自分で自分の道を、前を向いて切り拓いてゆくことを暗示しているような気がするラスト・シーンだと思います。


人気blogランキングへ←クリックして下さいね
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする